第4話

「学校行かなきゃ」



「休め」



「無理」



「じゃ、遅刻」



「大人が言うセリフじゃないでしょ」




毎日朝はこうやって始まる。壱翔は学校に行かせたくないと言って子供みたく駄々をこねる。だけど私が嫌がることは絶対にしない。




「はぁー。学校潰しちまうか」




呟かれた言葉は無視をして、起き上がってベッドから出た。壱翔なら本当にやりそうだから怖い。私のあとを追うように壱翔もベッドから出てベタベタとくっついてくる。




「学校潰すとかやめてよ?」



「冗談だ。お前が浮気でもしたらその男ごと学校は潰すけど」




セリフと合わない満面の笑みを浮かべ、頭にキスが降る。浮気なんて私ができる訳がないのに。壱翔は心配性すぎる。前にそんなことを言ったら「好きな女心配すんのは当たり前だ」とさも同然に言われた。


心配されるのは嬉しいけど壱翔の場合、それを通り越して過保護。前までは歩いて通ってた学校も今じゃ送り迎えアリのなんともリッチな生活を送ってる。




「さて、嫌だけど行くとするか」




支度をして、準備オッケーの私に手を差し出す。確かに感じる愛がこの手にはいっぱいあった。掴んで、離したくない。彼を好きになってはいけなかったのに。


彼は


壱翔は十津川組の組長。この歳ですでにその地位を築いている。裏の世界。私には無縁だった世界。


ヤクザ。

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