ただのラブストーリー

そらまめ

第1話 通り雨の足音

 ただ、普通に生きていたかった。


 他と違うこの世界が、こんなにも私を苦しめる。


 「私の心、読まないでって言ってるのに!」


 「ごめん、私別にそんなつもりはなくて」


 「幽霊とか、そういうのも見えてるんだよね。もう近づかないで、気持ち悪いから」


 高校2年の夏、親友は私を気持ち悪がり、離れて行った。


 「おかえり、愛理。早く部屋に行って。ご飯置いてるから」


 「…ただいま」


 両親は幼い頃に離婚し、父に引き取られた私は仕事で家を空ける父の代わりに、継母に育てられた。


 最初は優しかった継母も、私のこの世界を知り、避けるようになった。


 『おかえり、今日はどうだった?』


 部屋に入ると話しかけてきた、同い年の見た目の少女。


 「知ってるくせに」


 『…あまり、気を病まないで』


 「今は放って置いてよ」


 名前を教えてくれない彼女は、自分のことをすみれと呼んでと言う。


 小学校低学年の時に、急に目の前に現れたすみれは、俗にいうところの、幽霊だ。


 


 

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