第17話

作詞は独学だと思うけれど、それでも星十倉はふと、自分のこれまでの経験や出会った本、漫画、そして何気ない日常の中で感じたことが、実はすべてが自分の作詞に繋がっているのだと気づいた。例えば、家に帰る途中で見かけた風景や、友達と話した何気ない言葉、心に残った小さな出来事が、心の中でじわじわと育まれて、最終的に作詞として形になっていく。それって、実際に作詞の勉強をすることと、何ら変わりないんじゃないかと、ぼんやりと考えていた。


星十倉はそう思いながら、手に持ったペンをノートに走らせた。作詞のノートに書かれた言葉が、まるで無意識に流れるように次々と並んでいく。何度も繰り返して読み返しながら、自分が今感じていることを少しずつ表現していくその作業が、星十倉にはとても心地良いものだった。そして、その日の終わりに書き上げたのが、今手元にある詞だった。


その詞は、こんな言葉で始まっていた。


〘あらゆる現象のあらゆる場所における花束のような感謝はあなたの心をゆるく、深く、湖のように、泉のように青く仰ぐ人として生まれる。そのような心持ち、青い気持ちは淡い。〙


星十倉はその言葉が書き上がったとき、何かが心の中で解けたような気がした。感謝や心の持ちよう、そしてその奥にある清らかな気持ちが、静かな湖のように広がっていくイメージ。続けて書かれたのは、


〘あらゆる現象のあらゆる場所における花束のような命のきらめきは、魂をゆるく、深く、海のように、言霊のように青く、仰ぐ人として生まれる。そのような心持ち、青い気持ちは淡い。〙


命のきらめき、そしてそのきらめきが広がり、魂に触れる様子が浮かんでくる。海のように深く、言霊のように力強く、でも青く、淡い気持ちで生まれるものとして表現されていた。


星十倉はその詞を書き終えると、少し手を止め、ノートをじっと見つめていた。自分が思っていることを言葉にすることの不思議さと、言葉が心に響く瞬間の尊さを感じながら、まだ完成はしていないけれど、この詞に込めた感謝や想いが、きっと形になったときに、誰かの心にも届くことを信じていた。


ペンを置き、ふと視線を外に向けると、部屋の窓から見える空が、夕焼けで染まりつつあった。

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