第3話 面食いの女子達は少しエロい?

 「ねえ、ちょっと良いかな?」


帰りのHRホームルームが終わって席を立とうとした時、後ろの席の西宮にしみやさんがそう言って肩を叩いてきた。


俺の悪口を言う女子の1人が何の用だ? 無視しても良いが、そうすると嫌がらせがエスカレートするかもな…。


ここは強気に出て、ナメられないようにした方が良さそうだ。『俺の悪口を言う奴はタダでは済まない』という雰囲気を出そう!


「…何だ?」


なんて考えたものの、咄嗟に出来るのは振舞うぐらいだな。まぁ、笑顔で接するよりは効果あるだろう。


「えーと、ちょっと話があるんだけど…」


西宮さんが申し訳なさそうな様子を見せるので、少し罪悪感を覚えてしまった。だが、そもそもの原因は俺の悪口を言うからだろ。


「明日香。本題に入る前に謝ろうよ。多分じゃなくて絶対勘違いされてるから」


彼女にアドバイスしたのは俺の右隣の席の東雲しののめさんで、悪口を言ってきた女子その2になる。俺の表情でそう思ったようだ。


「勘違い? あんな事言っておいてよく言うよ。俺含む男子を品定めしてたくせに」

勘違いする要素がどこにある?


「やっぱり聞き耳を立ててたみたいだね。わたし達をチラチラ見てくるからそう思ったよ」


「全てじゃないとはいえ話を聞いてる訳だから、勘違いしようがない。2人は、クラスの中で俺がだと思ってるんだろ?」


「えっ? ブサイク? 何の事?」


西宮さんがそうつぶやいてから、東雲さんと顔を見合わせる。


「違うよ! わたし達は男子を探してたの!」


「はぁ?」

こんなの、東雲さんの嘘に決まってる!


「あたしと遊華ゆうかは幼馴染なんだけど、高校生活で最初にやりたい事が『男子の友達を作る』なの。“高校デビュー”も兼ねてる感じかな」


「何で男子? 普通は女子の友達だろ?」

西宮さんも嘘を付くタイプか…。


「あたし達は女子中出身だからね。女子の友達は何度も作った事あるから後回しで良いんだよ」


そういうものなのか? ずっと共学の俺にはピンとこない…。


中君なかくん、勘違いさせてごめんね♪」


「もっちゃん、許して♪」


東雲さん・西宮さんが、上目遣いでそれぞれふざけたあだ名を言って謝罪してきた。可愛いな…、じゃなくて!


「これで済むとは思ってないから、あたし達に質問を2回して良いよ」


「2回?」


「うん。1回だと少ないし、3回だと多い気がするからさ~」


なんて言われても、訊きたい事なんてないぞ。『何で俺が話しやすい男子の1番になったのか?』というがあるが、空気的にそういう質問をする流れじゃない…。


「Hな質問でも良いよ♡」


「はぁ!?」

何言ってるんだ!?


「もっちゃんは、そういうのに興味ない感じ?」


あるに決まってるが、初対面の女子に訊く事じゃないぞ!


「明日香、からかわないの! ごめんね中君。明日香はイタズラ好きでね」


俺の許可なく“中君”呼びする東雲さんが言えるセリフか?


「小さい頃はともかく、イタズラしてないじゃん」


「今は? 前は何をしたんだ?」


流れ的につい訊いてしまった。これで1回消費だな。


「わたしのスカートをめくってきたんだよ。ひどいと思わない? 中君?」


「遊華のスカートに付いたゴミを払ったついでに…ね♪」


どう考えてもついでじゃない…。


「あの時の遊華の下着、背伸びしてる感じでエロかったな~」


「中君の前で言わないで~!」


少し顔を赤くする東雲さん。…やっぱり可愛い。


「そうそう。さっきの質問の補足だけど、さすがに“下着見せて”とかのエロいのはなしだから」


「わかってるよ」

西宮さんに言われるまでもない。


「まぁ、ではあり得るかもね♡」


「ちょっと、明日香…」


何か変な空気になってる気がする。女子中ではこれが普通なのか?



 「――これ以上教室にいると先生に注意されそう。中君、これからの予定は決まってる?」


少し沈黙が流れた後、東雲さんが話を切り出す。


「いや、何もないな」


「だったら、お昼を奢らせてくれないかな? だいぶ迷惑かけちゃったから」


「そこでもっちゃんの知りたい事、全部話すよ」


なんとなくだが、この2人は誤解される行動をとっただけで悪い人ではない気がする。とはいえ、の回答を聞くまでは油断するつもりはない。


「本当だな?」


「本当だよ。あたし、嘘は付かないから」


…幼馴染の東雲さんはそう思ってないみたいだぞ? 表情で大体わかる。


「それじゃ行こっか」


西宮さんに続いて俺と東雲さんも席を立ち、教室を出る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る