第5話 燃える村

急いで炎の発生源へ向かったのだがやはり燃えているのは村で間違いなかった。


 フォレストウルフが群れで襲ったのだ。


 「おかしいな、フォレストウルフはコボルトなどの雑魚を狩りの対象にして、冒険者の存在を理解しているため人間は襲わないはずだ。」


 首を傾げイーサンが少し動揺しているのがわかる。


 「それになんでもえてるの?ふぉれすとうるふはまじゅつをつかえないはずよ〜」


エヴァにもこの状況が理解できないらしい。


 「それより村人助けなくていいの?」


 異世界に来てまだ二日目で状況が全く分かってない鳴海は逆に冷静だった。


 イーサンは未だ納得してないながらも指示をだす。


 「エヴァはフォレストウルフの殲滅、ケルススは村人の救助だ。」


イーサンがだした指示と同時にエヴァが魔術を放つ。


「みんな危ないよけて!氷の雨アイス・レイン」


 「あぶね、どこ狙ってんだ!」


一人の村人が叫ぶ。


 エヴァは広範囲に魔術を放ったため村人にまで命中しそうになっている。


 笑っているので分かってやっているのだろう。ケルススが言っていた通りやはりサイコパスなんだろうか?


 一方で適切に仕事をしている。氷の魔術を使った事でフォレストウルフと炎の鎮火を同時に行なっているようだ。


 ケルススは村人を安全な森の方へ誘導する。


 フォレストウルフではなくエヴァの放つ魔術から守っている形になってしまっているが。


 五分も立たずに村人の救助、フォレストウルフの殲滅、炎の鎮火を終えた。


 村の規模が小さいこともあって被害は最小限にできたと言っていいだろう。


 「まだ、アンリさんが中に残されている。彼女は足が悪いんだ一人じゃ逃げられない。」


 救助された村人の一人がイーサンの足にしがみつきながら言う。


 「もちろん助けよう。」


イーサンはそう言うとエヴァとケルススについて来るように言うと村の中へ進んでいく。


 俺は?と思ったが忘れているのか、足で纏いになるから放置しているのかわからないが何か起こる気がしたので後ろからこっそりついて行くことにした。


 三人は崩壊した一つの家の前で立ち尽くしていた。


 何があったのか三人の元へ近づいていく。


 状況はすぐに理解できた。金髪で三十代くらいの女性が血を流し息絶えていた。


 おそらくさっきの村人が話していた女性だろう。


 「ユニークモンスターが現れたか」

 

 イーサンが聞こえないほど小さい声で呟く。


 ユニークモンスター簡単に言えば突然変異による強化個体だ。


 これも異世界系のラノベを読めば必ずと言ってもいいほど出てくる。


 「むらがもえていたこともこれでせつめいがつくね〜」


エヴァもユニークモンスターがいることに確信しているようだ。


 フォレストウルフは家を崩壊させることができるほどのパワーを持ち合わせていない。

 

 つまりフォレストウルフのユニークは巨大だということが予想できエヴァの発言から魔術も使えるのだろう。


 「家が崩れてる!母さん無事?」


 自分と同じくらいの年の青年が後ろから走ってくる。


 青年は母さんと言っていたが、青年は紫の髪に紫の瞳をしていた。


 全く血が繋がっているようには見えない、養子とかなのだろうか?



 立ち尽くす四人の横を走り抜け、彼の母であろう女性の亡骸を抱きしめ慟哭する。




####




 クラウド・コンスは母に頼まれて薬草を採取していた。


 料理の香り付けに使うやくそうだが、たまたま切らしていたらしく暇だったので森の中へ取りにきていた。


 それにクラウドには村に居たくない理由があった。


 それは紫の髪と瞳を持っていることだ。


 母さんも父さんも金髪で青い瞳をしていたため産まれた瞬間から村人には悪魔の子や醜い子と言われて育ってきた。


 母さんは味方でいてくれたが父さんは母さんにあんなこを産ませてしまって申し訳ないと謝り首を吊ったそうだ。


 そのため母さんがこの世界の全てで母さんさえいればそれでよかったのだが母さんは死んだ。


 薬草採取を終えて村へ戻る途中火の手が上がっていることに気づいた。


 全力て走り村へ戻ると避難していた村人に会うことができた。


 クラウドのことは悪魔の子や醜い子と今まで罵ってきていたが、まだ人間の心を持っていたようで母さんが村に取り残されてしまっていると優しく教えてくれた。


 フォレストウルフが襲って来たことも聞いた。それでも母さんを助けるため村へ向かう。途中、村人が危険だからやめておけと言ってきたがもちろん助けにいくのはやめない。


 母さんは自分にとって世界のすべてだ。


 村は決して広くないためすぐに家へたどり着いた。


 道中フォレストウルフに出会わなかったのは奇跡としか思えない。


 家が燃え上がり崩壊しているのが見えた。


 目の前に村人ではない四人組がいたが無視して家の前へ向かった。


 家が崩壊していら時点で何処か察してはいたが母さんは家の目の前で死んでいた。


 この世界の全てが崩れ去った気がした。


 人生で初めて泣き叫んだ。村人に罵られようが母さんがいればよかっただがその母さんが死んだ。


 頭の中がぐちゃぐちゃにかき混ぜられたような感覚になる。


 どうしてこうなった?なぜフォレストウルフが村を襲った?


 でもここにくるまで一体もフォレストウルフを見かけなかった。


 そうかお前らかそこに立ち尽くす四人組がやったんだな。


 村人たちと手を組んで母さんを殺したんだ、そうだ絶対にそうだ。


 許せない。許せない。ゼッタイニユルセナイ。


 家の物陰から出てくる巨大な狼、フォレストウルフのユニーク種に気づくことなく復讐の炎を燃え上がらせる。


 母さんが殺されたことで初めて感じた強い怒り悲しみが激情が厄災となる。


 黒い炎が青年から放たれ辺りを焼き尽くす。


 村人、鳴海たち四人組、フォレストウルフのユニーク種までも焼き尽くし炭となる。


 激情が彼の中に眠るパッシブを目覚めさせたのだった。

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平凡で勇者で賢者による魔王討伐譚 @koikage

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