26話 運命は決まっている

HRも終わり

教室を見渡すと千早が甲塚くんと話している

その状況を怪訝な顔で見ている崇

「あー葉子がどこに行ったか知らないか聞いてるみたいだよ。3時限目休みに崇と話す前に、花屋敷さんにも聞いてみたんだよ」

僕は葉子と口にしているつもりなんだけど、言い慣れていないのと、頭の中には妖狐って変換してしまい、恐怖を感じる

「で?」

と変な間が気になったのか、僕が葉子っていったのを察知したのか、崇は少し変な間で答える

「菖蒲さんは保健室に行くって言ってたけど、葉子は知らないって」

「そうなんだ」

「もちろん眞藤さんにHRの前に聞いてたよ。崇は何かに夢中だったから、眞藤さんと話そびれちゃったね」

僕の不自然さを取り繕う為、少しふざける

「そうだな……で、菖蒲は保健室なんだろ?」

崇は乗らずに淡々とまるで操られているように話す

「先に戻ったらしいよ」

「なんだよアイツ、授業サボったんじゃんか」

「菖蒲さんは成績優秀だから、大丈夫でしょ」


「ごめん、先に帰ってて」

千早がそう言って教室から出る

甲塚くんを追って出ていったみたい

僕も追いたい

一番に命を狙われるのは、甲塚くんかもしれないんだ

「じゃあ帰る?」

と、話を切り出す

「悪い、俺も用事があるから」

崇は曇った表情のまま答える

「えーーそうなの?じゃあ千早待ってようかな」

千早と一緒に甲塚くんと話せるなら、好都合だ

謎を解くきっかけになるかもしれない

「悪いな、剛志」

崇は足早に教室から出る

それを見送ると、僕も千早と甲塚くんを追って教室を後にする


教室から出ても千早と甲塚くんはすぐには見つける事が出来なかった

二人が行きそうな場所って言うのが想像出来ない

今日は休んでいる部活も多く放課後の校内は人が少なかった

「千早の行きそうな場所」

教室には鞄が置いてあった。校外に出ることは考えにくい

目撃者を探そうにも、こんなに人が居ないんじゃ……そうか

部活が休みなのは、僕ら柔道部も同じだ

体育館の奥にある武道場なら、人も来なくて甲塚くんに気を使って千早が選びそうな場所だ

行ってみる価値はある


体育館から武道場に入る入り口の所で、甲塚くんが武道場側からやってくる

「あっ甲塚くん」

その表情は固く、僕に見向きもしない

千早もその後ろに居るって思ってたけど、全然現れない

そうこうしていると甲塚くんはもう視界からいなくなっている


………あ………ん…………ん………


うめき声が聞こえる

千早?

僕は声に引き寄せられ、道場に入る

「千早!!!!!」

自分の目を疑った

頭から血を流して千早が倒れている

「千早!!!」

脳震盪でも起こしているのか、千早は意識が朦朧としている

「誰が!……甲塚か!!!」

頭の傷を見る


深くないし、少し切れているだけ、傷は致命傷ではないみたい

「保健室!!」

千早を抱き抱え、傷を手で押さえながら、体育館の向かいにある保健室に千早を連れていく

保健室では、女性の保険の先生が的確な処置をすぐに行ってくれ、千早の傷は縫うまでもない小さな傷で、「頭だったから血がたくさん出て驚いたでしょ」と笑って教えてくれた

いつもポジティブな僕が、キツネや前世の記憶の事でネガティブになっていたせいだ

冷静な判断が出来ていない

「でも救急車を呼んだから、病院でちゃんと検査をしてもらいますよ」

「それって僕もついていっていいんですか」

「えぇ、担任の先生も呼んだから、もう来ると思うけど、学校で救急車を呼んだから、先生方もビックリして対処に困ってるみたいよ。こういう時は警察も一緒に来る事になっているから」

千早を怪我させたのは、甲塚くんだろう

すれ違ってすぐ千早は倒れていたんだから

助けようと思っていたのに、千早を、僕の親友を傷つけるなんて



あんな奴、もうどうなっても………





ドン‼


その時、ものすごい音とバンと言う衝撃音が保健室に響き、窓を揺らす


なんだろうと窓の外を見ると、丁度向かいにある成冨陸奥護郎の銅像に何かが覆い被さっている

「あれ……」

保険の先生は書類を書いていて気にしていない

胸騒ぎ

悪い感覚

判断が鈍る、頭を怪我している千早のそばを離れていいのか

でもあれは、あそこにあっていけない事なんじゃ

「先生、少し離席していいですか?」

「えぇ、救急車が来たら戻ってきてね」


はい、と小声で返事をしながら保健室を出る

あれはダメだ

他の人は見ちゃダメだ


僕は徐々に歩みを速める


あれは人だ

銅像に覆い被さっているのは人だ


他の人が見る前に、下ろさないと


すぐ向かいにあるのに、回り込まないと銅像に行けないなんて、他の人が見たら………あんな酷いもの、見せちゃだめだ

校舎の角を曲がると銅像が見える

その間に女生徒が立ち尽くしている

「花屋敷さん!!!!!」

「剣崎くん」

振り返って僕を見る花屋敷さん

「花屋敷さん、見ちゃダメだ!!」

「見ちゃダメって……陽介が……」

花屋敷さんは固まった表情はのまま涙を流している

「……陽介が……陽介が死んでるの……剣崎くん……」

意識を失ってしまう花屋敷さんを抱き止める


そう、陸奥護郎の銅像の上に覆い被さっているのは、さっきまで生きていた甲塚くん


いや正確にはわからないけど、この制服の着こなしは甲塚くんのはずだ

花屋敷さんもそう感じたから、甲塚くんと言ったんだと思う


なぜ正確に甲塚くんと言えないか

無いからだ

無いんだ


……………頭が


まるで斬首された前世と同じように、甲塚くんの首がなくなってしまった体は、銅像に突き刺さっている


僕はまた助ける事が出来なかったんだ


気を失った花屋敷さんを抱き締めながら、僕は泣いていた

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