第36話
戦闘は終わったが。
油断は許されない。フィルディンとコンラッド、ジークの3人は妖魔の気配に意識を集中させながら進んでいた。もちろん、ローズやクォーツにケビン、ジュリアナもだが。特にジークはローズが心配でならない。ジュリアナも足を動かしつつも意識は妖魔の気配を探っている。幻の炎で照らしていたが。魔力切れになっても困る。そこでフィルディンは契約している神獣を呼び出した。名をピクレアといい、淡いクリーム色の毛がふさふさとした可愛い感じの生き物だ。見かけはネズミとウサギが合わさったような姿だった。二本足で立ち、尾が長くてギザギザしている。
「……クレイ。フラッシュを頼む」
「ぴゅう!」
クレイと呼ばれたピクレアは元気よく返事をすると尾の先を光らせた。辺りを明るく照らし出す。フィルディン以外の面々は驚いた。最初からピクレアを呼べばよかったのではとローズは思う。
「……ローズちゃん。ピクレアは高位の神獣だ。よほど困った時しか俺は呼ばないようにしている。でないと霊力を意外と使うんだ。召喚にな」
「……そうだったんですね。すみません」
「分かってくれたんならいいんだ。さ、皆行こうぜ」
フィルディンの号令に皆頷いた。クレイの灯す明かりを頼りに先に進んだのだった。
その後、妖魔との戦いが10回くらいはあったか。その間、皆の気力体力、魔力は徐々にすり減っていた。フィルディンが回復の泉を見つけてくれてそこで一回休憩する事にする。既に螺旋階段は終わり地下迷宮に入っていた。
「……ふう。やっと休める」
クォーツが言うとケビンも頷いた。他の面々もへたり込んだ。回復の泉の近くに行き、女性陣から先に水を汲んで飲んだが。水筒に入れて補充もした。ローズとジュリアナは水を飲んだ途端に体が軽くなって驚く。
「わあ。すごい。この泉の水、気力体力に魔力まで回復させてくれるんだ」
「……本当だ。私も何だか腕や足が軽いよ」
男性陣も飲みつつ休憩した。クレイにも水をあげると美味しそうに飲んでいた。試しにドライフルーツ--干したブドウをあげたら嫌がらずに食べる。これにはちょっと驚いた。こうして和やかに休憩時間は過ぎていった。
クレイの明かりのおかげで予定よりも早くに迷宮の中程まで来ていた。皆、日の光がないので時間がわからない。唯一、フィルディンは水晶の揺れで動くという時計を持っており時刻を知らせてくれていた。
「おい。もう夕刻に近い。そろそろ、野宿の準備を始めた方がいいぞ」
「……ですね。おーい、皆。野宿の準備をするぞ!!」
フィルディンの言葉を聞いてコンラッドは大きな声で他の面々に知らせた。ケビンとジュリアナ、クォーツは手早く荷物を置いて簡易携帯食や寝袋、水筒を出した。ローズとジークも倣って同じ物を出す。とりあえず、簡易携帯食を食べて水を飲んだ。皆、食事を済ませると寝袋を広げた。もそもそと中に入り荷物を枕代わりに早速寝た。ローズはジュリアナの隣で眠る。ジークはフィルディンとコンラッドの隣だ。何かあってもいいように3人で固まって寝ていた。こうして皆は真っ暗闇の中で泥のように眠った。クレイも尾の明かりを消して疲れを癒したのだった。
朝と思われる時間帯に皆、目を覚ました。クレイがフィルディンにぴゅうと鳴いて起きるように促す。実はクレイもなんとなく時間がわかるらしい。
「……おはよう。ローズさん」
「おはようございます。ジュリアナさん」
ローズは眠い眼を擦りつつも起きた。ジュリアナもちょっと疲れたような顔をしている。男性陣もだ。
「ローズ。おはよう。昨日は眠れたか?」
「……うん。意外と眠れたよ。けどお日様の光がないと落ち着かないね」
「確かにな。早く地上に戻りたいよ」
2人してぼやくとほうと息をつく。それでもジュリアナの勧めでローズは洗顔と歯磨きを簡単に済ませた。着替えもして朝食も食べる。着替えの時はジュリアナが大きめの布で目隠しをしてくれたので大いに助かったが。ローズもジュリアナの着替えの時はお返しに大きめの布で目隠しをしたのだった。
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