第3話

 そんな大きな声が聞こえてきた方を見れば、もはやウチのクラスでは男子のグループがいた。


 一見、三人の不良に絡まれている一人の少年。

 まさに今、が発生しているというのに誰も干渉せず傍観に徹している。



 何故なら――


「えぇ~、もうすぐ次の授業が始まっちゃうよ?」


「つ、つべこべ、言ってねぇで……さ、さっさと行けよっ!」


「三秒いにゃっ!? ……――ぅんんっ、と、とにかくダッシュで行けっ! ダッシュでっ!!」


「そんじゃ行ってくるよ~」


「「「さ、さっさと行けっ!」」」



 ――と、こんな感じで……、


「おいこらぁっ! 見世モンじゃねんだぞ、おらぁっ!」 


 バタバタバタッ。



 ……と、こんな感じで、どこかぎこちない不良の人たちの恐喝に飄々としたいじめられっ子がゆったりと出ていき、その背中を見送った後の彼らのうちの一人が因縁をつけ威嚇してき傍観者わたしたちが散っていくまでが流れお約束だ。


 入学してから二日後、急に始まった遣り取りに教室中ヤキモキしていたけれど、さすがに発生している上に誰だって軽く「また始まったな」って流せるようになった。


 ただ、あの人たちは本当に怖くて傍観者わたしたちに向ける威嚇はで、あのいじめられっ子に対するとき演技だいこんになる。


 だから私を含めてクラスのみんなは思っていてもツッコめな――



「毎度毎度、あのは何なんだろうな……」


「じゅん~、本当にそう思っていても口に出さないで心に仕舞っておくのが優しさってものだよ~?」


「「「…………」」」


 潤さんの鋼のメンタルもさることながら、心陽さん……貴女、特大のブーメランを投げているって気付いてますか?

 まあ、貴女の場合は突き刺さる前に喜んで咥えて戻ってくるのでしょうね……。


「さっすがワン娘の心陽! ナイスブーメランっ!」


「またワン娘って言ったぁ~っ! ブーメランって何さぁ~っ!!」


 私は二人のじゃれ合いを見守りながら出ていったいじめられっ子? の事を考えていた。


 あの怖い不良の人たちの恐喝が演技だったとしてもように見えて、むしろ『いじめられっ子』に強いらされている感じがする。


 と言うよりもしっくりくる。


 だとしたら、彼はなのか――



「おーい、綾女ぇ。聞こえてるかぁ?」


「え? ……きゃぁつ!? じ、潤さん!? び、びっくりしたぁ……」


 気が付くと目の前で手をひらひらとさせる潤さんのアップ。

 あまりにも考え込み過ぎは良くないです。男子だったら心臓停止だったかも知れません――それくらいには驚きました……。


「ひょっとしてが発動してない?」


「ど、どうでしょう? じゃあ、私はこれで……」


「思いっきり発動してんじゃん!」


 教室入口へ足を向ける私に盛大にツッコむ潤さん。


 そう、が私の悪い癖。


 興味が湧いてくると突っ込まずにはいられない性質タチで、何度となく痛い目に遭ってきたにも拘らず進んでいく。男性恐怖症に陥っていても変わることもなく……。


「ま、止めても無駄って判ってるけどな……」


「いてら~」


 潤さんのため息交じりのボヤキと心陽さんの呑気な見送りの言葉を背に私は廊下へ飛び出した。


 そして予鈴が鳴り響く。




 この行動がのちに私のことなど知る由もなく――

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