第11話
土日含めて合計五日間に及ぶゴールデンウィークの最終日。
今日の衣装はチャイナドレスだった。
衣装を着て、今日も私は昨日と同様にお昼寝をする。
昨日はお昼寝から起きたあと、なんだかいつもよりも気分が良くなっていた。けれどそれとは正反対に、一緒にベッドで横になっていた親友は顔を真っ赤にしながら俯いて、どこか様子がぎこちない。
それは今朝も同様で、彼女は私の顔を見ては頬を朱色に染めて俯き、あまり会話をしてくれないし、私の身体にも触れてくれない。
おかげで今日は、悶々と焦れったい性欲だけが溜まっていく。
そんな欲をお昼寝で解消しようという算段だった。
「……あかり」
「っ。な、なにかな?さきちゃん」
「……今日も、だっこ」
「っ」
「だっこして眠りたい」
チャイナドレス姿のままベッドの上で横たわり、昨日と同様に両手を親友へと伸ばす。
親友からの返事は無い。
目線もすぐに逸らされた。
悶々と、グズグズと、下腹部が疼いて性欲が溢れ出す。彼女に素っ気ない態度を取られる度に、胸のモヤモヤが広がる。
これも、発情?
よくわからなくなる。
「あかり、はやく」
焦れったくて、私は親友の腕を掴んで引き寄せた。親友のその手には力が入ってなくて、寝転がった状態の私でも簡単に彼女をベッドの上へと倒れ込ませることが出来た。
ギシッとベッドが軋む。
何も言わないまま親友はベッドの上で横になる。
私に背を向けて。
「……どうしてそっち向くの」
「わ、わたしがこっち向いてても、さきちゃんは抱きつくこと、できるでしょ?」
………。
なんか、やだ。
親友にこっちを向いてほしい。
彼女と向き合ったまま、彼女のぬくもりに包まれるために抱きついて、ふわふわな柔肌に顔を埋めて眠りたい。
黙って親友がこっちを振り向いてくれるのを待ってみても、彼女はずっと私に背を向け続けるから。
尚更、余計に焦れったくなる。
悶々として、より身体は熱を帯びる。
熱くて、もどかしくて。
もうなりふり構わず、私は親友の背に抱きついた。
ぎゅーっ、と力をめいっぱい込めて抱きついて、彼女の甘い匂いを嗅ぐ。
心が安らいで、発情して火照った身体の熱が徐々に引いていく感覚。
瞼はすぐにまた重たくなって。
私は眠りについた。
◆ ◆ ◆
わたしは今日も、眠るさきちゃんにキスをする。
黙って勝手にさきちゃんの恐らくファーストキスであろう唇を奪ってしまった罪悪感から、彼女が起きている間は目を合わせることも出来なければ、まともに会話することも出来なかった。
いや多分、罪悪感だけじゃ、ないよね。
さきちゃんの唇にわたしの唇を重ねたときの、あのふにっとした感触。
とても気持ちよくて、思い出しただけで頭がほわほわする。顔が火照って、さきちゃんの顔に、正確には唇に目がいくとぼーっと何も考えられなくなっちゃう。
そういうわけで今、さきちゃんが眠っていて意識が無いこの瞬間が、またキスできるチャンス。
さきちゃんの方を向きたいけれど、なにせ彼女が後ろからぎゅーっと強く抱き締めてきているため、身動きがとれない。
どうしよう、このままずっとこの体勢かも。
そう思いジッと待つことしか出来ずに数十分。
後ろにいるさきちゃんがモゾモゾと動き始めた。
「はぁ、、、はぁ、、、んっ」
その口から漏れる吐息は熱っぽく、とても艶やかで、わたしはつい先日にこの吐息を聞いた記憶がある。
「……んっ。……ふ。……ん」
「さ、さきちゃん!?」
わたしのお尻の上、尾骶骨らへんにグイグイと押し付けられるさきちゃんの腰、もとい下腹部。
起きてるの?
そう思わざるを得ないほどに強く押し付けて、カクカクと腰を振って下腹部をわたしに擦り付けてくる。
「……んっ、あかり、もっと」
「っ」
さきちゃん、まさか夢の中で、わたしとえっちなことしてるの?
現実で目の前に、添い寝して、抱き枕にまでされてる実物がいるのに、さきちゃんは、夢の中のわたしと、えっちなことするの?
ふーん?そうなんだ。
そっちがそうなら、わたしだって。
強く抱き締められてるのもお構い無しに、グルっと向きを反転させる。
さきちゃんと向き合って、顔を覗き込む。
やっぱり彼女は寝ていた。顔を赤くして、熱の孕んだ息をこぼしながら、眠っている。
「さきちゃんは、わたしとえっちする夢を見ながら、わたしでオナニーする悪い子なんだ」
悪い子には、おしおきが必要だ。
「ねぇさきちゃん、さきちゃんはオナニーって知ってるの?ゴールデンウィーク初日にさきちゃんが突然わたしの隣でシた行為が、何かわかってるの?さきちゃん、性知識なんてあるの?多分、無いよね?無くて、無いのに、こーんなにえっちなんだ。えっちな子になっちゃったんだ。恥ずかしいね?こうやってえっちな夢まで見ちゃうような女の子、なかなかいないよ?しかも人でオナニーするような子なんて、もっといないよ?わかる?寝てるから、意識ないから、わかんない?じゃあわたしが今、さきちゃんをきもちよくしてあげるのも、わからない?気づかない?キスは?唇に触れるキスは?ちゅってやるくらいじゃ、起きない?きづかない?じゃあさじゃあさ、ふかーいキスなら?さきちゃんの口の中にわたしの舌を入れるの。さきちゃんの口にわたしの唾液を入れるの。飲ませるの。それからさきちゃんの舌をわたしの舌で絡めとるの?どう?さすがにそこまでしたら起きる?気づく?やるよ?やっちゃうよ?ここまで言っても起きないの?まだ寝てたいの?そっちの、夢のわたしとのえっちに夢中なの?じゃあわたしがえっちなことしてあげるよ。わたしがさきちゃんを気持ちよくしてあげるの。これならどう?起きる?さきちゃんのおっぱいも、ソコも、さきちゃんが気持ちよくなれるところ、沢山手探りで見つけて、いじめてあげるの。これならさきちゃんも起きるよね?夢の中のわたしじゃなくて、わたしを選ぶよね?そうじゃなきゃ、おかしいもんね?」
グリグリとわたしの太ももに押し付けてくる下腹部、ソコに手を差し入れる。
そして擦り上げる。
「んあっ」
さきちゃんの身体がビクンと震えた。
かわいい。
口を開けて喘いだ彼女に、その無防備な唇にキスをする。舌をねじこむ。
もう訳がわからなくなるくらい興奮する。
さきちゃんを起こしたい。夢の中でえっちするくらいなら、わたしとシてほしい。
その一心で、彼女の口内を蹂躙した。
「………ん。……あか、り?なに、してるの?」
気づけばわたしたちの体勢は抱き締め合っている形から大きくはずれ、さきちゃんに覆い被さるようにわたしは彼女の顔の真横に両手をついていた。
「なに、これ?……どういう、こと?」
ようやく目を覚ましたんだ、さきちゃん。
わたしは今にも抱きたい欲を抑えて、さきちゃんに確認する。
「さきちゃん、わたしのこと、好きなんだよね?」
もはや分かりきっている答えを、ちゃんと言葉で聞いて安心してからいちゃいちゃしたかった。
あー、さきちゃんにチャイナドレス。
とても映える。
その服をどうやって脱がそうか。
もうそんなことばかり考えていた。
だから、、、
傷つく準備をしていなかった心は、簡単に潰される。
「……好き?……わからない」
「え?」
「好きなんて感情、もう私には無いから」
「え?」
「だから多分、私はあかりのこと、好きではない」
え?
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