俺と2人の幼馴染

あかしろきいろ

第1話 面食いの女子が2人いる?

 今日は高校の入学式。俺、中本なかもと あきらは、自宅のリビングで父さん・母さん・妹のしずくの4人で朝食中だ。


「明。高校生活をどう過ごすかで人生が決まるからな。ちゃんと覚えておくんだぞ」


「それ、中学の時も聞いた…」


内容は“生活”が“生活”に変わっただけで、聞いたタイミングは入学式の日だったっけ。ほぼ3年ぶりだな。


「ん? そうだったか?」


「そうだよ! 私も覚えてるもん!」


雫は俺より2歳下の中2になる。…そういえば、雫が中1になった時は言ってなかったぞ。単なるど忘れか?


「何度も言わないと、お前達忘れちゃうだろ? お父さんはボケてないから、勘違いしないでくれよ!」


そう言う父さんを呆れ顔で見る母さん。…この件は、これ以上考えなくて良いや。



 朝食後。自室で準備をしてから、俺は自転車で登校する。大体5分~10分かかるかな。近場だが、自転車があるんだから使わない手はない。


雨の日は歩きで登校するつもりだ。合羽を着るのは面倒だし…。


クラス分けについては、合格通知と一緒に同封されていた紙に記載されていた。俺は『1ーA』になる。


なんとなくだが、A組とか1組は良いよな。最初だから精鋭って感じがする。なんて事を誰かに言ったらバカにされそうなので、言う気は更々ない。


学校の構造については“学校見学”で把握しているから、迷う事はないはずだ。…多分。



 迷わずに『1ーA』に入ると、教室にいる一部のクラスメートが俺を見てきた。席に座っていたり、立っておしゃべりしている人など様々だ。


見てきたのは一瞬で、それ以降クラスメートは何事もなかったようにスマホを見始める。これで落ち着けるな。


…ん? あっちにいる女子2人が未だに俺を見ている? 何でだ? あの2人とは初対面のはずだが?


気になるものの、声をかける勇気がないので黒板に意識を向けると、手書きの座席表がある。早速、俺の席を探すとしよう。


……何とか探した結果、窓際の前から5番目みたいだ。あいうえお順じゃないから探すのに苦労したぞ。既に視力を考慮した席順になってるかもな。


席に着いてから、さっきの女子2人をチラ見する。…向こうもチラ見してないか?何がどうなってる? 手がかりが欲しいから、スマホを見ながら聞き耳を立てよう。


他に女子2人でいるグループはない。声さえ聞こえれば十分だ。


「ねぇ、あの人がじゃない?」


「そうかも」


そんなヒソヒソ声が聞こえてきた。何が一番なんだ?


……もしかして、俺がクラスの中で一番ブサイクって事か? 悪口だからヒソヒソ話してるんだ! そうに決まってる!


あの女子2人は面食いで、男子を品定めしてるんだろう。そういう人は中学・高校問わずいるものだな…。極力関わらないようにしよう。



 それからも女子2人の会話に聞き耳を立てる俺。2人がランク付けしているのは会話から察する事ができる。あの2人、絶対性格良くないだろ。


聞き逃していなければだが、“一番”というワードはあれ以降1回も聞いていない。2人の中で、俺が一番ブサイクなのは変わりないようだ…。


「もうそろそろHRホームルーム始まるね」


「そうだね。席に戻ろうか」


2人の会話を聞いてハッとする。聞き耳を立てていたから気付かなかった。


あの2人とは関わりたくないから、遠い席でありますように。そう祈ったものの、2人が座ったのは俺の右隣と後ろだった…。

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