2.コスバレと交換条件(1)

 初めてのコミケに参加して2週間後。夏休みも明けた朝の学校。私の通ってる学校は私立の女子校で校則は幾分か緩く、学業の成績が悪くなければ大体のことには目を瞑ってくれる。

 そして、久しぶりの制服に身を包んで登校をした私は教室で待ち構えてたであろう女子に呼ばれて、階段横に何故かいます。


「……あ、あの〜……は、話って……」


 そう声を出すと女の子は元々切れ長な目と、長いまつ毛をすぅっと細めて睨んでくる。この人は私のいるクラスの子で、名前は瑠璃河るりかわ明霞めいか

 性格は私と真反対な物静かな子で良くひとりでいることが多い。私もあまり話をすることが無かった。理由はクラスの誰よりも(私含めて)美人な顔立ちで目鼻立ちが良い。

 いわゆる高嶺の花ってやつ。身長も私より10センチも高いと思う。


「……で。なんであんた、あんな場所にいたわけ?」


「…………………へ?」


 そう切り出されると思ってなくって私は素っ頓狂な声を出す。あんな場所……? あれ、なんだっけ?


「っ……はぁ〜。っんで分からないわけ? コミケよ。コ・ミ・ケ」


「あっ。あーーーーーっ! あの騎っ」


 合点がいった私はつい大きな声を上げてしまい、バッと口を塞がられる。


「大きな声だすなっ! 分かった?」


 び、美人な明霞ちゃんに迫られるなんて……や、役得だなぁ。


「分かった?」


 あっ、冷めた目された。それもそれで良いっ!


「ほんとに分かってるんでしょうね……?」


 私は塞がられたままこくこく頷く。明霞ちゃんは長いため息を吐いてから手を退かしてくれた。


「もう一度聞くわよ。なんであんたはあんな場所にいたわけ?」


「やーほら……私ってオタクじゃないですかー?」


「そうね。あんだけ大っぴらにしててよく浮かないわよねあんたって」


「えへへ〜。いやぁ〜それほどでも〜」


 私は後頭部に手を当ててデレデレ笑うとおでこを手刀される。


「はぁ……で? オタクなのは分かってるけどなんで?」


「いたたた……えっと、元々行ってみたかったなーって」


「……え、それだけ?」


「うん、それだけ」


「もしかして初参加……ってこと?」


「イエス!」


「なんで英語で答えるのよ……。それとその手は何よ」


「えー? んー……なんとなく?」


 明霞ちゃんは自分のおでこに手を当ててまたため息を吐いた。


「ため息吐くと幸せ逃げるよ?」


「誰のせいだと思ってるのよ」


「さぁ誰だろね?」


「あ・ん・た・よ」


「ひょ、ひょっほひはひっへー」


「うっさい。あんたはこうするわよ」


 両頬を摘まれる。引っ張ったりつねったりすると「なんでこんなに柔らかいのよ。腹立つわね」と言われた。え、解せない。


「っはぁー……まぁ、いいわ」


「や、やっと解放された……。もー。触るなら前もって言ってよねー」


「あんた反省してないでしょ」


「し、シテマスヨ?」


「何よ、そのカタコト」


 明霞ちゃんは再度ため息吐いて「まぁ良いわ」と呟く。


「バレてしまったしこの際、あんたはこれからこっち側になりなさい」


「……はいっ?」


「あたしのカメラマンになりなさい篠宮栞里しおり


「は、はぃぃぃぃいいいいっ!?」


「うっさい!」


「ぁいだぁっ!? 不条理!」

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