第18話

「嘘じゃない。迎えに行くってそう言ったろ?」




聞こえてくる恋しい声。



だってこんなの…都合がいい夢にしか思えない。



大翔がいる。目の前に。すぐそこに。手を伸ばせば届く距離。



こんなの、ありえない。いつもテレビの先にいて、手を伸ばしたって冷たくて、何度手を伸ばしてももう届かなかった。



だって私が放したのだから。



背を向けてしまったのだから。



傷付けた。その事実は変えられない。



歯を見せ笑う大翔の笑顔はどこか不器用で緊張してるんだとすぐに分かった。



こみ上げてくる感情はどうしようもできない。



このまま大翔に甘えてしまいたいけどそれはダメだ。してはいけない。私が決めたことなんだ。自分で決めて歩いた道を今更、後戻りなんて出来ない。それも大翔を傷つけてしまった今だからこそ余計に私はこの足で歩いていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る