中間テストとご褒美
日曜日は萌依に言われた通り、テスト勉強を頑張った。まだテストまで3週間あるが、早めに始めて損はない。いつもなら、部活が休みになる2週間前からであるが、今回はご褒美が掛かっている。
そういえば、結局カラオケでの2回目のハグが保留になってしまった。これもしてもらうことにしよう。萌依ったら、恋愛に興味薄いとかいいながら、冴に赤くなった顔を見せているのだから、とんだ魔性の女っぷりである。冴もその顔を見て、自分も顔が紅潮しているのではないかと思っている。異常に体温が熱く感じたからだ。
冴を恋愛対象として意識してくれているのかな?と悶々としている。
でも、勉強に集中しなければ。好きな萌依を乗せて、腕立て伏せができるなんて……好きな萌依の重みを糧にして筋肉を鍛えることができるなんて……
「最高じゃん!!!!!」
筋肉バカここに極めり。冴は趣味が筋トレという今時の女子ではない。しかも目的がダイエットではなく、筋肉を鍛えあげて最強になることである。幼い頃見た、ヒーローものに憧れ、そこから強さを求めるようになった。
さて、意識が今度は筋肉の方に行っていた。勉強に戻さねば。いつも、平均より上を維持しているが、2年ではどうだろうか。中だるみの時期と言われる学年であるが、受験を意識している人は、中だるみなどないだろう。冴は自分は進路どうしようと思っていた。まだ、決めていないのだ。進学しようか、就職しようか。どちらにせよ、教養というのは必要だから勉強しなくては。
月曜日になった。相変わらず自転車でいつもの時間に行くと駐輪場には、
「おはよう」
「おはよう」
と、萌依がお出迎えしてくれるようになった。嬉しくてニマニマしてしまう。
「どうしたの、にやにやした顔して」
「え? 顔緩んでた!?」
「私がいたこと嬉しかった? 冴はすぐに顔に出るなぁ」
「そりゃ、嬉しいよ。萌依がいるんだから。次は昼休みまで恋しくなるよ」
「クラスの子とも仲良くなってきた?」
「うん、まぁまぁかな? まだ下の名前で呼べてないし……」
「1年の時もあたし達下の名前で呼び合うのに1ヶ月くらいかかったもんね。頑張れ」
「そういう、萌依はクラスの友達、下の名前で呼べるようになった?」
「んーん。冴と同じ。相変わらず聞き役だからなぁ。私いなくても良いんじゃないかってくらい」
「あたしは、雑談混じっているよ~。でも、名前で呼べていない。タイミングが掴めない」
「なんだ、上手く交われてるじゃん! 心配して損した。私より、良いじゃん。もう、私と付き合うより、クラスの子と仲良くしてたら?」
「何、言ってるのさ!! 私は萌依が提案してくれた、萌依とばかりじゃなくクラスにも打ち解けられるようにクラスの子とも付き合う時間を作っているだけだって。本当は10分休みだって萌依と過ごしたいよ!」
「冴……ごめんね。あたしもクラスの子と打ち解けないとね」
「そうだよ」
「じゃあ、教室着いたから、また昼休み」
「うん、またね」
萌依と別れ、A組に入っていく冴。席につくと、
「「おはよう」」
「おはよう」
斎藤さんと内田さんが来ていた。
「体育ない日でも早いね?」
「榊さんと話したいからね」と斎藤さん。
「そうだよ、朝の時間と10分休みじゃないと話せないんだから大事にしようよ。そういえば、榊さんは昼休み誰と過ごしているの?」と内田さん。
「もう、[[rb:杏 > あん]]ちゃんってば教えたじゃん。お試しで付き合っている人と過ごしているんだって」
「そういえば、そうだった!榊さん、恋愛真っ最中だよね~」
「お試しだけどね。ところで、内田さんの下の名前って杏って言うんだね」
「うん、そうだよ」
「斎藤さんは?」
「私は、[[rb:夏実 > なつみ]]だよ」
「ね、ねぇ、良かったらさ、下の名前で呼んでもいいかな?ちなみに、私は冴」
「いいよ~改めてよろしくね冴ちゃん」
「よろしくね、杏、夏実」
「よろしくね~冴」
「よろしくね、杏」
やった、念願の下の名前で呼ぶができた。これは昼休み、萌依に報告しなきゃ!! 萌依も喜んでくれるかな?
「じゃ、屋上行ってくるね、夏実、杏」
「は~い、行ってらっしゃい」
冴は萌依の待つ屋上に駆け足で行く。だが、まだ萌依の姿はなかった。いつものところで座って待つことにした。
「お待たせ、冴」
「あ、萌依、待ってたよ!」
「何か良いことでもあった?」
「何でわかるの?」
「朝に言ったけど、冴は顔にすぐ出るんだよ」
「そっか~えへへ。あのね、クラスの友達をついに下の名前で呼べるようになったよ!!」
「へ、へぇ~そうなんだ。良かったじゃん……」
「何で、萌依は悲しそうな顔するの?」
「いや、何か冴が遠くに行ってしまったような感覚になって。私はまだクラスの友達の下の名前呼べていないのに……」
「大丈夫だよ、すぐ呼べるようになるよ。あたしとだって、1ヶ月かかったじゃん」
「そうだよね、その内きっかけができるよね……」
「萌依もクラスの友達を下の名前で呼べるようになったら教えてね」
「うん、当たり前じゃん!私達隠し事はなしだよ」
「あ、あとね。日曜日はテスト勉強頑張ったよ」
「偉い!筋肉バカの冴が筋トレ優先しないで勉強したなんて」
「筋トレは、勉強の休憩の合間にしたよ。良い息抜きになった」
「そうそう。そうやって、勉強と部活の比率を考えるの。立派になって」
「やったー! 萌依に褒められた。これはご褒美貰ったも当然だな」
「油断大敵よ。1日できただけでは成績は上がらないからね。部活と同様、継続が大切よ」
「はーい」
と言いながら、冴は萌依からのお弁当をむしゃむしゃ食べていた。
「今日のも美味しい? 毎日作ってくるからね」
「美味しい!! でも、毎日って負担じゃない?」
「全然。1人分作るのも2人分作るのも大差ないから。それに料理が上達するし」
「そっか、ありがとうね」
「美味しいって言ってくれるだけで作り甲斐があるよ」
「そういえば、ご褒美と言えば、本当にいいの?」
「え? 何が?」
「その……あたしを乗せて腕立て伏せなんて……もっと恋人ぽいこと頼んでもいいんだよ?」
「私にとっては最高なご褒美なんだが。それに恋人ぽいご褒美は期末テストの時にする! 最近、私と目が合っただけで赤くなっている萌依さん。心の準備をしとけよな?」
「なっ!! そうだったの……わかった。勉強頑張ってよね」
「うん、ご馳走様でした!!」
と言って、空の弁当箱を萌依に返す。
「ね、萌依。これからさ、放課後、テスト勉強一緒にしない?」
「いいよ。1年の時もしたよね」
「したね~、2人でひぃひぃ言いながら勉強したね」
「慣れてきた今なら余裕持って勉強できるかな?」
「いや、難しくなったからまたひぃひぃ言いながらすることになるよ、きっと」
「私はまた上位狙っていくよ」
「あたしも平均より上を狙っていくよ」
「また、試験2週間前になったら一緒に勉強する?」
「そうしよう」
予鈴が鳴る。
「そうだね、教え合った方が覚えられる。じゃあ、また放課後」
「うん、またね」
2人はそれぞれの教室に戻った。
お腹いっぱい食べた後は眠いが、テストの為、寝ずに授業を受けていた。テスト2週間前になったら部活は休止になるから、萌依と放課後過ごせる時間が増える。1年の頃は、萌依の成績を超えることはできなかったけど、もし、超えることができたら、ご褒美もっとくれるかな?
お願いしてみようかな。脳だって鍛えるって言うし、ここらで勉強のことも好きになれば、萌依により相応しくなれる。
もう授業中に手紙交換をしているカップルを見ても嫉妬することもなくなった。萌依という仮恋人の存在ができたから。そういえば、いつまで仮なんだろう?何をすれば、付き合っているということになるだろう?
冴は恋愛に興味あったが、付き合っているという基準については詳しくはなかった。少なくとも今の状態では、1年の頃から変わっていない。いや、お弁当作ってきてもらえるようになったのは恋人っぽい。進展はあるんだ。けど、急ぐことはない。冴は萌依のことが好きで、萌依も冴のことを意識してくれている。2人のペースで、2人らしい恋人になろう。
そして、1週間経ち、テスト2週間前になった。部活がしばらくお休みになるのは寂しいが、これからしばらく萌依との放課後勉強会が始まる。楽しみで朝早く起きたから、学校にも早めに行くことにした。
「おはよう、萌依」
「おはよう、冴」
「今日、早めに来たのにもういるとは」
「電車通学だし、田舎だから本数もそんなにないから早く来ないといけないんだよね」
「そうなんだ、大変だね。それにしても相変わらずどこに隠れているのかわからない」
「隠れている場所教えちゃったら冴をからかえないじゃない。だから、内緒♡」
「毎日、あたしはからかわれなければならないのか……」
「こういうのもイチャイチャしているみたいでいいでしょ?」
「まぁ、悪い気はしない」
「そうわけだから、これからも覚悟して♡」
ウィンクしながらピースサインを横にして顔に当てるというあざといポーズを冴に見せる。不覚にもときめいてしまった冴。
「わかったよ。でも、こっちだっていつか暴いてやるからな。さ、教室行こう」
「うん」
冴がA組に入ると、夏実と杏が来て勉強していた。
「おはよう、夏実、杏」
「「おはよう、冴(ちゃん)今日は早いね」」
夏実と杏がタイミングを合わせたかのように、同じ言葉を発した。
「タイミング同じ!流石、幼馴染。以心伝心の仲」
「いやぁ、偶然だよ。と言っても、話題になることが冴ちゃんが早く来たから起こったと思うよ」
と夏実ちゃん。
「そうだよ、今日何でこんな早くに来たの?」
と、杏ちゃん。
「テスト勉強しようかなと思って」
「あ、私達と同じだ~」
「なら、一緒に勉強しようよ。三人寄れば文殊の知恵って奴!!」
「ありがとう。ちなみに、2人は今、何の教科やってたの?」
「数学だよ」
「うげぇ、数学か……。でもちょうど良いか。苦手な教科を教えて貰えるから。夏実先生、杏先生お願い致します!」
「よし、復習しよう。この前、冴ちゃんが授業中わからないって私に聴いてきた問題。自分で最初から解いてみて」
冴はルーズリーフに式と答えを書いてみた。
「正解だよ、冴ちゃん、理解できたんだね!!」
「いやぁ、夏実のおかげだよ」
「夏実~、ここはどうやってやるの~?」
「ここはね~ここをこうして、この公式を使って~」
「おぉ、なるほど」
予鈴が鳴った。クラスメイト達が各々の席に着く。
「よし、全員いるな。おはよう。今日からテスト2週間前だ。部活が休止になる。学生の本分である勉強を疎かにしないように。授業だけではなく、もう未来の受験を見越しての勉強も始めるといい。勉強しないと置いてかれるぞ」
はぁ、勉強勉強とばかり言われるのも萎える。付いていくのがやっとなのに、どんどん新しいことを詰め込まれる。知るということは楽しいことのはずだったのに、今では強制されている感があり反抗したくなる。だが、これもご褒美の為、気になる人の心を射止める為、そして、将来の自分の為。何になるかは未定だけど、将来の自分を育てる為に。
萌依は仮で付き合ってくれているけど、これが本命の付き合いになったとしたら、いつまで私の隣にいてくれるだろう。卒業を機に疎遠や音信不通になったりしたら嫌だな。いつまでもこの時が続いたらいいのに。勉強は嫌だけど。と考え事している間に、ホームルームが終わっていた。
4限目もあり、癒しの時間。昼休みだ。弁当と数学の教科書ノートを持っていくことにした。屋上の扉を開いて
「萌依~」
「冴~」
今日は萌依の方が早かったようだ。いつもの場所に萌依が座っている。その隣に冴が座る。
「はい、お弁当」
「ありがとう……って部活ないのに作ってきてくれたの!?」
「つい、作っちゃった。ちょっとでもいいから食べてくれない?」
「いや、お腹空いているから全部食べるよ、いただきます!」
好きな人が丹精込めて作ってくれた弁当を誰が残すものか。冴はいつもの調子でバクバクと味わって食べた。テスト期間だというのに、手抜き料理ではなく、いつもみたく一つ一つが手作りのお弁当大変だっただろうな。それなのに、成績は冴より上位で……時間の使い方が上手いんだろうな。
「無理して食べなくていいんだよ?」
「いやいや、頭使ったから、お腹空いているんだよ~」
「そっか、それなら良かった。勉強頑張っているんだね」
「苦手な数学の教科書とノート持ってきた。食べ終えたら、わからないところ教えて!」
「偉い偉い。教えるよ。この調子なら私の成績超えちゃうかもね」
「いやぁ、それはどうだろ? でも、ご褒美の為、頑張る!」
「そんなに私のこと乗せて腕立て伏せしたいんだね」
「そうだよ、自重筋トレは負荷がかかればかかるほど筋肉への刺激が強くなる。腕立て伏せを負荷をかけてやってみたかったんだよね!!」
「つまり、私は重い女ってこと?」
「違うよ! 私が好きなことを好きな人と共有しながらできることが嬉しいんだ!」
「そう。一応、言っておくけど、私、標準体重だからね」
「それより軽そうに見えるけどなぁ。見た目細いし」
じーっと頭からつま先まで見る冴。華奢な体だなと思う。冴は思わず、弁当を床に置き、萌依をお姫様抱っこした。
「ひゃっ!! ちょっと、冴!! 急に何!?」
「萌依が軽いってことを証明しようと思って。ほら軽い軽い」
腕をスムーズに上下させ、軽々とやっていることをアピールする。
「冴の筋肉が凄いからだよ……」
「筋肉が凄いって!! ありがとう!! 褒め言葉だよ!!」
「さ、そろそろ下ろして。ご飯食べ終わったなら数学教えるから」
「あ、そうだった!! 名残惜しいけど、下ろすよ」
ゆっくりと萌依を下ろし、元の場所に座らせた。冴は弁当箱を取ると、急いで食べる。母親からの弁当もガツガツと急いで食べた。完食。
「ふー、食べた食べた。じゃあ、萌依先生、ここの問題をお願いします」
「どれどれ……ここはこうして、この公式を当てはめて……」
「ふむふむ……」
予鈴が鳴る。
「あ~もう時間か、説明しきったけど、理解できた?」
「ありがとう! わかったよ!」
「良かった、教室戻ろう」
「うん!」
「じゃあ、また放課後ね」
「またね!」
冴のクラスの5限目は数学であった。先程聴いていたのは、予習の範囲。
授業の理解度が高くなった。予習って大事なんだなぁと、この時に気付く冴。
受け身なのと能動的なのでは、全然違う。1年の時は復習しかしなかった。だけど、自主的にわからないところを予習したことによって、理解度が高まった。萌依に感謝しなくては。それに、放課後はいよいよ、一緒にテスト勉強。復習がしっかりできるように、板書をしっかり写さなければ。
6限目は体育であった。この間の体力測定の続きであった。
「そういえば、体育があったね」
「そうだね、萌依。会えたね」
「じゃあ、反復横跳び計るから」
「あいよ」
三本のテープを横跳びしていく。
「……終わり、えと、60回だね。動き早い。さすが運動部」
「まぁね。じゃあ、次、萌依の番だよ」
「私はこれ苦手だよ~」
「体育疲れたね」
「やっと終わった……疲れて勉強どころじゃなくなるかも」
「それは、困る起きて、萌依!!」
放課後になり、2人は市の図書館に来て試験勉強していた。冴は普段のバスケ部の練習より軽い体育の授業でバテることはなく平然としていたが、文芸部の萌依は疲労困憊になっていた。シャーペンを握る手もプルプルと震えている。体も机に突っ伏してばかり。こんな状態では勉強に支障が出る。ここは飲食しても良い図書館。さらには、学生限定の和室で締め切っている部屋の仲にいる。冴は鞄の中から、飲むビタミンゼリーを取り出すと、
「萌依、これ飲みな。疲れが取れるよ」
「うん。ちゅーちゅー。美味しい、このビタミンゼリー。レモン味なのね」
「そうだよ~、部活終わりにこれ飲んで疲れを取っているんだ」
「今日からしばらく部活ないのに鞄には入っているのね」
「うん、勉強疲れするかなと思って入れておいたんだ」
「じゃあ、全部飲むのは良くないかな……?」
「大丈夫、まだ2つ入っているから」
「そう……」
萌依は2人で1つを分け合おうと考えていたが、その考えを打開される展開であった。
「何で、残念そうな顔しているの?」
「いや、別に何でもないよ。栄養も補給したし、勉強始めよう!」
「そうだね、何の教科の勉強する?」
「数学やろう。冴苦手でしょ?」
「はい、苦手です」
「でもさ、まだ計算問題なんだから、ここでつまづいてたら、後の単元なんか理解できなくなっちゃうよ?」
「そうだね……」
「じゃあ、式と証明やっていくよ」
「うん、恒等式解いていきますか」
「では、次の等式がxについての恒等式となるように、定数a、b、cの値を定めよ」
「a(x-4)+b(x+3)=7 ……はい、もうわかんない無理~意味わかんない~!」
「はい、投げ出さない。落ち着いて。冴もビタミンゼリー飲んで。それから解きましょう」
「わかった。ちゅーちゅー。ウマーい」
「栄養補給も終わったところで再開するわよ。まず、xに数を代入するの。等式が簡単になるように()内が0になるようにまず、両辺にx=4を代入すると、b+(4+3)=7よりb=1だということがわかる。今度は、x=-3を代入すると、a・(-3-4)=7よりa=-1。これで、aとbの値が分かったからa=-1とb=1左辺に代入すると、-(x-4)+(x+3)=7。-x+4+x+3=7となるから、この式は恒等式である。わかった?」
「わかった! 昼休みやったところと似ているな!」
「そうでしょ? もう忘れちゃったのかと思ったよ」
「私も案外体育で疲れていたのかもしれない……。ビタミンのおかげだな」
こんな調子で、毎日教科を変えて試験勉強に臨み、当日を迎える。駐輪場に行くと、萌依がいた。今日は隠れてなかった。
「おはよう、冴。調子はどう?」
「大丈夫だと思う! 萌依があんだけ教えてくれたから!!」
「ご褒美、待ってるからね」
「そうだ! ご褒美!! ふんす!! 燃えてきた~!!」
一緒に2階まで行って、頑張ろうね!と手を振って別れた。
教室の中には、夏実と杏がいた。
「おはよう、夏実、杏」
「「おはよう、冴(ちゃん)」」
「試験頑張ろうね」
「頑張ろ~」
「頑張ろ!早く終われ!」
「本当、早く終わって欲しいね」
出席番号順……と言っても、まだ席替えをしていないので、そのままの席で試験に臨む。予鈴が鳴る。担任が教室に入ってくる。
「ホームルーム始めるぞ~。今日からテストだ。自分の実力を思う存分発揮して欲しい。もう大学入学共通テストを受けている気分で集中して解くんだぞ。以上だ。最後の確認をしたいだろうから、これにてホームルームは終わりにする。くれぐれもカンニングなどの不正行為はするなよ」
担任は必要事項をだけを伝え、後は生徒達の勉強時間とした。冴はノートを見返してた。萌依の添削がある試験用のノートだ。これを見返せば、100点に近づくはず!!
本鈴が鳴る。先生が入ってくる。そして、一番前の席の生徒達にテスト用紙を配る。生徒は後ろに渡していく。1限目は数学だ。
(大丈夫……萌依とあんだけ勉強したんだから良い点取れるはず!!)
先生は時計を確認する。開始時間まで、あと10秒……9……8……
「始め!!」
最初は混乱しそうになったが深呼吸して落ち着いてテストの問題を読む。
(あ、萌依とやったところだ!!)
冴はすらすらとシャーペンを走らせて回答を書いていく。基本問題はすらすら書けた。だが、問題は応用問題だ。問題集からそのまま抜粋ではなく、数字を変えて出題されている為、生徒の実力が試される。
(とりあえず、書いてみるか)
1年の頃だったら空欄で提出していた冴だが、応用問題に取り組もうという意志が育ち成長していた。途中、数学の先生が入ってきて、生徒達の質問に答える時間が設けられたが、誰も質問することなく、50分が過ぎた。本鈴が鳴り、テスト用紙を後から前へ渡していき先生のところに回収されていく。
無事、テストの3日間を乗り越えた。そして、全教科のテストの返却も済んだ。今日はテスト返却で終わり、もう放課後だ。うん、この点数達なら大丈夫。それに、順位も上がっていた。今は、お疲れさん会をする為に、冴と萌依は冴の家に居る。
「テストお疲れ様~」
「お疲れ様~」
オレンジジュースで乾杯した。一気に飲み干す。
「あーっ!! テスト後のジュースが五臓六腑に染み渡るぜ~」
「その様子を見ると、点数良かったみたいね。見せて」
冴は自信満々に、テスト用紙を全部萌依に差し出す。1枚1枚見ていく萌依。目をまん丸にしてペラペラとめくっていく。
「嘘……全部、80点以上だ。数学が平均以上だなんて!!」
冴は、ふふんとドヤ顔でピースしながら萌依を見る。
「やるじゃん! 冴はやればできるんだったんだよ。応用問題にも取り組んで空欄作らないようにしているし……三角で惜しかったけどね」
「そうなんだよ、応用問題に三角だけど、点数がついたことに自分でも驚いたよ。これも萌依のおかげだね!! あ、そういえば、萌依はどうだったの?」
「え? 全部90点以上だったけど」
「マジか……今回なら点数的に勝っちゃったかなぁと思ったのになぁ」
「はい、証拠」
冴は萌依から萌依のテスト用紙を受け取ると1枚1枚見ていくと、確かにどの教科も90点以上であった。
「はぁ、まだ師匠を超えることはできなさそうか……」
「師匠って私のこと? ははは、まだまだ修行が足りんなぁ」
「でも、この点数ならご褒美貰ってもいいんだよね?」
「もちろん! よく頑張ったね」
萌依は冴の頭をなでなでした。
「あーなんだか落ち着く」
「褒め方が子供ぽかったかな?」
「いや、嬉しい。萌依に触れてもらえるから」
「もう、冴ったら」
「さて、そろそろ、本命行きますか!」
そう言って、冴は萌依を立たせる。
「重いって言わないでよ」
「大丈夫、この前持ち上げた時軽いって言ったじゃん!」
「今度は四つん這いの上に乗るんだから感じ方も変わるでしょ!」
「いいから、カモーン!!!!!」
冴は、ふんす!と鼻息を荒くして、四つん這いして萌依が上に乗るのを待つ。
「じゃあ……乗るよ?」
ゆっくり、冴の背中に腰を下ろす萌依。感じる萌依の体重。柔らかい双丘の感触。
「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
冴は腕立て伏せを始めた。普段より、負荷がかかっているというのに微塵も感じさせない程同じペースでこなす。
「萌依ぃぃ!! どんな感じだい!?」
「お馬さんごっこしてもらってる気分。あるいは、公園の遊具にあるバネでびよんびよんってなる遊具に乗っている気分。楽しい」
「そうかあああぁぁぁ!!!!! 私も楽しい!!!!!」
「良かった。ご褒美になって」
上下する体。滴る汗。
「ねぇ、辛くない? 冴?」
「平気だ。むしろ、乗り続けているの辛くないか?」
「それは大丈夫。冴が乗っててと言うまで乗ってるよ」
「よっしゃ! まだまだ乗っててよ!!」
「何か、罰ゲームさせてる気分だよ~」
「そんなことはない!! 至福の一時!!」
腕立て伏せの回数は100回は超えた。
「ねぇ、もう結構腕立て伏せしているんじゃない? オーバーワークは良くないよ……」
「はぁはぁ、まだだ……まだ、やれる」
と、言った刹那、冴の腕から力が抜け、へなへなと体が床につく。
「ちょっ!! 冴!! 大変!! 飲み物!!」
離れて飲み物を取りに行こうとするのを制する冴。
「大丈夫だから、まだ乗っていてくれないか? 萌依を感じていたいんだ」
「脱水症状で倒れないでよ~?」
そう言われて、おそるおそる、また冴の背中に座る萌依。
はぁ、はぁと息を荒げながら仰向けになる冴。
「疲れた? あと、どうしてこっち向くの?」
「萌依の顔を見たかったから。ご褒美ありがとう」
「どういたしまして。私、ただ冴の上を座っていただけど」
「良い筋トレになった」
「ねぇ、良かったら、私からのご褒美もあげていい?」
「え、何か用意しててくれたの? 嬉しい! 欲しい!」
「目、閉じて」
「え、目? わかった」
冴は目を閉じた。一体を貰えるのだろう。萌依は体を前のめりになり、
冴を覆うように被さる。そして、唇を冴の右頬に当てた。
「なんか、右頬に柔らかいものが……え!? 萌依!?!?!」
冴は思わず目を開け、右側に目を向ける。目を閉じてキスをしている萌依の姿。
「えへへ、キスしちゃった。恋人っぽいでしょ」
「キスされるとは……照れる……」
冴は顔を紅潮させて俯いてしまう。
「私だって恥ずかしかったんだからね!」
「まさか、期末テストのご褒美にお願いしようとしたことがもう叶ってしまうなんて」
「え? そうだったの? 先取しちゃったね」
「じゃあ、期末テストは、唇にお願いね」
「わわわ、わかった。冴、もう1回目を閉じて」
「? うん」
萌依は今度は左頬に唇を当てた。
「わぉ、両頬にしてもらっちゃった」
「冴、とても頑張ってたから。次もこの調子で頑張ってね」
「わかった!! 萌依、目閉じてくれない?」
「え? 私も? うん」
冴は右頬に口づけ、そして、すぐさま左頬にも口づけた。
「これで恋人同士に近づいたね」
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