第17話 ショウガ飴(2)
量産型候補さんの名前に関する照葉の頭脳労働はまだまだ続く。
(いっそのことストレートに言ってみるか?でも貴女の名前が気になりますから教えてください、代わりに私の名前をお教えします、というのも変な話だよね)
相手に怪しい人と思われたら、量産型候補さんと同じ車両に居られる通学時間がたいそう気まずいものに変わってしまうわけなのだ。
量産型候補さんの学校の文化祭にでも行ってればよかったと思うのだが、季節は晩冬。文化祭は秋。時すでに遅しだ。
(名前を教えてもらうってひょっとしてハードル高いことなのかな)
それなら、ハードルを下げるしかない。具体的に何をすればいいのかは分からないが、何かをしたい。
量産型候補さんについて自分ができる範囲で知りたいと思う。
(量産型候補さんの学校のあるところってどんなところなんだろう)
ふと思い浮かんだ言葉に、うずうずしてきた。
(これは……良いのか?ストーカーになるか?でも名前を無理に言わせるよりは学校のある街を見に行くくらいの方が紳士的か?紳士的っていっても私女子だけど……)
照葉は自分のボブヘアをくしゃくしゃ両手で掻き乱した。
(どうしよう。量産型候補さんの学校周辺を見に行きたくなった。あの辺り、私行った事無いし)
しかし、これは許される事なのか?という疑問と良心の呵責がある。
(本人に近寄らなければ大丈夫な気がする……校舎の近くまで行くと本人に会っちゃう確率が上がるから遠くから学校を見るだけなら……)
どんどん考えるうちに、問題なさそうな抜け道を見つけてしまいそうだ。
(本人に合うのが目的でなく、本人に縁がある場所を記念に見に行くのってわりとやってる人多いような)
アニメのモデルになった場所や映画等のロケ地を訪れて楽しむことはわりと広く行われている。そうした人の中には、好きな登場人物や俳優が過ごし場所に立ちたいという願望を持った人も多いだろう。
自分の願いとその願望は根が一つなのではないかという結論が照葉が出したものだった。
(許される可能性があるのなら、許される方法でこの願望を叶えよう)
照葉の気持ちは決まった。
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