第9話 風が戻ったら

 停電から一か月後。

 ついに体育館と校庭は避難所となった。さらにいくつかの教室がそれに使われた。


 賢明な市会議員の一人が、

「どんな時でも教育の場を奪ってはいけない…」

 と主張しなければきっと全教室に避難民があふれただろう。

 

 短い授業のあと、大半の子供達はそんな避難所には戻らなかった。といって、教室も暗いのでいくところは一つだった。


「きっと風が戻ったら一番最初に気付くのは僕ら子供達だね…」

 タカはつぶやいた。


 ドームには天然の照明があふれ、そこには机を持ちこんだ児童たちが本を読んだり勉強したりしていた。


 端のスペースではトランプやその他のカードゲームで遊ぶものもいた。

 これもどこからか持ち込まれた電子ピアノで順番に練習する生徒もいた。

 勿論、太陽光の電池なので空が晴れているとき、昼間にしか音がでなかったが…


 ドームが暗くなるまで、子供達は大人に邪魔されずにそこですごしていた。

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