Column8 「リベンジ」は「雪辱」という意味で使えるか否か
今回は日本語で使われている「リベンジ」の意味と、英語で使われている「revenge」の意味の違いについて考えてみたいと思います。
☆
日本語の中で使われている「リベンジ」は、英語の「revenge」からきています。
「リベンジ」といいますと、次のように使われることがあるかと思います。
——試合に負けたチームの○○選手は、「ぜひ、リベンジしたいと思います」と語った。
上記の例文は「雪辱を期する」というような意味で「リベンジ」が使われています。「雪辱を期する」とは、「特に競技などで、以前負けた相手に勝って名誉を回復すること」(『明鏡国語辞典 第三版』より引用)という意味です。
一見、何の問題もなさそうですが、この使い方に対して「誤りである」と言っていた方をネット上でお見かけしました。
「誤りである」とした理由が書いてあったので読んでみると、「英語の『revenge』は『復讐』、つまり『恨みを持って仕返しをする』という意味である。よって、『リベンジ』を『雪辱』の意味として使うのは誤りである」とあります。
ここから「スポーツ選手が負けた際に『リベンジ』と使うのは誤り」という意見だったようです。
これは中々に難しい問題です。
確かに、この意見は一理あります。その方がおっしゃったように、原語である「revenge」には、「復讐」や「仕返し」という意味のみで、「雪辱」はないからです。
ただし、英語の「revenge」がスポーツ関連の中で用いられるときは、次のように使われることがあります。
——Jordan Gets His Revenge,Scores 49.
(『ウィズダム英和辞典 第4版』より引用)
上記の英文の訳は「ジョーダン雪辱,49得点」(『ウィズダム英和辞典 第4版』より引用)となっており、一見すると訳にある通り「雪辱」の意味だけしかないように思うかもしれません。
ですが「revenge」の本来の意味を含めて考えると、ここには「復讐」のニュアンスが含まれているため、冒頭の意見も確かにその通りなのです。
ですが、「リベンジ」は日本語の中で変化もしているのです。
下記に、国語辞典の「リベンジ」の語釈を引用いたします。(特に「雪辱」に関する部分をピックアップしております)
**********
【リベンジ】
『明鏡国語辞典 第三版』
仕返しすること。復讐。雪辱。「リベンジマッチ」
『新明解国語辞典 第八版』
負けたり失敗したりした物事にもう一度挑戦し、雪辱をはたそうとすること。
『旺文社国語辞典 第十二版』
復讐すること。雪辱を果たすこと。「昨シーズンのリベンジに燃える」
『岩波国語辞典 第八版』
仕返し。主にスポーツで、雪辱すること。「前回王者にリベンジする」
『学研現代新国語辞典 改訂第六版』
もう一度挑戦して、雪辱を果たそうとすること。
『デジタル大辞泉』
競技で、一度敗れたことのある相手と再び対戦すること。また、その相手を打ち負かすこと。借りを返すこと。「リベンジマッチ(雪辱戦)」
**********
上記を見ても分かるように、「リベンジ」を「雪辱」という意味として使えることが分かります。
辞書によっては「リベンジ」の項目に「復讐」「仕返し」という意味しか載せていないものもありましたが、引用した語釈をみても分かる通り、「リベンジ」を「雪辱」という意味で捉えて使っていることもあるので、冒頭の説明のように、「誤りである」と強く否定するのは少し難しいかもしれないと、個人的には思います。
誤解のないように申し上げておくと、冒頭の説明をされた方のお気持ちも分かるのです。
「『リベンジ』という言葉が、『revenge』(=復讐)から来ているのであるから、『(復讐寄りではない、
よって冒頭の説明をされていた方は、英語の「revenge」の意味を大切にされていた方であろうと察します。
しかし、「リベンジ」の意味は日本語の中で、「雪辱」という意味としても使われてきているのも確かです。
ですから、英語の元の意味に寄った使い方をするのか、それとも日本語の中で変化してきた使い方をするのかというのは、使う人が状況やら相手やらを考慮して使う必要があるのかなと思います。
〈補足〉
*英語で「revenge」を使った場合、「復讐」の意味合いが強いので、相手に喧嘩腰であると思われてしまうこともあるので、使用する際は注意が必要です。
*「Jordan Gets His Revenge,Scores 49.」(『ウィズダム英和辞典 第4版』より引用)というような「revenge」の使い方は、新聞社などが新聞の見出しなどに使う場合が多く、試合に負けた選手本人が「revenge」をこのように使うのはそれほど多くないようです。(スポーツの種類にもよります)
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