第3話 銀色の円盤の中から、こんにちは。

空飛ぶ車の最終形はUFOなんだ、と美鈴は思った。

フリスビーも円形だしね。

四角くよりも丸い方が、飛ぶのに都合がいいのかもしれない。


銀色の円盤を前にした美鈴の感情は、一周回って穏やかなものになっていた。


ガコン、と音がして、円盤の中央のドームが開いていく。

空飛ぶ車は、どんな人が運転しているのだろう?

美鈴は、内心わくわくしている。

大きな声を出して驚かせたりしないように、穏やかに対応しよう。

空飛ぶ車について聞いてみたいことはある。

何しろ、初めて実物を見たのだ。

でも、元気な美鈴が、遭難した人を興味のままに質問責めにするのは、人としてだめだろう、

きっと精神的にも肉体的にも疲れている。

美鈴に発見されたからといって、もう安全とは言えない。

救助されるまでは、このままここで待つことになるのだから、遭難者の体力は温存しないと。


しかし。

開いていくドームから飛び出してきたものを見て、美鈴は思わず声を上げた。

「タヌキ?」

一匹のタヌキが飛び出していくと、続いてもう一匹が続いた。

「タヌキの親子? タヌキの夫婦?」

後ろを振り返ることなく、山の中へと進む二匹のタヌキは、どう見ても野生だ。

「まさか、野生のタヌキを乱獲しようと?」

美鈴は、銀色の円盤の運転手への警戒度合いを一気に引き上げる。


「違う、違う。川に流されそうだったから、保護しただけ。」

円盤の中央ドームが開ききって、運転手が姿を現す。


運転手の姿を見た美鈴は、驚きすぎて声を出せなかった。

銀色の円盤から姿を現したのは、全身がいぶし銀の色をしていた。

顔に目と鼻と口と耳はある。

日本人によく見るなで肩と言えなくもない肩のライン。

頭の形は、人の骨格では見たことがない。

「よいしょ。」

運転手は、銀色の円盤の中で立ち上がると、またぐようにして、銀色の円盤から出てきた。

運転手の全身は、頭のてっぺんから爪先まで銀色一色。

腰の位置が高く、足も手も長い。

近くに立たれたので見上げてみると、運転手の目は黒くて、ヘビの目の形に似ていた。


美鈴は生きてきた中で、このような形状の人を見たことがない。

美鈴は、勇気を出して聞いてみた。


「あなたは、宇宙人ですか?」

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