第2話プロローグ2

「あ、お兄ちゃんごめんね?いきなり倒れちゃってこんなときに」


健気な笑顔で遥はそう言ってきた。自分がさっきあんなに痛い目にあったのにこちらを気遣うように言ってきた。遥かになんと説明すればいいんだか。


「心労が祟ったんだろうよ。だから折角だから、心身がを回復していけよ」


「そうだねぇー。早く回復してカフェでバイトして、甘い料理を覚えて、お兄ちゃんに作ってあげたいなぁー」


そう未来を馳せながら、言ってきた。やっぱり言えない。こんなに借金を背負ってるのに、未来に希望を持っている遥に白血病なんだとは言えない。俺はなんとか笑顔を作る。


「そうだな、楽しみだな。遥の作る甘いケーキ。それじゃ俺はそろそろ行くな。じゃあね」


俺はこれ以上キラキラしている遥を見ると、心臓が張り切れそうだったので、急ぐように病室をでた。病院をでて、俺は近くの公園にいた。


「くそっなんであんなに可愛くて、未来に幸福を持ち、苦しんでもこっちを気遣える遥が病気になるんだよ。なんで俺が病気になったりしないんだよ。なんで遥なんだ!神様はいないのか!それとも俺にひとりぼっちなって苦しめって言うのか!」


神様は残酷か。もしいるなら、遥を死なさないで、俺を病気にしてほしかった。なんで遥なんだよ。俺の方が生きる価値ないだろ。俺は投げやりな気持ちを缶を潰して、落ち着かせようとした。


「嘆いても仕方ないか。もう賽は投げられたんだから。それなら何とかしてこの大金を稼ぐしかないよな。無理なら俺も死を選択肢にいれよう」


俺は空き缶を捨てて、公園をでた。電車はないので、歩いて帰ることにした。タクシーを拾うお金が勿体ないからな。それに歩いてギリギリ帰れる距離だし。周りの人から見たらすごい陰痛そうな表情をした男に見えるだろうが。


周りから変な目で見られながらも、俺は家に無事に帰ることができた。俺は家に帰ると、遥とのツーショット写真を見た。


遥なんとしてでもお金はどうにかするからな。俺は短期間でお金をたくさん稼げる方法を探した。闇バイトは論外だ。犯罪に手を染めたなんて、遥に知られたら、軽蔑される。だが後は薬の検査ぐらいだが。これをやると、他のバイトができなくなる。どうしたものか。


するとある広告を見つけた。ゲームでリーダーとして全国統一すれば十億だと。これなら借金も返せるし、手術代も出せる。俺は両親がいなくなるまではよくゲームをやっていた。


「VRMMOか、ギアは高くつくが、全国統一すれば問題ないか。一番の問題は時間だな。すぐに統一して、遥と借金をどうにかしてやる」


俺は早速ギアを買うことにして、ゲームソフトを買おうとしたら、これには検査があるようだった。千葉市で検査をしてるらしいから、俺は予約をした。


そしてもう夜遅くて、明日バイトがあるから、俺は寝ることにした。


「絶対に遥、救ってやるからな」


そう思いながら、俺は眠りについた。


朝日の陽光で俺は起きると、新聞の配達のバイトをして、夕方まで暇なので、そこに検査の予約をいれた。そして千葉駅の近くにある検査場に入った。


「あの予約をしていた名倉というものなんですか」


「名倉さまですね。こちらへどうぞ」

 

俺は一番と書いてあるところで、血液検査と、水晶のまえで、手をおいてくださいと言われて、手をおいた。すると周囲が騒がしくなった。


「千葉県から、100人目の候補者が現れたぞ。国へ報告しろ」


「はい、分かりました!」


そう言って、部下っぽい人はどっかにいった。国に報告ってゲームなのに、そんなとんでもないことになっているのか?まぁお金をもらえればなんでもいいか。


「それで名倉さんこれに応募するってことは、お金に困っているということでいいかね?」


「そうですね、今借金を抱えてまして、おまけに妹が病気になったんです」


こんなことを言っても、何にもならないだろう。だがなぜかこの人には嘘をついても見破られるような気がして、本当のことを言ってしまった。


「そうかい、それならギアとソフトはうちで払おう」


無料か、ただほど高いものはないと言うが、そんなことを思っている暇はない。遥の病魔は今このととも進行しているのだから。情報も集めなきゃいけないし。


「お願いします」


「それじゃこれで検査は終わりだから、もう帰っていいよ」


「分かりました。失礼します」


担当の役人は名倉の数値を見て、笑みをこぼす。


「これほどの高い数値を出した人は過去10人にも満たないな。才能はかなりあるといっていいだろう。将来に期待だな。さぁ見せてみろ。君の冒険しょうを!」


そう言って、つくづく有望な若者を見るのはいいなという顔をしていた。そして、今の問題を解決できるのはこの子までしれないと期待を抱いていた。


それから三日経ち、ギアとソフトが届いた。そしてサービスを開始するのは、今日である。俺はこれで遥を救ってやると誓いながら、ギアをはめて、カセットをセットしてゲームを開始する。


「リンクスタート!」



これが後に吟遊詩人に語られることになる男の伝説が始まる。信頼して、死を乗り越え、裏切られ、仲間の大切さを知ることになる。そして全国にその武勇が届く男の物語の始まりである。



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