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今日は久しぶりに父さんが帰って来る。ただの帰り道が、いつもとは違って、少し陽気に見える。高校生、しかも二年生。17歳にもなって、父親が帰ってくることにはしゃぐなんてありえない。でも、やっぱり、少しだけ、嬉しい。悔しいけど、親子って関係がこうあると良い、と思う。しばらく歩き、家についたが、鍵が空いている。
「
だるそうな声が返ってくる。
「どうせお前が帰ってくんだろー。いちいちうるせーなー。」
呆れて返す言葉もない。しっかりドアを施錠して家に入ると、リビングのソファーが
「座るとこねーじゃん。てか、今日父さん返ってくるんよ?私達で美味しい料理でも作ってあげよ。たまには、ね。」
春木は渋々といった様子で起き上がり、キッチンの冷蔵庫を覗いた。牛乳を取り出しながら、まただるそうに口を開く。
「わかったけど、お肉が足らんね。うん、夏木、買ってきてー。お兄ちゃんの命令。」
この展開は予測できていた、が、”お兄ちゃん”は流石に苛々する。しかし、お肉が足りないのも事実。はっきり聞こえるよう、大きく舌打ちをして、お使いに向かった。
制服のまま、折り畳みのエコバッグと財布をポケットに突っ込み、手ぶらのまま歩く。まるで華の女子高生とは思えない。春木への苛立ちを、地面にぶつけながら歩いていると、見覚えのある
顔が通りかかる。
「おやー、ナツ、帰ったんじゃなかったのー?」
数十分ぶりのユキの顔は、やはり可愛らしい。悔しい気もするが、見てるとほんの少しだけストレス発散になる。愚痴混じりにお使いのことを話すとユキは、付いてくると言って聞かない。仕方がないので、ユキと一緒に近所のスーパーに向かった。
「お菓子でも買おっかー?」
ユキはにこにこしながら、スーパーですら楽しんでいる様子だった。私もつられて楽しい気分になってしまう。4年も付き合いがあると、もはや家族のように感じている。
会計を済ませスーパーを出ると、ユキがかなり傾いた太陽を見上げていた。
「さっきも言ったけどー、もう暗いからさー、気をつけなよー。」
そう言うと、ユキは家が近いからと言って颯爽と帰っていった。彼女が私から離れていく瞬間は、いつも少しだけ寂しい気持ちになる。私から離れる分にはさほど感じない、そう思い返してみれば、ユキも同じように寂しいのかと、考えが及ぶ。勝手にユキと通じたように感じたまま、私は帰路についた。
春木はキッチンで既に下ごしらえを始めていた。炊飯器の稼働音と野菜を切る音が、家庭を思わせる。
「おせーなー、早くよこせー。あー、お前は掃除でもしてろ。ピカピカにしろよー。」
鶏肉を渡しながら舌打ちをすると、お兄ちゃんだぞー、と変な鳴き声で攻撃をしてくる。根負けした私は、気分が悪くなる前に掃除を始めた。春木が双子の兄だからといって、なんの権限があるのだろうか。言っていることはともかく、お兄ちゃん呼びのスタンスは本当に気持ち悪い。たかだか数秒の差で生まれた弊害を、名前も知らない医者に抗議したいと、私は常々考えている。しかし、こんな気持ち悪い兄とでも、二人暮らしをしている以上、協力関係は保たねばならない。父さんは、私達が高校生になる直前、仕事の都合だと言って私達を置いて引っ越していった。冗談も疑ったが、父さんは本当に置いていった。それから私達は、毎月の仕送りをどうにか二人でやりくりし、父さんと会うのも3ヶ月に一回になった。文句をつけたこともあった。なぜこんな事になったのか、なぜ置いていく判断をしたのか。でも父さんは、特に意味なんかない、おれとお前らそれぞれの自由を尊重しただけだ、と、そう言っていた。前は風邪で来れなかったらしく、今日は半年ぶりに帰って来る。俺達は酷い目に合わされてる、と春木は言っていたが、いつもより少しだけ嬉しそうに笑う。流石にしんどいけど、不幸ではない、少し変わった家族の形。私も、多分春木も、満足している。
インターホンが鳴った。
「なっ!早えーよ!夏木、こっち急いで準備するから父さん頼む。」
だから私達は毎回言う。
「お帰りなさい、父さん」
へび LovU @youllbutyoull
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