第3話 由香里

あの娘はね、自分に負けたの。誰かが助けてくれるのを待ってばかりいるのは甘えだ。

たとえ誰かが助けようとしたところであの娘には何も関係ない。自分の『殻』に閉じこもって聞く耳なんて持たなかった。そんな奴に何を言っても同じなんじゃないの?人間、自分が一番大事なんだし。あんたが気にすることは何もない。いまさら、どうこう言ったところであの娘は戻ってこない。


いなくなった奴のことをいつまでも引きずっていても始まらない。いくら嘆いたところであの娘はどこにもいないし、戻ってこないのだ。そんな奴の事に

縛られている沙耶は、人生を損していると思う。戻ってこない奴を偲びより、毎日をどう生きるかの方が大切だ。

毎日が楽しければそれでいい。世の中、生きている者の方が『勝ち』なのだ。『存在価値』?そんなものは生きているだけで充分だ。それ以外に何があるの?いなくなってしまえばそこで何もなくなってしまう。すべて終わる。


あの娘は生きることを放棄した。すべてを捨てたのだ。あたしは生きる。生き抜いてみせる。


「毎日を普通に生きることは難しい。でも簡単でもある。毎朝起きて、ご飯食べて、学校や会社に行って勉強、仕事して…、その中で人間関係を築いて。当たり前のようにやってる。それってすごいことじゃない?決して一つとして同じものはないんだもん。一人、一人同じ事しているようでまったく違うもの」


そう皆違う。性格だって生き方だって同じものはない。だから世の中面白い。違うから惹かれ合う。友達になったり恋人になったり、これほど楽しくて不思議なものはない。

そりゃ、嫌いな奴もいればどうしても合わない奴もいる。でもそこが楽しいんじゃない。

『個性』もそこから生まれてくるんだよ。大人には皆同じに見えるかもしれないけど私達には大切なこと。狭い世界の中で自分ができる精一杯の自己主張。


なんの自己主張もできなかったあの娘は、可哀想だけど同情はしない。なぁなぁの言葉を書き連ねたってそれは嘘になるだけだ。世の中生きたもん勝ちだから。どんな生き方をしようが、私は生きている。

それが私の自己主張。誰にも文句は言わせない。皆自分が一番大切なのだから。自分が良ければそれでいい。これは、誰もが心の中で思っていること。あたしは、自分のために生きる. 

あの娘の為とか誰かの為なんてそんな偽善なことは言わない。あたしは自分で自分の人生を楽しむ。人生は自分の力で切り開かなくちゃ。楽しまなきゃ生まれてきた意味がない。
















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