第2話
イキリストとして生きてきた俺にとって知人は多いと言えるだろう。
だが仮に友人と呼ぶのであればそれは一気に減少する。
俗に言うよっ友、もしくは無視さえする仲の存在というのは溢れている。
そんな中には当然女子も該当する。
昔同じ学校の同じクラスメイトで偶々喋る機会があった。
そんなくらいの、名前は知ってるけどコイツのことあんまり知らねーやくらいの相手。
そしてここで補足をすると、俺の家は学校から案外近い。
だから俺は学校まで歩いて登校する。
そんな環境に酔いしれ普段はギリギリまで睡眠を取る俺だが、今日は珍しく朝早くから登校した。
理由は多分、なんとなくだ。
決して昨日見たアニメの感想を早く誰かに共有したいだとか、そんな理由はない。
さて、それでは早めに登校した俺に訪れた境遇を説明しよう。
「……」
「……」
俺は隣に立つ女子に目を向ける。
彼女は所謂、人気者という奴だ。
何故なら美人だから。
それ以外に理由はなく、それ以上の理由もない。
美人だから勝手に人が集まり、勝手に盛り上がる。
そして俺は彼女と小中が一緒だった。
しかし同じクラスになった回数は一回くらい。
その上喋ったことも殆どない。
だけど一応近くの環境で9年一緒にいたわけだ。
あぁ、こんな顔の奴がいて時々喋ったなくらいの共通認識があった。
俺からすれば彼女は高嶺の花だが、相手からすれば俺は昔からいるモブだろう。
しかしさすが一軍と言うべきか
「おはよう」
「……おはよう」
俺に対して挨拶をするとは並大抵のコミュ力ではないな。
挨拶をすれば、自然と俺たちは一緒に登校していた。
一緒に行こうとかは一言も言っていない。
だけどなんとなくそういう空気感だから。
そして始まる時間はハッキリ言ってめちゃくちゃ緊張する。
何を話すべきかと悩み、そして改めて俺は彼女の事を何も知らないんだと実感させられる。
というか偶々会っただけで話題を出す方が間違いなんじゃないか?
そんな事すら頭に過ぎる。
そして向こうも俺と馴れ合う気はないのか一言も話さない。
俺が横にいようといなかろうと関係ないと、自信が溢れているようだ。
完全な脈無しである。
というかそれはそうだ、世界が違い過ぎるのだから。
ある意味吹っ切れた俺は気軽に口を開く。
「そう言えばMは特進クラスだっけか」
「そうだけど、似合わないって?」
「いや別に。むしろ納得だよ、よく図書館で勉強してるの見たし」
「永遠の方は、勉強してた割にこっち来なかったね」
「俺が馬鹿だっただけだ」
「そう」
それから暫く喋っては話が終わり。
喋っては話が終わるを繰り返す。
永遠に感じる無言の時間とは違い、今度はあまりに早い幕引きを迎える。
「じゃあ私、こっちだから」
「おう。じゃーな」
「うん、またね」
俺は軽く手を振り、後ろを振り向かなかった。
今日という日はただの偶然。
今後訪れることがない、泡沫の夢のようなものだった。
◇◆◇◆
「夢は二度刺すか」
放課後。
帰宅部エースを名乗る俺だが、今日は教室に残っていた。
理由は中学の受験を思い出したからだ。
あの頃は遅くなるまで教室に残り、勉強とかしたっけな。
それを思い出したきっかけは彼女であり、それは本当に気の迷いだった。
だから今日は本当に偶然がよく起こる日だった。
「「あ」」
声が重なった。
正確には音にすらなっていない、でも間違いなくその言葉が出たような感覚だ。
Mの手元には幾つかの教材と、隣にはB。
そして教室に入り、Bの席の前。
つまり俺の隣へと座った。
「それで?どこが分からないの?」
Mは一瞬だけ俺を見た後、後ろのBへと振り返る。
どうやらBが勉強を教えてとせがんだのだろう。
俺は偶に隣を見つつ、勉強を続けた。
それから30分経っただろうか。
本来ならもう終わって帰ってもいい。
ほんの出来心で始めたものだから。
だけど俺はまだそこにいた。
何故って?ふっ、愚問だな。
隣に可愛い女の子がいたら、男はそれだけでなんか嬉しいのだ!!
この満たされた気持ち、どう表現すべきだろう。
それを言葉にするには、きっとこの余白では足りない。
所詮俺の持つノートはA4サイズしかないのだから。
そんな感慨に耽ていると、肩を僅かに揺らされる。
隣をみれば、珍しく口元を緩ませたMが
「もう、集中し過ぎ」
と軽く笑っていた。
「な、なに?」
やっべ、声が若干上擦った。
恥ずい!!
「ここ。分からないんだけど、分かる?」
魅せられた内容はかなり難しいものだった。
「あー。ちょっと時間くれ」
「いいよ。勝負でもする?」
「勝負?」
「うん。どっちが早く解けるか」
その言葉に俺はつい乗ってしまう。
「いいね」
「そういうことで」
そして教室では俺とMがノートを書く音、そしてBの寝息だけが鳴っていた。
10秒、1分、それから
「分かった」
勝ったのは俺……ではなく
「さすが」
「運が良かったね」
当然のようにMだった。
「……むしろ教えて欲しい」
「私が聞いたんだけどな〜」
「いや本当。ここどうやったんだ」
「そこね、私も詰まった」
そして俺達は2時間ほど勉強をし、家へと帰ったのだった。
あれから数日後。
「あ、ここ、進◯ゼミでやったところだ」
俺はいつもより数学の点数が少しだけ高かった。
ちょっとだけイキる、ただしモテないものとする @NEET0Tk
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