鑓の向こう
吉高 都司 (ヨシダカ ツツジ)
第1話
人の一生は、多分鑓の先の点でしかなのでは。草むらで、呼吸を整え敵が通過するのを待っている、整えながら、気配を消しつつ、そう思っていた。鑓の先が呼吸の上げ下げで合わせるように上下に動いていた。横には、同じ村で同じ志の男がこっちを振り向いて静かにしろと小声で言った。思わず声に出してしまったようだ。草の青臭い匂いが鼻につく、今注意した男に誘われ、村を出奔し、一旗揚げるべく悪党の砦の入り口をくぐった、思っていた華々しい活躍で、手下を何人も抱え、領地を抱え、女も抱え、金も何もかも抱えることができる、そんな事を夢見て出てきたはず。だが、そんな妄想は妄想であると、いやと言うほど思い知らされたのは、三日も立たない内だった。一緒に出てきた何人かは嫌気が差して出ていったが、あくる日には首だけが帰ってきた。見せしめであろう。もう後戻りはできない、そう思ったとき。希望や妄想は絶望に変わった。仕方のないことだ、自分が選んだことだ。少し視線を上げてみた、敵が得物を小脇に抱え周りを警戒しながら歩いてきた。こちらは鑓など原始的な武器しかない、相手は、どのような武器を持っているのか分からない、銃ならばまだましかもしれない、もしレーザーなど持っていれば勝ち目などない。が、人間としての尊厳を守るには、戦わざる終えない、あいつらが来た、あの日からすべては、世界は変わった、反逆すれば待っているのは死。しかし抗わなければ生きている死。この鑓の向こうに、きっと希望はある。そう信じて、草むらを飛び出した。
鑓の向こう 吉高 都司 (ヨシダカ ツツジ) @potentiometer
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