第10話 ミズキさん

『しまった。』

僕は時間を止めてしまった。

けっしてミズキさんを見るために時間を止めてはいけないと勝手に決めていたのに。

誰も動かない世界で自分で自分に言い訳をしている。

ミズキさんのところに飛んで行った。

小さいカラス。

こいつだけはパタパタと飛んでいる。

「こら、ばかカラス何やっているんだ。」

「ばかカラスじゃないぞ。俺様はお前だぞ。」

「何?ヘンテコなこと言うんじゃない。

それになんだお前は。

カラスのくせに人間の言葉を話すし、

でも少し、ちっこいな。」

「おいタクマ、あんまり俺様のことをばかにすると、可愛いミズキさんのことグチャグチャにするぞ。」

そう言ってカラスはミズキさんの頭のてっぺんに乗った。

「こら、離れろ。ばかカラス!」

僕は両手でミズキさんの頭の上のカラスを

「ガバッ」と捕まえた。

「捕まえたぞ。」僕は顔をジーっと近づけた。

カラスは観念したようで。

「ごめん。タクマ。俺様が悪かった。

俺様はタクマの使い魔。グールだ。

王様の命令でこちらの世界に来た。」

「王様?こちらの世界?

なんだそれ。」

「あちらの世界で、タクマに危険が及んでいる。本来の運命の姫と結婚できない。

人間の女子に心をもっていかれた。

取り戻すために俺様グールがタクマを助けに来た。」

「僕に危険?」

グールは「そうだ。危険は。このミズキだ!」

「えっー!」

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