遊紀、禎子の贖罪

「宇藤! ど、どうして俺を庇ったんだ……」


「じょ、城ノ内くんには…… 僕のつまらない嫉妬のせいで…… 沢山迷惑を…… かけちゃったから……」


 い、いきなりどうしたんだ? さっきまで俺を○そうとしていたのに……


「与えられた力はザーマに回収されたよ…… あんな力のせいで僕は……」


 さっき見た時にザーマに磔にされて苦しそうにしていたのは…… もしかして力を回収されていたからか?


「最初は軽い嫉妬だったんだ、高校卒業してから城ノ内くんと久しぶりに会った時、城ノ内くんは変わらず吉ヶ江さんと幸せそうに生活していて…… 少しだけ『羨ましいな』と思った瞬間、僕の心にザーマは力を送り込んできたんだ」


 嫉妬…… 宇藤は高校生の時、サラを好きだったみたいだから……


「今思えば吉ヶ江さんを『好き』というほどの感情は抱いていなかったよ、『可愛いな』とは思っていたけど…… 気になっていつも目で追っていたり、たまに学校から帰る時に吉ヶ江さんと同じ方向を帰ってみたりしただけで、声をかける勇気すらなかったからね…… でもザーマに力を与えられてから、怒りや憎しみの感情を自分でコントロール出来ないくらい増幅されて…… 過剰なくらい城ノ内くんに嫉妬してしまったんだ」


 好きではなかったのか…… でも帰りに後をつけるとか…… ストーカーと間違えられてもおかしくないぞ?


「それにザーマに力を与えられた頃は、僕は既に禎子と付き合っていて十分幸せだったはずなのに…… 負の感情に飲み込まれて、過去の思い出も都合の良いように改ざんされて…… 嫉妬や怒りに任せて行動していたら、結局…… 色々な人を不幸にしてしまった……」


 井戸田さんとはそんな長い付き合いだったのか…… 


「今更どうしようもないけど…… せめて、今の城ノ内くん達に少しでも償うために…… 僕はこの命を差し出すよ…… ぐぅぅっ!!」


 するとザーマから放たれ、宇藤の腹に刺さっていた黒いモヤモヤが…… 宇藤の身体に吸い込まれて…… それ、吸収しているように見えるけど大丈夫なのか!?


「ぐぁぁっ…… 城ノ内くん、今まで本当にごめん…… どうか…… この新しい世界では…… 吉ヶ江さんと幸せに生きて欲しい…… だから…… 必ず…… 生きて帰ってね…… うぉぉぉーーー!!」


 宇藤!!


「なっ!? 虫ケラが何を…… 我は神だ、虫ケラが触れていいような存在ではないのだ! くっ、離せ!!」


 ザーマの力を吸収した宇藤が勢い良く駆け出し、ザーマに体当たりするようにしがみついた…… そして……


「さようなら…… 城ノ内くん…… どうか死なないで……」


 宇藤の身体が激しい光を放ちながら…… 爆発した! 


「う、宇藤ぉぉぉーーー!!」


 離れた位置にいる俺の方まで爆発による衝撃が伝わってくるくらいの激しい爆発…… 負の感情によるモヤモヤとした霧がザーマがいた場所を中心に晴れたように見える。


「あぁぁ…… 宇藤……」


 何の力もない俺にだって…… 宇藤の存在が消えた事が分かってしまった……


 宇藤…… お前だってタイムリープしたんだろ? 自分の過ちに気が付いて反省していたのなら…… 宇藤だってこれからやり直せば良かったのに…… 何で消える事を選んでしまったんだよ……


 俺に迷惑をかけたとか言ってたけど、あれは俺の心の弱さのせいでもあるんだぞ?

宇藤だってザーマに人生を狂わされた被害者じゃないか……


「い、いやぁ…… 遊…… 紀くん…… 遊紀くぅぅぅん!! いやぁぁぁーーー!!」


 宇藤が自爆したのを見ていた井戸田さんが絶望した表情で泣き叫んでいる……


「あのチビ猫…… ムチャしやがって…… 背後霊とはいえ、あれじゃあ生まれ変わることすら……」


「償うためにって…… また一番大切な人を傷付けるような事をしちゃダメじゃない……」


「いやぁ…… 遊紀くん…… おいてかないでぇ…… ずっと一緒にいてくれるって言ったじゃない……」


 何でだよ!! 本当に最後までバカな事をして…… そんな償いなんて誰も求めてないのに……

 でも宇藤のおかげでザーマを無力化出来た……




「ふん…… 今のは少し効いたな…… だが、そんな攻撃では我を無力化なんて出来ないぞ」


 う、嘘だろ…… 凄い爆発だったぞ…… あれで無事だなんて…… じゃあニャン太郎とサラの『ボン』くらいじゃ……


「チッ! しぶといヤローだぜ……」


「あれでも駄目なんて……」


 ど、どうすればいいんだよ、この状況…… やっぱり邪神とはいえ神と戦おうなんて俺達には……


「カイトさん、そして彼女さん、私と遊紀くんがあなた達を不幸にしてしまった罪…… 私も償うから遊紀くんを少しでもいいから許してあげてくれないかな? そうすれば少しは遊紀くんが報われるはず…… 最後まで私達は自分勝手でごめんなさい……」


 お、おい…… 井戸田さんまで…… 何をするつもりだ!?


「あぁ…… 私達の赤ちゃん…… ちゃんと産んであげられなくてごめんね…… 悪いパパとママだったね…… でも…… 私はあなたが来てくれて幸せだったよ…… きっとパパも幸せだったと…… だからお願い! 最後に…… ママに力を貸して!!」


 自分のお腹をさすりながら何か語りかけていた井戸田さんだったが…… 突然、井戸田さんのお腹の辺りから…… 優しくとても暖かみを感じる光が…… 

 そしてその優しい光が井戸田さんを包み込んで…… 井戸田さんの背中から小さな、天使のような翼が生えた!!


「遊紀くん、この子と一緒にすぐにいくから…… 私達は何があってもずっと一緒だからね…… はぁぁぁーーー!!」


 すると井戸田さんの全身が眩しいくらい光輝き…… ザーマに向かって背中の翼を羽ばたかせながら飛んでいき……


「むっ!? こ、この力は…… まさかの…… ぐっ! ぬわぁぁぁっ!!」


『遊紀くん……』


 そしてザーマと衝突した瞬間、井戸田さんの身体は光の粒子となって、空高く舞い上がるように消えていった…… 

 

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