第伍話

 仲間だった2人の青年が殺し合う。


 そんな光景を名無は近くの木の枝に座りながら眺めていた。


 その口元に笑みを浮かべながら。


 初めて村人を殺したあの時から歪に再構築を始めた名無の心は既に歪なまま完全に構築されてしまった。


 完全に鬼となったその時に、完成してしまった。


 既に名無には他者を思いやる心などない。


 もし、村人たちが名無を虐待しなければ、こんな怪物は生まれなかっただろう。


 そして、名無が村を率先して守ることもあったかもしれない。


 村の守護者にもなったかもしれない。


 しかし、そうはならなかった。


 この結果を招いたのはあくまで人間だ。


 人間の醜い心が名無を作った。


 もう、名無が止まることはない。


 ただ、己が欲望に従って自由に生きるだけだ。




 2人の青年が殺し合いを始めて5分ほどの時が経った。


 案外早く決着は着いた。


 案の定、勝ったのは『第陸位階』の退魔師の青年だった。


「あ……ああ……あああアアアアア!!!!!」


 青年の絶叫が木霊する。


「じゃあ、君もばいばい」


 その声と共に、青年の首が180度回転し、そのまま青年は絶命した。


「……ん?そういえば、鬼になった高揚で気にもしてなかったけどボク服着てないじゃん」


 名無はそう呟きながら自分の体を見た。


 そう、見た・・のだ。


 名無の目は、闇の中に大量の極小の眼球が詰まっている。


 そして、その眼球には一つ一つに視覚が備わっているのだ。


 それ故に、今の名無には視力がある。


 ありすぎる。


 全てが見えると言っても過言ではないほどに見えるのだ。


 さて、そんな名無だが、服を着ていなかったのには理由がある。


 簡単に言うと鬼となる時に繭の中に存在できるのは鬼となる者のみであり、それ以外は消滅してしまうのだ。


 もちろん服も。


「服……うん。創れそう」


 名無はそう呟くと、鬼力を凝縮して固め、服を創った。


 服のデザインは退魔師の2人が来ていた狩衣を少しアレンジしたものだ。


「……目も隠すか」


 そう言い、名無は自身の目を純白の布状にした鬼力で隠した。


 その布には、中央に赤い大きな目が描かれていた。


「後、髪も長すぎるから結んで……と。よし!さて、これからどうしようかなあ」


 髪をい、そんなことを呟きながら名無は歩き出す。


 自身の手によって行った村の惨劇の跡など見向きもせずに。


 斯くして異端の鬼は生まれ落ち、世界に更なる混沌の種が撒かれた。


 それを知る者は、まだ誰もいない。



〜あとがき〜

 ここまで読んで下さり、ありがとうございます。気に入って頂けたら、感想や☆、♡をつけて下さると嬉しいです。

 これで、物語の冒頭部分が終わったのですが、実はこの物語は冒頭部分と完結部分しか構想にない段階で書き始め、衝動的に投稿してしまったので、まだ続きが有りません。そのため、これからは不定期更新となります。ご了承下さい。






 

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斯くして世界は分たれる 卯月ミヅキ(旧・卯の花) @yo01

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