Column7 「雪辱を果たす」? 「雪辱を晴らす」?
今回は「雪辱」の慣用句について取り上げようと思います。
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「雪辱」とは、「恥を消し去り、名誉を回復すること。特に競技などで、以前負けた相手に勝って名誉を回復すること」(『明鏡国語辞典 第三版』より引用)という意味の言葉です。
最近では特にスポーツなどの試合で、対戦相手に負けたとき「雪辱を期する」(=「負けた相手に勝って名誉を回復することを決意する」という意味)などと使われることがあります。
また「試合などに勝って、以前負けたときの恥を消し去る」という意味の慣用句も使われるのですが、ここで皆さんに、この意味で使われている慣用句を見ていただきましょう。
①雪辱を果たす。
②雪辱を晴らす。
どちらの言い方も「聞いたことがある」、という方もいらっしゃるのではないかなと思うのですが、正しいのはどちらか一つです。
皆さんはどちらが正しいと思うでしょうか。
では、答え合わせをいたしましょう。
正解は①です。
「雪辱を果たす」の「果たす」には、簡単に言うと「なしとげる」(『三省堂国語辞典 第三版』より引用)という意味があります。
ゆえに「雪辱を果たす」は、「雪辱」と「果たす」の意味を単純に合わせると、「恥を消し去ることをなしとげる」「名誉を挽回することをやってのける」という意味になります。
では何故②の「雪辱を晴らす」が誤りであるかというと、意味が分からないものになってしまうからです。
「晴らす」には、「心のわだかまりを取り除いてはればれとした気持ちにさせる」(『デジタル大辞泉』より引用)という意味があります。
よって「雪辱」と「晴らす」の意味を単純に合わせると、「恥を消し去り、名誉を回復することを不快な気持ちを取り除いてはればれとする」となってしまい、意味が通じないものとなってしまいます。
ですから、「試合などに勝って、以前負けたときの恥を消し去る」という意味で使う場合は、「雪辱を果たす」とするのが正解です。
では、何故「雪辱を晴らす」という言い方が出てくるようになったのかと言いますと、神永曉著の『悩ましい国語辞典』には、「『屈辱を晴らす』との混同から生まれた言い方だと思われる」とあります。
言われてみると「雪辱を果たす」と「屈辱を晴らす」は音が似ているので、それもあるように思います。
ですが、上記に述べたように「雪辱を晴らす」では意味が通じないので、この件につきましては「雪辱を果たす」を使うのが適切です。
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