第17話 首都攻防戦・前編
クロエちゃんが唱える呪文を受け、セツナを中心とした空間が歪む。
(転移魔法ってこんな感じか。感慨深いものがある。けれど今はそれどころでは無い。街の中心に転移らしいが、街の中まで敵がいるとなると、転移後すぐ戦闘もあり得る。集中力は研ぎ澄まさないと! プリウスの思い通りにはさせない!!)
そんな考えも束の間。
瞬時に視界が切り替わり、視界が明瞭になる。そして転移できたセツナに待っていたのは、迫り来る一条の雷撃だった!
「ちぃ!?」
セツナは咄嗟に氣で強化した拳で弾き飛ばす。
すると目の前にはイーグルさん。そして、フィッセルとレクサスを先頭にした、アメス・ファンクラブの面々。そしてその上空に、アメスさんのペットのヴァンティーヌが浮遊していおり、雷を纏っている。どうやら、先ほどの稲妻は、この仔が放ったらしい。
と、ヴァンティーヌと目が合う。すると、纏っている雷を解除し、セツナの側に降り立つと、すりすりとセツナに頭を擦り付けてくる。。どうやら、先ほどの誤射を謝りたかったようだった。
「アメスちゃんのペットが懐いていると言うことは、セツナ本人か?」
「魔族の変身も疑ったが、ヴァンティーヌの行動を見る限り、本物のようだ。いきなり強い殺気を感じたから、ビビったぜ」
セツナはフィッセルの言葉に、転移前にプリウスの言葉に激怒していたのを思い出した。
「すまない、皆んな。アロンダイト帝国で憤りを感じたまま転移してもらったから、それでだな」
「セツナ君が怒るとは余程のことだな。積もる話もあるだろうが、今は後だ」
「イーグルさん……。っ!? 此処は?」
周囲を取り囲む悪意に警戒しながら、セツナはイーグルに問いかける。
「セツナくんは初めてか。此処は非常事態の避難場所の一つ。自警団だ。避難民の半分は此処にいる。だが、防戦が続いている。こうも敵の波状攻撃にさらされると、な!」
セツナが現れて隙ができたと感じたのか、数体のデビルが襲い掛かってきた。
だが、イーグルは手に持っている魔槍の一振りで一気に葬る。
イーグルの一撃に警戒したのか、敵軍に躊躇が生まれ戦場が一時こう着状態に。
周囲に気をつけながら、この状態を利用して、素早く情報交換をする。
「なぜセツナ君が此処に? アロンダイト帝国で何があった? それに娘たちは?」
「端的に言うと自分たちは罠にはめられました。アロンダイト帝国の騒動はクロエちゃんたちを誘き寄せる撒き餌。この騒動には魔導王が関わっています」
「「「な? 魔導王!?」」」
イーグルさんを筆頭にフィッセルとレクサスが驚く。だが、その名をセツナが口にした瞬間、今までこちらの状況を伺っていたデビル及び丙型魔族が動き出した。
「どうやら図星のようだなカミシロ。
大槌を構えたフィッセルが、魔族を押しつぶす。一撃で滅んだ様子から、この大槌もかなりの逸品。そしてフィッセルの技量の高さがうかがえる。
「フェイトさんから緊急通信を受けておおよその事情は伺えました。けれども肝心な処でジャミングが入り、通話できませんでした! フェイトさんとアメスさんは何処に?」
セツナも波状攻撃で襲いくる丙型魔族を
「
イーグルの言葉に奥さんと娘を心配するのが声から分かった。
すぐにでも駆けつけたいのがひしひしと分かる。でもこの場所を守らなければいけないという鋼の意思で奮戦しているのだ。
(アメスさんの気配は独特だし、一度だけ相対したクリスティーナの気配も普通の人間とは違う。ましてや、その二人が戦っているならすぐ分かる。それが感知できないと言うことは魔族の結界が張られている中か!?)
イーグルの言葉を受けながら、セツナは瞬時に思考し、推論を導き出す。アメスの居場所が分からない以上、ここの戦線を守るのが先決。その矢先だった。異質な気配を遠くに感じる。セツナだけでなくイーグルたちも気付く。
そして、その異質さは形を持ってこの世界に顕現する。それは、セツナの元いた世界で語られる神話上の怪物。
それは――
「――あれはまさか“ヒュドラ”!? まずい、奴には魔法に対する絶対耐性が備わっている。その上に、中央の首を切断するまで他の首を切っても再生するバケモノだ! セツナ君、
魔法に対する耐性を持つと言うことは、魔法を主戦力とする者たちにとっては天敵以外の何ものでもない。セツナはイーグルたちを信じ魔導士協会に向かうため周囲の魔族を蹴散らす! そして、ヴァンティーヌの背中に乗り向かう!
その際、気休め程度だろうとは思いつつ、敵集団にダース単位の
♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎
セツナとヴァンティーヌが去った自警団前には、敵が半数まで減っていた。
イーグルを筆頭に味方はほぼ無傷。戦力差的には逆転している。
「セツナ君は凄いな。ヴァンティーヌに乗りこむ前の攻撃。それに加え、青龍騎士団が開発しクロエですら習得できていない『対魔族用』のオリジナル魔法。底が知れないな」
「存在が凶器みたいな存在だよな、カミシロは……」
「全くだ。ファンクラブはお断りだけど、自警団には是非とも欲しい人材だ」
そう言いつつも、
「それは無理なんじゃないか、レクサス。女王のお気に入りだからな」
「おもちゃ、か?」
「否定できんな。
「…………」
ほんの一瞬、戦場には似つかわしくない空気が漂う。
三人の脳裏に玉座に座るセツナの姿が浮かぶ。そして、その傍にいる二人の美女と美少女。
この光景に納得しているのは、この場ではイーグルのみ。
フィッセルとレクサスのこめかみには青筋が浮き出ている。
「さ、さあ! とっととコイツら片付けるぞ! それができたら
大槌で悉く押しつぶすフィッセル。気のせいか魔族を蹴散らす速度が上がっている。よほど重婚制が効いたとみられる。
意外な
(セツナ君。そっちは頼んだぞ!!)
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