第21話 ……ストーカー?
いきなり転校生が来て、今日は大変な一日だった。女子の転校生が来たという話題は他クラスでも話題になり、一目見ようとするものや話しかけようとする人が俺達の教室に集まってごった返していた。
そんなことはありながら、なんとか学校を終えた俺は涼介達とは違う友達と話して遅くなり、一人で家に帰っていた。
その道中、俺は背後から妙な視線を感じていたのだった。
誰かついてきてる?
そう思い振り返るが、誰もいない。でも確かに何かの気配が後ろにあった。
気になりながらも俺はまた歩きだす。少しして、また気配を感じ始めた。こうなったら何が何でも正体を暴いてやる。俺はそう思い、家に帰る道から外れて曲がり角を曲がった。
相手は一定の距離を保ち続けている。目視できない範囲に俺が行ってしまったとなれば、相手は走って追ってくるはずだ。そう考えた俺は曲がり角の死角に隠れているが、来た方向から足音は全くしない。不思議に思い、少しだけ顔を出して確かめてみたが誰一人いなかった。
勘違いだったのか?
俺はそのまま振り返り、家の方向とは違う、曲がり角を曲がった方へ進み始めた。
多分、これではっきりするはずだ。
俺は少し曲がり角から遠ざかったところに来た時に振り返り、天恵を発動した。
***
休日に
マンションの後に戦ったあの日以降、紅城はみるみるうちに天恵の感覚を覚えていき、基礎を磨いていった。
***
そのおかげもあって、俺はコンマ何秒かだけ天恵を発動させ、溢れ出てくる妖力を足だけに纏わせられた。
短期間で大量の妖力を操作を誤ることなく扱えるようになった紅城の成長速度に、海斗も驚愕する。詩郎の息子であることからも素質があるのは分かっていた。だが、その想像をはるかに超える紅城に、畏怖の念を抱きかけるほどのものであった。
だが、実力ではまだ海斗の足元にも及ばない。
妖力を纏った足で地面を蹴り、紅城はすぐさま曲がり角のところまで移動する。天恵は既に解除されており、体全体に言い知れぬ疲労感があるが気にもとめず、紅城はすぐに曲がり角から飛び出した。
ちょうどタイミングはバッチリだったようで、俺の前に何かがいた。俺は少し
それの頭の上には、ふわふわの灰色の毛で覆われた耳。大きな体を支える四本の足。綺麗な目。そして、開いた口から顔をのぞかせる長い舌。
犬の
「犬というか、────狼だろ!?」
俺をつけてきたのは灰色の狼だった。いや、そんなはずない。自分で言ったが、こんなところに狼がいる訳が無いのだ。でも、犬よりも凛々しい顔をしてるし、どことなく俺の知っている犬と違う。とりあえず、狼(推定)の事を調べてみる。
「首輪付いてる。迷子かな?」
黒い革製の本体に、金色の飾りがついているその首輪。もはや
ここに置いといたら何かしらの事件に発展しそうだし、どうするべきだ?
少し悩んで俺が出した結論は……
「警察につれてくか」
俺がそう呟くと、座っていた狼(推定)は急に立ち上がり、明後日の方向に走り去ってしまった。
「何だったんだ、今の」
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