エンカウント(残酷描写 グロ描写あり)

 俺は階段を上がり2階へ向かう。

 ビデオ女は俺にぴったりくっついているが、特に何かしてくる様子はない。階段を上がるたびに乳房が揺れるので、ついつい見てしまう。

 2階に上がってもやはり誰もいない。ただ、1階よりも空気が重くなったような気がする。気のせいか? とりあえず、この洋館を歩き回り呪いに遭遇するのを待つしかない。俺は適当に部屋を選んで入ってみる。

 中は書斎のようだ。空っぽの本棚がならび、大きな机と椅子が置かれている。机の上には埃が積みあがっていた。

 とりあえず、椅子に座ってみた。

 特に何も起きないな。

 俺は立ち上がり、部屋を出ようとする。

 その時、部屋の外を誰かが横切った。ひらりと翻るスカート。女子高生に見えた。俺は慌ててドアを開けるがそこには誰もいない。しーんとした耳が痛くなるような沈黙。昏い廊下。それだけだ。

 気のせいか?

 ひとまず廊下を進んでみる。すると、今度は俺の後ろでまた誰かが走る音がした。

 振り返ってもだれもいない。が、スーツ姿の男が通った気がする。

 気持ち悪いな。なんでああいうのって真正面から来ずに、視界の端にチラチラする戦略で来るんだろ。このビデオ女を見習えばいいのに。

 ちらりと目をやるとビデオ女は限界まで見開いた気持ち悪い目で俺を凝視している。こいつも人を殺しまくる下種だが、まだ堂々としている。おっぱいをツンツンしてから俺は再び探索を開始した。

 その時、どこからかシャワーの音がした。

 俺は音の出所を探す。

 廊下を突き当りまで進み、左に曲がるとそこは風呂場だった。

 脱衣場の奥の浴室からのようだ。すりガラスの向こうからシャワーの音がする。俺が近づくとシャワーの音が消え、しーんとした沈黙があたりを包んだ。

 俺はすりガラスの戸越しに中を見るが誰もいない。さっきの女子高生が風呂でもあびてんのか?いや、さすがにないか。

 俺は扉をあけ放つ。当然誰もいない。床も濡れていない。俺は浴室に足を踏み入れた。

 ピシャン。水音がする。

 蓋が閉まった浴槽からだった。

 俺は蓋をどかす。そして、中を覗いた。

 

 たっぷりと張られた濁った湯の中に影が水中で蠢いている。よく見ると髪だ。長い髪の毛が水の中でうごめいている。それは俺の気配に気づいたのか、ざばりと水面から頭を出した。女の顔だった。長い髪の白い顔の女が俺を見る。ボコボコと湯に泡がわき、次々に人間の頭と手が浮かび上がる。男、若い女、おじさん、それらの生首が無表情に俺を見つめている。

 急に錆びた血の匂いが鼻を突きさした。オエっと口を押えて俺は後ずさる。

 今や浴槽に入った無数の人体はどんどん増え、浴槽からはみ出して天井にまで届こうとしている。

 人体でできたブドウの様な。世にも残酷なオブジェだ。その人間ブドウの山の頂上に女の頭が乗っている。異様に白いそいつの顔だけが意志を持ち、こちらを見ていた。見上げる俺を嘲る様にニタリと笑う。

 その瞬間、俺の中に何かの記憶がフラッシュバックした。

〇〇〇〇

 女が血まみれで悲鳴を上げながらこの浴室に逃げてくる。ドアを閉じ、鍵をかけようとするが一歩遅い。憤怒の形相をした男が浴室に進入し、包丁を女の体に振り下ろす。女は必死に命乞いをするが聞く耳を持たない。何度も何度も包丁を振り下ろす。腹が裂け、腸が包丁に絡みつく。

 女が動かなくなると男はしばらく放心した後、浴槽に入れ解体を試みる。でもできない。人間の骨は硬いのだ。疲れ果てた男はやがて包丁で自分の首を。


それから女はずっとここにいる。

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