相反する立場の二人が出会うところから始まる百合ファンタジーです。
誠実な主人公の聖女イサラと、悪名高い帝国兵士のルルハリルはどう見ても相性最悪。
捕虜となったルルハリルを法で裁くため、イサラが無断でルルハリルを連れ出したことで、逃亡劇が始まります。
お尋ね者になってしまった二人の行く先々で待ち受ける試練。
一つ、また一つと乗り越えて行く度に、二人の関係が少しずつ変化していきます。
逃亡の最中、目の当たりにする戦争の爪痕、戦争の罪には考えさせられるものもありました。
そして明かされる過酷な事情と、積み上げられたこれまでの戦争犯罪の数々。
戦争とは、こうも容易く人の運命を変えるのか、と同情したくなる自分を抑えながら読み進めて行くと、あら不思議。
あっという間に最終話。
面白いです。
ぜひオススメしたい作品です。
ライカンスロープのルルハリル。
もうね、戦争とはいえ、やっちゃダメなことのデパート状態なんですよ。
やることなすこと本当に酷い。
でも、悪運がつきてついには捕らわれの身に。
恨まれまくっているルルハリルは当然のことながら私刑にかけられそうになります。
それに待ったをかけるのが聖女のイサラさん。
当節、聖女って肩書は安くなっちゃってますけど、イサラさんは心正しく己の正義に忠実なホンモノです。
許婚のミケル王子を裏切ってでも、ルルハリルに正当な裁きを受けさせるように粉骨砕身します。
イサラを助けるのはスーパーお爺ちゃん騎士のマウリッツ。
百合に挟まる男はなんとやらですが、マウリッツが居なければイサラの目論見はすぐに潰えたことでしょう。
3人の逃避行が始まりますが、危機また危機の連続です。
暴力と死のオンパレード。
果たしてイサラは目的を達成できるのか?
水と油な関係のイサラとルルハリルに愛は目覚めるのか?
ハードボイルドな百合小説ここに開幕
聖女とは何か? 癒しの力に優れた女性? 清く正しい心を持つ人? 慈愛に溢れ哀れな人々を救う者?
本作の『聖女』イサラは内心ちょっとやさぐれた、心の中で遠慮なくつっこみを入れる、けっこう無茶なことをやらかす、だがまぎれもなく聖王国に選ばれた聖女。
そして――――婚約者である王子の意に反してでも自らの正義を貫き、数々の戦争犯罪を犯した捕虜に人道的な扱いを約束し、荒野に打ち捨てられた亡骸を弔うことができる本物の『聖女』。
戦争犯罪者、亜人ルルハリルの言い分には一理ある。法が守ってくれないから法を踏みにじる。
彼女を裁かんとするミケル王子は一面正しい。法を踏みにじる畜生には同じく法を破って応じるべし。
この不毛な連鎖を断とうとする聖女イサラ。それを為すには法を改め、無法が正しく裁かれなければならない。
だがその道のりは遠い。やさぐれ聖女イサラ、ケモミミ邪姫ルルハリル、スーパー法務騎士マウリッツ、彼女らが目指すは遥かジノヴィア主教国にて開かれる国際騎士法廷。ミケル王子の追跡を振り切り、堂々と法廷の場に立つことができるのか。
それぞれの正義が交差する百合と危険と百合が満載の逃避行、ぜひお楽しみください!