第16話
緑茶を飲み終わると、星十倉はカップを静かにテーブルに戻し、軽く伸びをしながら言った。「じゃあ、私、作詞の仕事があるから、そろそろ帰るね。」その言葉とともに、少しだけ笑顔を浮かべて、目の前にいる綿心に向けてさらに付け加える。「家は隣だけど。」まるで、別れの時に気軽に言う言葉のように、何気なく発した。
その言葉を聞いた綿心は思わず鈴のような笑声を上げ、元気よく言った。「隣に住んでて良かった!」その言葉には、星十倉に対する感謝と親しみが込められていて、何とも温かな響きがあった。それを聞いた星十倉は、心の中に温かさが広がり、隣に住むという距離感が、どこか心地よく感じられた。
「じゃあね、またね。」星十倉は軽く手を振り、家のドアを開けた。綿心が元気よく見送ってくれるのを背に、星十倉は少し笑いながら歩き出した。家に帰り自分の部屋に戻りながら、今の温かな言葉が胸に残っていた。その感謝の気持ちを大切に、部屋に戻った星十倉は部屋に入ると、すぐにノートを広げた。彼女は、ふと考え込むように、独り言をつぶやいた。「作詞って、私も独学なんだよね。」その言葉がふと口をついて出て、ペンを手に取った。ペンをくるりと回しながら、そのまま手を止め、何かを考えるように視線をぼんやりと定めていた。自分の作詞がどのように展開していけば良いのか、次にどんな言葉を繋げていけばいいのか、頭の中で言葉が行き来していた。考えがまとまらないまま、しばらくペンを回していたが、ふと綿心との会話が思い出された。
彼女が今、必死に小説を改良し、頑張っている姿が星十倉の心に強く響いていた。その姿に触発され、星十倉も自分の作詞をもっと良くしたい、もっと進めていきたいという気持ちが湧き上がってきた。彼女の頑張りが、自分にも影響を与えていることを感じて、星十倉は確信した。自分の作品もきっともっと良くなるし、進化するはずだと信じるようになった。
その決意を胸に、星十倉は改めてペンを持ち、ノートに向かって手を走らせた。ペンを進める手は、少し軽やかに、そして確信を持って、言葉を紡いでいった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます