第8話 人類の叡智

「先生、先生!」

 タカが手をあげている。僕はあわててタカの手を下げさせようとした。


「質問です!」

「タカやめろ、さっさと帰ろうよ…」

「いいよ、質問の時間をとらなかった私がいけなかったね。次はどんな質問かな?」


「先生、異常気象はいつ終わるのですか? 」

「それはわからない、でもその対策は政府がやっているんだ」


「異常気象は続くのではないですか? 」

「君、それは僕も専門家もわからないよ。でも対策はしているんだ、さっきも言ったよね。聞いてなかったかな、居眠りでもしていたかな…」


 僕は少しイラっとした。タカはちゃんと聞いていた。


「タカ、百年続いた風が急に止まるなんてことはないだろう」

 横から別の教師が口を出してきた。



 見上げるとムッとしたタカの顔があった。

「人類は滅亡するのですか? 」


 だけど冷静だね。

 こんな質問に切り替えた。

「何度も言っているだろう、人類の叡智が必ずや解決する」


 タカは半ばあきらめた顔をしている。

 でもこのままじゃかわいそうだ。

 大人は数人で応えているし…。


「先生、タカはね、百年前の風が吹いた“異常気象”と同じように、今回の風が吹かない“異常気象”がそのうち異常じゃなくなるのじゃないか…。

これが通常になってしまうのではないか。

でも、百年前と同じで、先生のおっしゃった“根本的な対策”が

今回も遅れてしまうのではないか…そう言いたいのだと思います」


 僕は手も上げずに立ち上がって話した。

 僕はタカの友人だから。


「わかるよ、君。でも今回は違うのだ、もうすでに根本的な対策をしているのだよ。風車は開発中なのだ…」


 少し笑いながら教師は言った。

 大人って面倒くさい。

 でもこれだけは言わせて。


「手をあげずに発言したのはすいません」

 僕は座りながら、回答を期待しないで言った。


「人類の叡智って……

 風車…ですか? 」

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