第22話 多分……ストーカー?
帰り道にいろいろなことがありながらもなんとか無事に帰ってきた俺。すでに晩御飯は出来ており、母に急かされた俺はすぐに手を洗って席についた。
「いただきます」
「いただきます!!」
俺の弟、神崎
「は〜い、頂いてください!」
キッチンから弟と同じくらい元気な母さんの声が聞こえてきた。俺の母、神崎
「紅城〜?今、何考えてる?」
嘘、なんでバレたん?
うちの母さん、年についてめっちゃ勘がいい。今みたいに少し年について触れる(考える)だけで、殺気を剥き出しにしてくる。
「そういえば親父は?」
俺はキッチンにいる母さんに聞いた。
朝以来、親父の姿を見ていない。あの人、片腕だから怪異と戦えないはずだし、どこで何してんのか。
「あの人なら
「そっか」
仕事、か。神職でもあるからあれだけど、怪異と戦ったりはしてないよな?てか、怪異と戦えるなら俺が陰陽師になる意味はあったのか?
いや、普段通りの動きはできないんだし、俺自身の気持ちで陰陽師になる選択をしたんだ。その決意は揺らいだりしない。
そういえば、どうやったら陰陽師ってなるんだ?なりたいなりたいとは言ったものの、怪異を祓う仕事くらいしか知らないし、どうやって陰陽師として認められるのかも分からない。
今度海斗に聞いてみるか。
そんなことを思いながら水を飲もうとすると、ふとコップに映った手に黒い汚れがついているのが見えた。手で軽く擦るが、落ちない。むしろ、黒いシミのようだった
親指から、神崎紅城、古河涼介、篠本菜華、綾西結月と書かれ、手のひらには近くのショッピングセンターの名前がある。
これはまさか────
「────夢鬼ごっこ!?!?」
また怪異と戦うことが決定した俺はつい驚いて大声を出してしまう。涼介の話を聞いた時点でこうなることは分かりきったことではあったが、こんなにも早いとは。まだ前回の黒玉から三日だぞ?いや、前までは連戦続きだったな。
「大声出すなよ、うるせえ!」
「お、おう。わりぃわりぃ」
びっくりした弟に注意されてしまったのですぐに謝った。
「てか、急に鬼ごっことか言い出して、頭でも狂った?」
弟、辛辣過ぎん??
「いや、まぁ学校でちょっとな」
怪異の噂、不用意に広めるべきではない気がする。
「あっそ」
弟は軽くそう言うと一気にご飯を駆け込み、ご馳走様と言って席を立って行ってしまった。
さて、この後どうするべきだろうか。とりあえず、涼介達と連絡を取って、んで、親父にも連絡して。いや、そうなると、親父に電話するのが先だな。
「紅城〜?ご飯冷めちゃうから早く食べちゃいなさ〜い」
俺がこの後の動きについて考えて手が止まっていたため、母さんがご飯を食べるように勧めてきた。
「はいよ」
俺は机の上の箸を手に取り、ごはんを食べ始めた。
そしてすぐに家のチャイムが鳴る。
「こんな時間に?宅配便かな。母さん、俺出るよ」
玄関に近い席の俺が向かったが特に人影は見えない。家には呼び鈴はあるもののカメラとかマイクがついていないため、誰が来ているか分からないのが玉に
「すいませ〜ん、どちら様ですか?」
応答はない。
「すいませ〜ん?」
またしても応答はない。
ピンポンダッシュ?それとも機械の故障か?
仕方ない。一応確認しておくか。
戸を開けてみたが、誰もいない。辺りを見回すが誰もいない。
何もいないかと思ったその時、視界の隅で動く黒い影が目に入った。視線を下にずらすとそこには帰り道で見た狼(推定)が座り込んでいた。
「お前!?どうやってここに?」
狼らしき動物は俺の目を見つめるだけで何も言ってこない。
「……いや、喋れるわけないか」
動物相手に俺は何を言っていたんだ?動物が喋る訳が無いだろう。そんなことより、この狼のことを今度こそ警察に連れて行くとするか。
俺がどうやってこの狼(定義上)を警察まで連れて行くか考えていると、玄関から帰ってこないことを心配した母さんが後ろから後ろから声をかけてきた。
「まだ〜紅城。そんなとこで何やってんの?」
「いや、その、なんでもない!」
母さんを
「え〜?何かあったのかと……あら、可愛いワンちゃんね〜!」
そうして、俺のところまできた母さんは犬(狼)を見つけ、そう言いながら玄関から出るとしゃがみ込んで近づく。
「どしたの迷子かな〜?」
子どもをあやすような言葉で狼に話しかけている母さん。
そいつ、多分犬じゃなくて狼なんだが、俺はそう言わなかった。なんかすっごいキラキラした目で見ているもんだから、言ったところで無駄な気がしてしまって。
「お腹は空いてるかな〜?」
母さんがそう言うと、狼は尻尾を振り始め、大きく開いた口からは犬歯がむき出しになっている。たしかに犬にも見えなくはないが、こいつの顔は野性味があるだろう?絶対に狼だって。
「そう、おなか空いてるのね!冷蔵庫に何か食べ物あったかしら、ちょっと待っててね〜」
俺の気持ちとは裏腹に、母さんはそう言って家の中に戻っていってしまった。狼じゃないの?って聞けなかった……。
「なんにも起きないと良いんだが」
俺は狼を見ながらそう呟くと、そいつと目が合ったのだった。
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