第28話
盗賊団のアジトを駆け抜け、俺たちは最奥──頭領の部屋へとたどり着いた。
そこで目にした光景は、まさに圧巻だった。
ゲームでの原作なら、レオンたちは頭領に苦戦しながらも、なんとか勝利をもぎ取る展開だった。だが──
「すごい……」
思わず、声が漏れた。
レオンは頭領の動きを完璧に読み切り、最小限の動きで攻撃を回避している。ブレッドは前線に立ち、どんな攻撃も鉄壁の防御で受け止めていた。そしてリリアナは、回復だけでなく支援魔法を切れ目なく展開し、戦況を圧倒的に有利に導いていた。
(この時期にここまで……。この調子なら、ラスボス戦も決して不可能じゃない)
だが、俺には別の目的がある。
この戦闘が終わった後、原作では──頭領が敗北の間際に、リリアナに声を封じる呪いをかけてくる。それを阻止するために、俺はここに来た。
作戦はシンプル。レオンがとどめを刺す瞬間に、俺の最大火力で横槍を入れる。呪いを唱える隙さえ与えず、完全に仕留めるつもりだった。
そのとき──
「ダークランス」
俺の背後から、静かながら鋭い声が響いた。
黒き槍が、一直線に敵の頭領を貫く。
ズゴォンッ!!!
「ぐはっ……こ、この魔力は……な、ぜ、あなたが……」
断末魔を漏らし、盗賊団の頭領は力なく崩れ落ちた。
俺は一瞬、何が起きたのかわからなかった。
この盗賊団は帝国が裏で操っている。
ダークランスは俺の後ろにいる人物、つまりアリシアが放ったものだ。
帝国の人間しかも皇族であるアリシアが、自ら手を下すなんて──完全に想定外だった。
「アリシア……なんでお前が……?」
混乱する俺の前で、レオンたちがこちらに気づいた。レオンは顔をしかめ、鋭い足取りで俺たちのもとへと歩み寄る。
「コア・クトーマ……君たちは、まさか僕たちの手柄を横取りしに来たのか!?」
怒気を含んだ声。怒りの色を露わにしたレオンが、まっすぐ俺を睨みつけてくる。
(……ここは悪役に徹するか)
「そう──」
「コア様は、レオン様の手助けをするためにここに来たのですわ!」
俺の言葉を遮るように、アリシアが俺とレオンの間に立ちふさがる。
「僕を手助け?そんな冗談、どう信じろと言うんだ」
「コア様は、優勝景品が盗まれないように、事前に策を講じていたのですわ」
「ますます信用できない!」
「そうはおっしゃいましても──」
「お、おいアリシア、ちょっと落ち着──ッ!」
視界の端で、動く影。
倒れていたはずの盗賊団の頭領が、再び起き上がっていた。何かを呟きながら、禍々しいオーラを解き放つ。
それは一直線にアリシアを狙って放たれた。
「アリシア!! 危ない!!」
反射的に、俺の体が動いた。
全力でアリシアを突き飛ばし、代わりに──その呪詛を受ける。
ズギンッ!!
激痛が全身を貫く。
「ぐああああああッ!!」
崩れ落ちる視界。霞む意識。だが──
「コア様!? だいじょうぶですか!?」
アリシアの声が、かすかに届いた。
(……良かった。アリシアは無事だ……)
それを最後に、俺の意識は闇に沈んだ。
ーーー
頭領は悔しげに舌打ちをした。
「チッ……余計な、ぜぇぜぇ……邪魔が……」
最後の力を振り絞った呪詛だったようだ。すでに立つこともできず、膝をついている。
事態を察したレオンが、すぐさま頭領にとどめを刺す。
倒れた頭領の胸元から、優勝景品を取り出すレオン。
目的は達成されたはずだった。
だが彼は、小さく呟く。
「……なのに、なんでこんな気分になるんだ」
そう言い残し、意識を失ったコアのもとへと駆け寄っていった。
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