Secret Episode 4 とある手記の一頁
『扉』
底には扉があった。
くらいくらい世界の底に、その扉はあった。
わたしは身を投げたのだ。
水面の先のくらいくらい世界、彼はわたしを歓迎していた。理由なんてものはいらない、とにかくよく来たと歓迎してくれた。
彼はわたしの身体にじんわりと染み込み、少しずつ、少しずつわたしの熱を喰らいはじめた。
わたしの執着はそれを拒んだが、彼は優しくわたしに染み込んでいく。次第にからだが捕食を受け入れ、わたしの熱が喰われていく。
彼と身体の区別がつかなくなったころ、振り返るとあっちの世界との境界はなくなっていた。ああ、きっとわたしの目は黒くくすんでしまったのだ、そう思った。
その扉はわたしが、くらいくらい世界の、底の底に沈んだ先にあった。既に、彼に溶け込み、かろうじてその輪郭を保っていたわたしにも視える扉だ。
最後に残っていたかすかな熱を彼に喰わせて、わたしはドアノブに手をかけた。
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