第22話 バスケ決勝戦の朝

夏の朝なのに寒い。片目をあけて窓を見る。

光はない。外はまだ暗い。朝じゃないのか?

僕は蹴って落としかけの布団の端をズルズルと肩まで引き寄せた。

もじゃもじゃ?羽根?えっ?

僕の使い魔カラスのグールが

僕のベットにいる。

「はあー。」僕は、深いため息をついた。

今日は大事な試合なのに。

グールは羽根でカラダを覆いぬくぬくと寝ている。

そして羽根を少しだけずらして「タクマ。朝からため息つくな。

今日は大事な試合だろう。」

「そ・う・だ。だがグール。

なぜお前がここにいるんだ。

寝起きの朝は女子だ。

ミズキさんだったらよかったのに・・・」

「何か言ったか?タクマ。」

「いいや、何も。」無意識とはいえ、口から出た言葉がはずかしい。中2の男子としては当たり前だが。言葉はのみこんだ。

気力も体力も今日の試合にとっておきたい。

携帯をみる。4:47。中途半端に早い朝だ。

もう一度寝たら確実に遅刻だ。

6:50に校門前に集合だ。城北中のバスケ部決勝戦だ。

試合会場の総合体育館まで歩いて25分。

たまにプロのバスケの試合もある会場だ。

監督は試合のウォーキングアップも兼ねて歩いて会場入りを選択。

血の気の多い先輩達にはちょうどいいかも。

ただし荷物持ちの僕ら中2やボール持ちの1年生にとっては少しハードだ。

だが悪くない。監督はやっぱり監督だ。

全国大会出場は監督に悲願でもある。

もちろん僕も先輩達もだ。

「グール起きるまで少し時間がある。

眠ったままでいい。僕の国。

夢の国の話をしてくれ。

僕にはまだ記憶のかけらも思い出せない。」

グールが羽根の隙間から僕を見た。





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