第4話 俺もきっと好きになる?




「は?」


「絶対、お前も好きになる」




瀬戸響の目が真っ直ぐ俺に向けられるから、反らす事が出来なかった。



思わずその自信に道溢れる大きな瞳に吸い込まれそうになる。





そのまま、何か洗脳でもされたかの様に引き寄せられて、瀬戸響に近づいてしまった。




男のくせに骨格が華奢で細い肩。茶色の髪は想像以上にサラサラと手から流れていく。

白い頬に右手を沿えれば、俺自身が高揚で体が震えた。




同性とは思えないほど、大きくて澄んだ瞳はまるで食べてと言わんばかりに潤いを増していた。


ねっとりとした粘膜が、やけに生ぬるくて。しょっぱくて、とろけるように柔らかい。

不思議な感覚に、舌の先から足の指先まで、全身の鳥肌が立ち興奮を覚えていった。





でも、すぐに後悔する事となった。


何で、俺あんな事しちゃったんだろ。これから一生、コイツに弱味を握られる事になってしまう。




「お前、ねちっこく舐めるのな」


「……」


「まぁまぁ、そんな落ち込むなよ」


「……」


「誰にだって、隠れた性癖とか好奇心とかあるんだよ」



その場にしゃがみ込んで体育座りをしていれば、その隣に瀬戸響も腰を下ろす。

明らかに落ち込む俺の背中をポンポンと軽く叩いた。




「さ、わんな……」


「ははは、」


「わ、わらうな……」


「やっぱり、なんかお前の事、気に入ったわ」


「……」


「なぁ、お前がユカリと付き合ったら、3人でヤろうぜ」


「……は?ヤ、らねーよ」



完全にペースをつかまれて泣きそうになったところで、夕方6時の合図にかかる音楽が町内放送で流れはじめた。





「毎日不思議に思ってたけどさ、何だよこれ?」


「そろそろ、家に帰れって音楽だよ……」


「いや、違くてさ」


「そんなのも分かんないのかよ」


「それは分かるけどさー。なんか変なの」



なんて、こいつが笑い声をあげる。

はぁ。家に帰らなきゃ、と溜め息を吐きながら重い腰を上げれば、






「んじゃ、湊太そうた帰ろっか」



瀬戸響も立ち上がって、俺に偉そうな顔を向けながら並んで歩き出す。



同時に、湿った空気に生暖かい風が頬を突き刺さしたのが、不思議と心地よく感じた。

**




て、名前呼ばれて心地よく感じてるの、




俺ヤバくないーー?






─────ハルトキ、思う─────






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ハルトキ、思う みかんの実 @mikatin73

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