オタクの栞里が男装レイヤー明霞のカメコと恋人になるまで
海澪(みお)
1.レイヤーさんがいっぱい!
乾いた空気の中でも澄んだ印象のある女子校の階段裏。私、
「あたしのカメラマンになりなさい。篠宮栞里さん」
「は、はぃぃぃいいいいっ!?」
高校1年の夏休み明け。私は目の前の高身長黒髪ロング爆乳女子、
でもそれは願ったりでもあったと思う。そのきっかけは少し前の夏休み後半に遡る。
「────あ゙っぢ〜……!」
蝉のうるさい8月。汗の対策、水分補給もバッチリ整えたけど日焼け対策したというのに肌がジリジリ焼けて痛い。
ツバの広いキャップを被ってもいるのに。せっかくのメイクが崩れちゃう。パタパタと手をうちわにして顔の前で仰ぐ。
アニメが好きでそういった付き合いもしたかったけど、さすがにこの暑さはかなりきっつい。
「いや〜暑いっすね〜」
長蛇の列の中、牛歩の速さで進む列を歩んでいると隣の女性がそう声をかけてきた。私は重苦しく頷いて再度手をパタつかせる。
「ほ〜んとそうなんですよ〜……! 私、初めてなんですけど対策したのにその上行かれて、も〜しんどいっ」
「いや〜分かるっすよ! まじ暑すぎますよね!」
初対面なのに意気投合した気がした。
「というか初めてって言いました?」
「あっ、はい。そうなんですよ。元々行ってみたくって。ようやく来れて良かったです」
「ほうほう。ということはもしかして学生さんだったり?」
「はいっ!」
「おおぅ……きらまぶしいぃ……」
もしかしてこのお姉さんは大人の人なのかな?
「いや〜若いって良いですなぁ……」
なんか遠い目してる!?
「え、えっと……も、もしかして社ち」
「…………ふふ。良いかい若人よ。入る会社や企業は選ぼう……!」
人の闇を見た気がした……!
「あ、進んだっすね〜。行きましょ」
「あっ、はいっ」
会場の中はあまり涼しいとは言えなかった。人の熱気で少しくらっと来た。
「おっとっと。大丈夫っすか?」
「あ、す、すみません。今度はその……熱気で」
「あーやっぱそうっすよねぇ。いやはや全然あるあるっすからこのまま寄りかかっても良いっすよ」
「ご、ごめんなさいお姉さん」
お姉さんはなははと笑って私を支えてくれた。私はその優しさにじんわりとあったかくなりつつお言葉に甘えてお姉さんに寄りかかることにした。
「あ、そうだ。お嬢さんはなんて呼んだら良いっすか?」
「えっと……栞里って言います」
「ふんふん。良い名前じゃないですか〜。おっけーっす。じゃあしおちゃんって呼んでも?」
「はいっ! 友達からもそう呼ばれてるので大丈夫ですっ」
「ありゃ、お姉さんだけじゃなかったか〜。残念」
「えと、お姉さんはなんて呼べば良いですか?」
「あー、じゃあ
へへっとお姉さん、悠華さんがはにかんだ。
「分かりましたっ。じゃあゆうちゃん……?」
「ふぐっ……! ……ふふ。ふふふ……」
ゆうちゃんが心臓をおさえるポーズをした。大丈夫かな?
「えっと……だ、大丈夫、ですか?」
「だ、大丈夫っすよ。……ただその歳頃の子からそんなふうに呼ばれるなんて思ってなかったもんでへへ」
今度は吐血した! あ、コレが俗に言う尊死ってやつか!
「いやー……やっぱ若いって良い……」
「そんなしみじみすることですかぁ?」
「社会出るとね、そんなこと言ってられないんすわ……」
わ、今度は目が死んできた!? 社会人って大変なんだなぁ……。
「ふぅ……さて。しおちゃんはどこか巡りたいとこ決めてる?」
「えっと実はそこまで決めてなくって」
「おっ。じゃあ、お姉さんについてきてよ。学生さんってことは15禁まではおっけーっしょ?」
「はいっ! えへへ。ゆうちゃんといたら人酔いもなんとかなってきました」
私は楽しみですねと笑っているとゆうちゃんはボソッと、「やば、とうとっ!」なんて呟いてた。
「そういえば初めてって言ってたけど巡り方とかは調べたんよね?」
「そうですねぇ……あっ! あとはお会計も小銭をメインで持っとくといいってのも調べました!」
「えらいっ!」
「えへへ〜。リサーチはちょこっとしました」
「じゃあじゃあ、あのサークル見てみない?」
「行きましょう!」
「ノリ良くてた〜すかる〜!」
そんなふうにゆうちゃんと一緒にサークル巡りを長いことしたあと、広場へと向かう。そこはコスプレコーナーだった。
「わぁ〜! すごいレイヤーさんいっぱい!」
「でしょでしょ!? あっちはしおちゃんがやってるかは分かんないけど某F○○eの慢心王で、あっちはデ○メ○のダ○テ! どれもこれもクオリティやっばいでしょぉ!?」
「とっても良いですね! なんかすっごい愛感じます!」
ゆっくりと歩きながら右も左もレイヤーさんでいっぱいの通りを巡る。そんな時だった。
「………………はわ」
「およ? なしたー……ありゃまぁ」
1人のレイヤーさんに目が止まった。白銀の鎧に身を包み、少し長いけど金髪を毛先が風に揺れて、随所にある蒼色の羽織が揺れ、撮影慣れしてる顔は何処かアンニュイな面持ちの人。スタイルも良くてそれで……。
「────────────かっこいい……!」
目線に気付いたのか、そのレイヤーさんは私と目が合った。どうしてか驚いたような顔してたけど。
♥︎♡♥︎♡
茹だる暑さに体中の毛穴という毛穴から汗が吹き出る感覚にあたしは嫌な感じをしながらコスプレ参加者控え室でスーツケースから衣装諸々を出していく。
「あっ……えっ? うっそでしょ……っはぁー」
ウィッグネットを忘れてきたことに気付いて大きなため息を吐いて天井を仰ぐ。その時だった。
「これ、使って」
「えっ!? あ、ありがとうございます!」
隣でメイクしていたお姉さんから予備なのだろう。ぽんと手渡された。お姉さんはニコッと笑ってメイクを続けた。とても優しくて何度も頭を下げてから同じようにメイクに取り掛かった。
数十分かかってメイクを終えて、衣装をつけていく。暑さ対策もバッチリ。ウィッグ、メイク、各小道具もバッチリ。
「────、良し」
今日だけはあたしはセ○バー、○ー○ー・ペ○シル○ンなんだ。
あたしは一度目を伏せて息を整えてから目を開けて、自分のSNSアカウントを書いた画用紙と豪奢な装飾のされた彼の武器である聖剣を手にあたしは屋外へと向かう。
「……………!」
外に出た瞬間の熱気。照らされる陽光。あまりの日差しの強さに不快げに眉を顰めるけど、すぐに表情を改めて、あたしは自分の持ち場についた。建物の影になっていて幾分かマシかな。
画用紙を傍らに立てかけてポーズを取って待つ。最初のポーズは剣を右側の方で地面に剣先を付けて軽く仁王立ちのように立つ。
「あのー。撮影良いでしょうか?」
「はい、良いですよ」
少し待っているとそんなふうに声を掛けてくれたカメラマンの男性に頷いて、何回かポーズを変えていく。
「わぁ〜! すごいレイヤーさんいっぱい!」
「でしょでしょ!? あっちはしおちゃんがやってるかは分かんないけど某F○○eの慢心王で、あっちはデ○メ○のダ○テ! どれもこれもクオリティやっばいでしょぉ!?」
「とっても良いですね! なんかすっごい愛感じます!」
そんなふうにポーズを取っていた時だった。建物側からいつも教室で聞いていた明るいキャピキャピした声。
────いや、そんなまさか……。でも確かにあの子は自らオタクって言ってたかしら。……って今はプ○トア○サ○に成り切らなきゃ。
「………………はわ」
「およ? なしたー……ありゃまぁ」
やばい。こっち見た。どうしよう……バレちゃうのかしら。誰にも言ってないのに。
「か………かっこいい……っ!」
「────、……え?」
バレた……わけじゃない、のよね……?
だってあたしを見てそう言っていたんだし。そもそもこの子……篠宮さんだったかしら。この子はレイヤーさんよりキャラを見てる感じだから安心……なのかしら?
「ね、ねぇゆうちゃんゆうちゃん! プ○ト○ー○ーですよ! とってもイケメンです!」
「あーそうっすねぇ……。あれ、もしかしてしおちゃんは○ロ○ア○サ○が一番好きなんすか?」
「うんっ! だってね、私に初めて来てくれた星5なんです! アレ以来、私のサー○ァントなんです!」
興奮気味で隣の女性と話す篠宮さん。ゆうちゃん、と呼ばれてる女性は深く何度も頷いて「あるある」と言っていた。
──────ぎゅぅ……。
うん……?
あたしはよく分からない胸の締め付けられる感覚に良く分からないもやもやのまま夏休みが終わるまで続いた。
───────────────────────
【あとがき】
この作品を読んでくださりありがとうございます。
私は海澪(みお)と言います。
基本的にはラブコメを専門として書いています。
この作品はこんな感じで進んでいきます。それでも面白い! 続き読んでやっても……良いんだからねっ! な方は是非、作品フォロー、星やレビューコメント等をお待ちしています。
これからの作品をどうぞお楽しみください。
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