二人を守るために力を求めた結果…
光は…… ザーマの身体を貫くように一直線に、霧を晴らしながら空へと向かって飛んで…… 消えていった……
「根暗メス猫まで…… しかしあの力…… 女神様とは違うが似たような神の力を感じたな……」
「うん…… それに優しくて強い力だった…… 井戸田さんって何となく考え方が私に似ていると思っていたけど…… 私なんかよりももっと強い女性だったんだね…… やっぱりお母さんだったからかな……」
井戸田さんもザーマに狂わされなかったら今頃、宇藤と幸せに暮らしていたのかもしれないと思うと…… ザーマに対して更に怒りが湧いてきた。
そして井戸田さんの最後の力を振り絞った攻撃を受けたザーマは……
「ぐっ! あぁぁ…… チ、チクショウ…… これはアイツの力…… アイツのせいで…… 溜めていた負のエネルギーがゴッソリ持っていかれた……」
かなりのダメージだったのか、腹を押さえながら片膝をついていた。
「よし! 今だお嬢ちゃん、一気に叩くぞ!!」
「ぐすっ…… うん!! 宇藤くんと井戸田さん、そしてお腹の赤ちゃんが作ってくれたチャンス…… 絶対に無駄にしないよ!」
ニャン太郎がサラの力を利用してザーマの前に瞬間移動し、右に左にとランダムに肉球で叩き、ザーマをボンさせる。
「ウニャウニャウニャウニャウニャウニャウニャウニャウニャウニャウニャ…… ウニャアァァッ!! まだまだいくぜぇー! ウニャウニャァァァッ!!」
「時間よ止まって…… お願い、ニャン太郎ちゃん!」
サラの時間を操る力のサポートにより、ニャン太郎がどこから現れるか分からないのか、ザーマは膝を付いたまま二人の攻撃を防ぐ事で精一杯みたいだ。
「ぬわぁぁぁっ!! き、キサマらぁぁ、調子に乗るなっ…… ぐわぁぁぁぁーーー!!」
凄い! ザーマの身体が次々にボンして、ザーマのやつ膝をついたまま立ち上がれないぞ!
弱っているうちに、このまま一気に……
「ちょ…… 調子に乗るなと言っているだろぉぉぉぉっ!! はぁっ!!」
「ウッ! ニャアァァァ……」
「きゃあぁぁっ!」
あぁっ! ニャン太郎! サラ! そ、そんな……
ザーマの身体から伸びた黒いモヤモヤがニャン太郎とサラの首に絡み付いて…… 大丈夫か!?
「グッ、ニャアァ、ァ、ァ、ァ……」
「う、ぐ、ぐぅ……」
「虫ケラごときが調子に乗るなよ? このままお前達もあの虫ケラと同じように二度と生まれ変わる事の出来ないように存在を消してやる!」
二人ともモヤモヤに身体を持ち上げられ、苦しそうにもがいている! このままじゃ二人とも……
「や、やめろー! やめてくれー!!」
「カ、カイト……」
「に、げて…… カイト…… くん……」
サラとニャン太郎をこのままにして逃げるなんて出来るわけないだろ!?
くそぉっ…… 二人を離せーーー!!
「……んっ? おい、お前、我に石ころを投げたか? 的にされ石を投げられて泣きべそをかいていた雑魚のお前ごときが…… 神である我に石を投げるとは…… ふっふっふっ、舐めた真似を…… ではまずお前の存在から消してやろう! 死ねぇぇぇー!!」
「カ、イ、ト……」
「カ、イトく……ん」
ぐぁぁぁー!! な、何だいきなり黒いモヤモヤが…… 離せ! 離せぇぇー!!
「このまま首を飛ばされるか、それとも身体を引き裂かれたいか、どちらか好きな方をお前に選ばせてやる」
「ぐ、う、うぅ……」
ちくしょ…… う…… サラ…… ニャン太郎……
俺にも力があれば…… 二人を守るだけの力が……
結局最後まで迷惑をかけて…… 役立たずのままか……
サラ…… ごめんな……
こんな最後まで情けない俺だけど…… サラを誰よりも愛してるんだ……
今度こそは絶対に…… サラを幸せにと……
『カイトくん……』
えっ? サ、サラ……?
突然、俺達の身体に絡み付いていた黒いモヤモヤが消えていくのと同時に、背中がじんわりと温かくなったように感じた。
そして背中が気になった俺はゆっくりと後ろを向くとそこには……
えっ? な、何で…… 目の前にはニャン太郎と一緒にさっきまでザーマの力で首を絞められていたサラがいるのに、何で俺の後ろに…… サラがいるんだ!?
しかもタイムリープして高校生に戻ったサラじゃない。
これは…… タイムリープ前の、三十歳くらいのサラ…… だよな?
「サ、サラ……?」
『カイトくん……』
そして三十歳の…… 背後霊のようなサラは、後ろから優しく包み込むように俺を抱き締めて……
ちょ、ちょ、ちょっとサラ!? 何で回した手を下の方に伸ばして…… そして何で俺のズボンのチャックを下げようとしているんだ!?
あうっ! そ、そこはダメだって……
『ふふふっ……』
ふふふっ、じゃないよ!! 今はそんな事をしている場合じゃ……
あぁぁっ! サラ、らめぇぇぇぇーー!!
…………うっ!
「な、な、何だ、この力はぁっ!! ぬわぁぁぁーー!! 止めろ! 我に纏わりつくな!! 止めろ、止めろぉっ!!」
これは一体…… どうなっているんだ?
サラが俺のズボンのチャックを下ろし、その中に手を突っ込んだと思ったら……
十五センチくらいの小さな…… 可愛らしくデフォルメされた、かろうじて俺の分身だと分かるものが…… 無数に飛び出してきて、ザーマに向かって飛んで行った。
そしてその大量の分身がザーマの身体に纏わりつき、ザーマの動きを封じている。
「ぐっ! この分身、スライムみたいにベタベタして身動きが…… おい、虫ケラ! 一体何をした!」
お、俺が聞きたいよ……
なあ、サラ、これは一体……
『カイトくんがこっちの私を愛し、守りたいという強い想いが、カイトくんの力を目覚めさせたんだよ…… そしてカイトくんが目覚めた能力は…… 自分のズボンのチャックを下ろすと何十億もの分身を出現させて攻撃出来るっていう力…… 名付けて…… 『ティコッキィ・フィン……』』
おいおいおい! 変な名前を付けるな! 本当に色々と危ないからやめろやめろ!! その名前は完全にアウトだよ!! もう二度と口にしちゃダメぇ!!
『えぇー? アリだと思ったんだけどなぁ……』
無し無し無しぃぃ!! ああ、もう! ピンチでシリアスな雰囲気でだったのに台無しだよ!
『ふふふっ、相変わらずカイトくんは元気だね……』
どっちの意味で!? 必死にツッコんでいるからだよね? そうだよね?
『カイトくんはどこでもすぐにツッコミたがるもんね…… ふふふっ』
だからどっちの意味なのぉぉぉーー!?
『そんな事より、今はザーマの相手をしないと』
そ、そうだった! ザーマは……
「臭っ! ベタベタする上に生臭い!! 神である我が何故こんな仕打ちを……」
く、臭いんだ…… 俺の能力らしいけどちょっとショック……
『カイトくん、最近お肉ばっかり食べているんじゃない? 食べ物によって臭いも変わるらしいよ?』
食生活が能力に関係あるの!? ないよね? ないと言って!!
『好き嫌いはダメだよ?』
してないわ! 最近は…… サラの手料理しか食べてないし!
『私の事だからきっと、元気が出るようなものばかり食べさせていたのね…… 間違いないわ……』
そ、そうなのか? あっ…… あっちにいる若いサラがスッと目を逸らした!! 俺をそんな元気にしてナニをするつもりだったんだ!!
『それよりもザーマが分身を振り払おうとしているから…… もっと分身を出しちゃって完全に動きを封じちゃお? そーれ、ガンバレ! ガンバレ!』
サラ!? ひぃ! らめぇっ! 俺のライフが減っちゃうぅぅーー!!
でも、この能力でサラとニャン太郎を助けられるのなら…… あははっ、もうどうにでもなぁれー!!
「ぬわっ! 臭っ! うわぁぁー!! やめろぉぉぉーーー!!」
くらいやがれザーマ! 俺の能力でサラとニャン太郎を…… 守るどー!!
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