第2話 ついに動き出す、面食いの女子達

 HRホームルームを知らせるチャイムが鳴ったので、クラスメート全員が席に着く。多分俺の悪口をヒソヒソ話していた女子2人は、それぞれ右隣と後ろの席に座っている。


何でこんな事になるんだ? 早く席替えして欲しいぞ…。


それから数分後。おばさんのような、お姉さんのような女性が教室に入って来て教壇に立つ。ああいう人がきっと“中年”なんだな。


「初めまして。『1ーA』の担任になる鳴海なるみよ。これからよろしくね」


3年間? この学校は、小・中と同じく1年ごとにクラス替えするはずだが…?


「今年度からクラス替えを廃止する事になったの。理由は色々あるから、今から全部言うのは時間が足りないかな」


クラス替えをしないって事は、悪口を言ってきた女子2人と3年間一緒になる。俺の高校生活終わった…。


悪口を言いたい放題言ってストレス解消できるんだ。女子2人は喜んでるに違いないが、確信を得るために右隣をチラ見する。


…俺を見て一瞬微笑んだ気がする。本当に喜んでるじゃん……。


「これから入学式だから、体育館に移動するわよ。その後は教室で自己紹介してもらうから、言う事を考えておいてね」


お先真っ暗の俺に、そんな事考えてる余裕ないよ。今できるのは周りに合わせて行動するだけだ…。



 無心になって周りに合わせた俺は、体育館に着いてから校長などの話を聞いた。とはいえ、内容は全然覚えていない。何かを考えると、悪口を言ってきた女子2人の事が真っ先に浮かぶからだ。


これからの3年間、ずっとこんな調子なのか? 絶対メンタル持たないな…。


入学式が終わって教室に戻った後、自席で窓の外をボンヤリ眺める。窓際の席なのが不幸中の幸いだ。外を見てると何も考えなくて済む。


「明日香。いつ声かける?」


「当然、帰りのHRが終わったらすぐ!」


いつの間にか、右隣と後ろの席の女子が席に着いたようだ。最初に声をかけたのは右隣のほうか。姿を見なくても、聞こえ方ですぐわかる。


この2人、仲が良い感じだな。まぁ、出会って間もない状態で赤の他人の悪口を言う訳ないか…。


悪口を言う2人に声をかけられる男子は災難だな。同情するよ。



 鳴海先生が再び教壇に立ち、自己紹介の時間が始まる。ここからは気合を入れないとな! 1人でも多く、気が合うクラスメートを見つけるために!


そんな風に集中してたからか、自己紹介の時間は予想に反してすぐ終わった印象だ。自分の番だけは、めちゃくちゃ長く感じだが…。何はともあれ、クラスメートの顔と名前はちゃんと覚えたぞ!


情報を整理すると、俺の右隣の女子は東雲しののめ 遊華ゆうかさんで、後ろは西宮にしみや 明日香あすかさんというらしい。悪口を言う女子であろうと、覚える対象なのは変わらない。


むしろ、悪口を言ってくる相手だからこそ覚える必要がある。先生に悪口の件を伝える際、名前がわからないと困るからな。


自己紹介の時間が終わった後、いろんな連絡事項を聞いた。といっても難しい内容はなく、当たり前のような事ばっかりだったな。


「これでHRは終わりよ。気を付けて帰りなさい」


先生の言葉を皮切りに、クラスメートが徐々に席を立って教室を出て行く。さて、俺もさっさと出よう。そう思って立とうとした時…。


「ねぇ、ちょっと良いかな?」


後ろからそう声をかけられ、肩を叩かれるのだった…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る