欲しがるだけ与えてあげる

第7話

「彼氏のほうは大丈夫か?」



「うん。大丈夫」



「なら良いけどさ。もし――」




太一の声が遠ざかった。背中に感じる人影。


握っていた携帯がない。恐る恐る横を向けば、私の携帯を壱翔が耳に押し当てていた。ピンクの携帯と壱翔って、アンバランス。なんて、今はそんなことを言ってる場合じゃない。壱翔の横顔は隠す様子もなしに不機嫌というよりも怒り。




「誰だか知んねーが、俺の女に手ぇ出すな。殺す」




ぶちっと一方的に切った電話。壱翔にバレないと思ってた自分が甘かった。携帯は地面に落ちて、それを目で追う。必然と目線が下がる私に上から声がした。それは今まで聞いたことがないくらい酷く鋭くて切ない。




「浮気か?」



「違うっ!!」



「何が違う?今男と話してただろーが!!」



「、浮気じゃない」



「じゃーなんだよ?今のは。もう俺のことが好きじゃねーのか?」



「違…」



「何が違ぇんだよ!はっきり言え!!」




両腕を掴まれた。怒ってるくせに、その手はやっぱり優しい。


声にならなかった。その代わりに涙がポロポロと頬を伝う。


私が好きなのは壱翔だけなのに、なんで伝わらない?歯痒くて、唇を噛み締める。言葉にしなくちゃ伝わらない。そうじゃなくて、信じてもらいたいんだよ。私には壱翔しかいないのに。

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