第8話  俺、東京に来ただ

 そうして、俺は地元の中学を卒業するタイミングで、東京へとやって来たんだ。


 改めて驚いた! 高級住宅街のど真ん中にある有栖川家の大きさに。

 豪邸なんてものじゃない!! 地下一階の、地上三階建ての洋風造り。

 家族は、家主と娘さん一人だと聞いてたのに、こんなデッカイ屋敷は必要ないだろとも思ったが、色々と訳があるそうだ。


 太蔵さんと母さん二人とも再婚なので、家族だけの食事会で結婚式としたんだ。


 お義姉さんのさくら子さんが、俺の顔を見た途端に大きなため息をついて、「本当に来たのね」と言った。


「どういうこと? 俺は、虎太郎と離れたくなかっただけだよ」


「財産目当てじゃないのは、褒めてあげるわ。悪いことは言わないわ。ネコは引き取ってあげるから、今からでもS県にお帰りなさい」


 櫻子さんは、背中の真ん中まで伸ばした、ワンレンのストレートヘアが俺の顔に触れるくらいにひっつけていった。

 でも俺には、まだ東京でやりたいことがあったんだ!!


 それは【怪物の幻夢】の《聖地巡礼》。未来東京が舞台だけど、舞台になってる、寺や、坂や、建物が、わんさかとあるんだ。

 ここから近ければ、明日からでも回るぞ!!


「俺は、東京でやりたいことが山のようにあるんですよ。櫻子さん」


 俺が、そう言うと櫻子さんは、大きく息を付いて言った。


「この有栖川家に来て、そんな自由はないわよ」


「有栖川!?」


 俺は、この時まで太蔵さんの名字が「有栖川」なんて昔の華族のような名前だとは知らなかった。


 俺は、太蔵さんに母さんとの結婚を許すための条件二つつけた。


 一つは「虎太郎」を連れていくことを許してくれること。もう一つは、俺の名前の光宙ピカチュウを高校入学時に、改名を許して欲しいということだった。

 東京で、ピカチュウはさすがに恥ずかしい。


 太蔵さんは、虎太郎の件は許してくれたけど、俺が有栖川の姓を名乗ることと、実父の形見である名前は大事にしろと言われ、大蔵が許可する時まで今のままでいろと言うんだ。


「櫻子さ~~ん!!」


 俺は、櫻子さんに救いを求めた。でも……


「その方が、父とっては都合が良いのよ」


 と、ニッコリ笑って、取り合ってくれない。 


 俺は、いつまで有栖川ありすかわ光宙ぴかちゅうになんだ~~!! 

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