第9話  有栖川家の執事

 三月の下旬に僕と母さんは、東京にやって来た。

 地元の荷物は、虎太郎くらいで身一つで来いと言われたので、本当に母さんも俺の荷物は、最小限のものだった。


 有栖川家に着いたら、太蔵さんも櫻子さんも留守だった。

 その代わりに出てきたのが、だという時任ときとうという壮年の男が出てきた。


「お話は伺っています。ワタシは当家を預かる執事の時任秀隆と申します。奥様。坊ちゃま」


 坊ちゃま!! と聞いて、背中がゾッとしたぞ!! 15歳にもなって坊ちゃまなんて……。


「あの……坊ちゃま呼びはやめて下さい」


「では、ピカチュウ様とお呼び知ることになりますが?」


 俺の名前に様なんて付けるなんて! なんの拷問だよ!! 俺は観念して「お坊ちゃまで良いです……」と小さな声で言った。


 母さんは吹き出している。


「それから、奥様とご主人様を呼ぶときは『お父様』『お母様』と呼ぶようにしてください。仮にもあなた様は有栖川家の縁の者になった訳ですから」


 時任さんは、厳しい口調で言った。


「太蔵さんをお父様……」


 俺は、笑いそうになる。でも時任ときとうさんの目は真剣だ。


「後で、お部屋に案内させますが、ネコはご自分でお世話して下さい。ネコアレルギーの使用人もおりますので」


 そうなんだぁ……俺は、うんうんと頷いた。


「坊ちゃま、ご理解頂けたときは『分かった』と、仰って下さい。当家のご子息が、下々のような振舞いをなさってはいけません」


 なんだーー!! こりゃぁーー!! エライ所に来てしまったみたいだぞ~~

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