第31話

  あれから、3日が経った。


 フィルディンと何とか合流できていた。フィルディンは見かけは20代に見えるが。実年齢は40代らしい。クォーツが何故か知っていた。白金の髪に琥珀色の瞳のとても美しい男性だが。口は悪い。ジークに対してもいきなり「坊主」と言っていた。


「……おう。坊主。お前、あの嬢ちゃんとはどうなんだよ」


「いきなりなんですか。フィルディン様」


「俺の事はフィルでいい。で、どうなんだ?」


  唐突にフィルディンはジークに訊いてきた。どうもローズとの事が気になるらしい。ふうとため息をつく。

  この野郎と思いつつも答えた。


「……俺はローズと恋人同士ですよ。将来を誓い合った仲です」


「……ふうん。俺と変わらんな。何だ、月の巫女と白雷の神子はひかれやすいようだな」


  フィルディンがぽつりと呟いた。なんの事かと思う。


「坊主。昔から月の巫女と白雷の神子は対ではあるが。惹かれ合い、結婚した奴らが大勢いる。けど不幸な最期を迎えた例もいくつかあってな。中には惹かれ合いながらも泣く泣く別れた奴らもいるんだ」


「そうなんですか?」


「……ああ。月の巫女が異世界の出身でな。次第に対の白雷の神子と惹かれ合い、結婚を約束していたが。この2人の仲を当時の王が引き裂いた。月の巫女は役割を果たすとすぐに元の世界に無理に戻された。白雷の神子も王女と結婚させられて。白雷の神子は月の巫女がいないと腑抜けた感じになっちまったらしい。そのまま、王女を残して病気で亡くなった。王は白雷の神子が死んだ後で自身の間違いに気づいたんだ。けど時は既に遅かった。王は白雷の神子と月の巫女の話を密かに手記に残した。これを読んだ後世の人々が間違いを起こさぬように」


  フィルディンはそう言うとジークをじっと見据えた。


「いいか。坊主。これは警告だ。どうしてもあの嬢ちゃんがいいんだったら皇帝陛下に直談判しろよ。今の陛下は良い方だ。まだ結婚は許してくれるだろうが。ただ、子ができないかもしれんからその辺も覚悟しておけよ」


「はあ。子ができなくてもローズを諦めるつもりはないですが」


「そうか。だったらいい。後、イライアの事だが」


  何でしょうかと先を促した。


「この国の北部にいるようだ。北側には皇都がある。そこよりもさらに北側に行くと国境沿いに小さな町がある。サロメの町というんだが。イライアを連れ去った奴らの潜伏先がそこらしい」


「そうなんですか。ではコンラッドさん達に知らせないといけませんね」


「ああ。あいつに知らせておけば、何とかなるだろう」


  2人して頷くとコンラッド達がいる拓(ひら)けた場所に向かったのだった。



  その後、コンラッドやケビン、クォーツ、ジュリアナ、ローズの5人にフィルディンの言っていた情報を伝えた。コンラッドは分かったというと早速、馬を連れてきた。


「……イライア様の居場所はサロメの町か。サロメまでだったら馬でここから1日で行けるな」


「ああ。コンラッド、俺も行くからな」


「確かにフィルディン様がいらしてくださったら心強いですが。大丈夫ですか?」


「大丈夫だよ。コンラッドも心配性だな」


「まあ。それはそうなんですが」


  軽口を叩くフィルディンにコンラッドは真面目に返答する。クォーツも苦笑していた。ケビンとジュリアナ、ローズの3人は不思議そうにしていた。


「……あの。ジュリアナさん。フィルディン様はコンラッドさんとどういう関係なんですか?」


「……ああ。ローズさんは知らないんだったな。コンラッド殿とフィルディン様は叔父と甥の関係になる」


「え。コンラッドさんが叔父でフィルディン様が甥っ子とか?」


「反対だ。フィルディン様が叔父君でコンラッド殿が甥っ子なんだ」


「……へえ。意外ですね」


  ローズは驚いた。まさか、フィルディンがコンラッドの叔父とは。が、どう見てもコンラッドの方が年上に見える。けどローズはある事を思い出した。雷光剣と白夜剣を受け継いだ神子は体の成長や老化が止まると。フィルディンが若く見えるのはそのせいだ。そう考えてジークを心配げに見たのだった。

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