羽根
ひぐらし ちまよったか
壊れゆく日本
――西暦20XX年。
終わりを知らない低迷を続けた日本経済を活気づける起爆剤が、日銀によって投入された。
新紙幣の発行である。
この新札、世界を驚かせる画期的な『偽造対策』が施されていた。
なんと、お札に『羽根』を付けたのだ。
いままでも「お金に羽が生えた」など、庶民の財布から無情に、あっという間に飛び去ってゆく紙幣を例える比喩表現は存在したが、今回、日銀は『物理的』に、お札へ羽根をデザインした。
印刷後、定型に裁断する際に隅が折れて、紙の『耳』が残ったまま市場に出回るという『エラー紙幣』が見付かる事は以前にもあったが、もともとの『定型』がミツバチの様な小さな翅を四隅へ出した形なのだ。
そう簡単に偽造できるものでは、ない。
「――キャッシュレスが進んだ時代にあえて新紙幣を投入する事で、市場に驚きと緊張感を与え、国民全員が豊かな暮らしへ飛び立てるように、この『翼』へ祈りを込めましょう」
時の首相は意味不明な『おやじギャグ』を、誇らし気にほくそ笑み披露した。
この国は、もう、終わりなのかも知れない。
――ちなみに新札の顔となる、各肖像画。
千円札には、ギリシャ神話のヘルメスの様に両翼をこめかみへ飾り、逆三角形の広背筋を『びきっ』と見せつける、ムキムキマン。
五千円札が、長い冒険の日々を終え、多くの傷を抱えながらも故郷へ思いを馳せる勇者パーティーの達成感を、絶望の淵へ無理矢理落とし入れる、ラスボス感たっぷりの銀色豪華衣装で熱唱する、小林幸子。
そして一万円札は、瑠璃色にホログラム印刷されたアゲハ蝶の翅を、王子様のように
―――― 了。
羽根 ひぐらし ちまよったか @ZOOJON
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