第2話

 ふと目を覚ます。青と白の世界……え? どういうこと?

「あっ、気が付かれましたか?」

 どこで鳴っているかわからないが、妙にはっきりとした声が聞こえる。頭の上から美男子が顔を出した。

 身体を起こして相手をマジマジと見る。金糸が光をやわらかく反射し、背景と同じ色をしたビー玉が私の顔を映している。陶器のような肌を露わにし、腰から太もも辺りまでしか隠していない。そんな中でも目を引くのは、大きな羽だ。雪花石膏のように純白で、時折伸びをする。それに呼応するように、少しばかり空気が動く。不釣り合いな木の棒の釣り竿を肩に乗せ、しゃがみこんで視線を合わせてくれる。

 私……

「申し訳ございません!」

 えっ!?

 美男子は勢いよく土下座する。竿がこちらに倒れてきた。

「近くの虫の魂を釣り上げようとしたのですが、誤ってあなた様のを釣ってしまいました」

 竿から垂れた糸の先を見ると、確かに私の服に引っ掛かっている。だがしかし、情報量が多すぎて何が何だか……。

「神様に魂を戻してもらうようお願いしたのですが、如何せん、手続きが大変らしく、数十分待ってほしいとのことです」

 美男子は申し訳なさそうな顔で、上目使いで私を見る。かわいいな、おい。私としては、正直、最終的に戻してくれるなら、退屈な時間がひとつつぶれるだけなので、そこまで気にしてないんだけど。

「お詫びに何かやってみたいことなどがあれば、できる範囲で叶えて差し上げようと思っているのですが」

 さっき考えていたことをふと思い出す。美男子の羽に、気ままに飛んでいた鳥の姿が重なる。

 空を飛んでみたい、自分の羽で。

「なるほど、承知しました。それでは、少し移動しますので、ついてきてください」

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