ダンジョン配信する魔法少女は、みんなのコメントを欲しがります!~古の魔王の頭蓋骨は、超強力魔法でした!~

米太郎

第1話

「はーいどうもー、マジカル☆ボーンコレクターチャンネルへようこそー! 小兎姫ことひめでーす!」


 目が虚ろな魔法少女が、ダブルピースしている。ふらふらで今にでも意識を失ってしまいそうに見えるけど、楽しそうだ。


「サクノスケ? これ、ちゃんと配信されてる?」

「大丈夫だよ、配信開始しているよ。僕が見た景色を配信者に送ってるから」


「それならヨシ!」


 右腕を伸ばし、宙へ手のひらを見えるとステッキが現れる。

 パッと現れるので一見マジックのように見えるが、種も仕掛けもない。これが魔法少女の力だ。



「はいー、今日もキメてきますよー。早速ダンジョン攻略行っちゃいましょー!」


 小兎姫はくるりと回って、ふわふわなパニエスカートを広げる。ダンジョンの奥へと向きを変えて歩き出す。僕はそれに付いて行く。


 僕は役目は、魔法少女を任命すること。そして。その魔法少女の最期を見守ること。

 ダンジョン攻略をするための力を与える代わりに、生命のエネルギーを消費する魔法を使えるようにするのが、僕の種族の役目。


 僕の種族が与える魔法は、アンデット系モンスターの操作。アンデットと言っても、死んでいるモンスターを操ることができるという魔法だ。肉付きやら、腕力なんかも、生前の状態を再現させることができる。


 無から有を生み出すには精神力をとても使うから、魔法を使い続けると彼女のようにやつれていく。それでも、彼女たちはダンジョン攻略に夢中になるのだ。



「小兎姫、今日の敵はどういうやつなんだい?」


「今日はねー、フロアボスっすよー! 多分でっかい奴が出てくるよ! 骨収集が捗るね! わくわくだよー!」



 小兎姫のチャンネル『マジカル☆ボーンコレクター』というだけあって、モンスターの『骨』を集めては新しい魔法をお披露目するのだ。

 何が楽しいのか僕にはわからないけど、小兎姫も視聴者も楽しんでいるみたい。



「ホネッホネーー!」



 ――ホネッホネー☆

 ――ホネッホネー♪


 ――今日も小兎姫ちゃん、可愛いっすー!


「視聴者さん、合唱さんきゅー♪ ホネッホネ♪」



 コメントは直接脳内に送り届けられる。配信者によっては、いろんなコメントが飛んで来るが小兎姫に関しては平和な方だ。


 呑気に鼻歌を口ずさんでいると、ちょっとした広い空間についた。天井までの距離は数十メートルくらいあるだろう。大きな鍾乳石が上から垂れ下がってるが、それもかなり上方にある。

 周りを見渡すと、どうやらここから先へ進む道は無いようで、ダンジョンの最終フロアらしい。


「ここがボスのいるフロアっぽいんだけどー、ボスどこだー?」


 キョロキョロと見回すと、そいつは天井から現れた。

 巨大な大蛇のようなモンスターが鍾乳石に絡まりながら、ドサっと地面に落ちてきた。

 一瞬緊張感が走ったが、小兎姫はニコリと微笑む。



「ほあーーっ! でっかーいね! かなり強そうだね!」


 大蛇をしっかり認識すると、まるで獲物を見つけた獣のように鋭い目つきへと変っていく。

 小兎姫は、背中に背負っていた骨を前かがみになりながら地面へ落とすと、すぐに拾って両手でハンマーのように持ち構える。


「最初から本気で行くよーっ! サクノスケは、今日の最大の見せ場っ! サムネ画像に登録よろーっ!」


 取り出したのはオークロードの腕の骨。小兎姫の胴回りくらいあるような頑丈なものだ。いつかダンジョンで倒されていた遺体から入手したもので、小兎姫の持っている骨では最強の骨。

 魔力量が大量に必要だけれども、フラフラな状態でよくやるよ。



「はあぁぁぁぁーーーーーーっ!!!」


 小兎姫が魔力を込めると、骨を中心にしてみるみる肉が付き始めた。骨に宿る力を引き出していく。



 ――いきなり必殺技キターーー!

 ――可愛いのに、ゴツい腕力!!

 ――今日の名場面!!



 大量のコメントが飛んでくる。そのコメントをもらって、小兎姫の目に生気が宿る。


 魔法少女のダンジョン配信は、視聴者からコメントと一緒に送られてくる魔力によって成り立っている。コメントが多ければ多いほど、大きな魔力となって強大な魔法を使えるのだ。



「コメント、とっても助かるーーー! みんなの魔力が身体中に満たされるーー。……これ、すっごい気持ち良いんだよ! はぁーーーん!」


 小兎姫の前に、みるみるオークロードの腕が再現される。空中に筋骨隆々な腕だけが浮かんでいる。ほぼ、大蛇と同等の大きさまで腕が再現された。



「おりゃああぁぁぁーーーっ!!! 叩きつぶせぇぇーーっ!」



 小兎姫の掛け声とともに、振り下ろされる腕。大蛇は抵抗しようと、腕に向かって体当たりをするが、腕が押しきり地面へ叩き潰す。



 ――ドーーーーーーーン!!!



 広い空間だと音が良く響く。

 砂埃が舞い、残響音がウワンウワン響いていた。



 段々と視界が開けてくると、そこには頭をつぶされた大蛇とオークロードの骨が落ちていた。

 小兎姫はそれを見ると、くるりと一回転してこちらを見てくる。


「はーい。みんな見たー? フロアボスの大蛇一発でーす! おひねりちょーだいっ!」


 ――やっぱりすげーよ、小兎姫ちゅあん!!

 ――俺たちにできないことをやってくれる!

 ――痺れるぜー!!


 ――88888888!

 ――ダンジョン攻略おめーーー!



 視聴者が祝福のコメントを送ってくれる。魔力は回復していくが、それでもやはり消費が大きいようだった。



「いえーいー。みんなありがとーー! 大好きだよーーー!」


 祝福コメントをもらっても回復しきれていない小兎姫は、虚ろな目でダブルピースしてくる。サムネイルにするのは、こっちの方が良いんじゃないかなって毎回思うんだよね。


 いつも通り、倒し終わった後のダブルピース顔は、サムネイルの右下に付けておこうっと。


 やっぱり魔法少女は、こうでなくっちゃね!

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ダンジョン配信する魔法少女は、みんなのコメントを欲しがります!~古の魔王の頭蓋骨は、超強力魔法でした!~ 米太郎 @tahoshi

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