第8章:秘密結社との対決と明日香の決断

山田真理子の研究室に、再び不吉な影が忍び寄っていた。


真理子が研究室のドアを開けた瞬間、彼女の顔から血の気が引いた。机の上のパソコンが起動したままで、画面には見覚えのないプログラムが走っている。そして、重要なデータファイルが次々と消去されていく様子が映し出されていた。


「まさか...!」


真理子は急いでコンピューターに駆け寄り、必死でプログラムを止めようとした。しかし、彼女の努力もむなしく、最後のファイルが消去されるのを目の当たりにした。


「くっ...」


真理子の唇から苦い言葉がこぼれた。しかし、彼女の目には既に次の行動への決意が宿っていた。


数時間後、研究チームが緊急会議のために集められた。


「今回の襲撃で、私たちの重要なデータの多くが失われました。」真理子は静かに、しかし力強く語り始めた。「しかし、これは私たちの研究を止めるものではありません。むしろ、私たちが正しい道を進んでいることの証だと思います。」


佐藤健太郎が真剣な面持ちで発言した。「山田先生、私たちの調査で、日本古代王朝守護会の本拠地らしき場所を突き止めました。」


一同の視線が佐藤に集中した。


「それは古い神社の敷地内にあるようです。そして...」佐藤は一瞬躊躇したが、続けた。「そこには『日輪の鏡』と呼ばれる古代の秘宝が隠されているという噂があります。」


「日輪の鏡...」真理子の目が輝いた。「それは、卑弥呼が使っていたとされる鏡ではありませんか?」


佐藤は頷いた。「はい、そしてその鏡が、卑弥呼の力の源であり、私たちが発見した特殊な遺伝子を活性化させる鍵である可能性があります。」


部屋に重い沈黙が落ちた。


その時、鈴木明日香が震える声で口を開いた。「私...告白しなければならないことがあります。」


全員の視線が明日香に向けられた。


「私は...日本古代王朝守護会のスパイでした。」


明日香の告白に、部屋中が凍りついたような静けさに包まれた。


真理子は深く息を吐いた。「明日香さん...なぜ今になって?」


明日香は涙を浮かべながら答えた。「最初は守護会の命令で動いていました。でも、先生たちと研究を進めるうちに...本当の意味での真実の追求がどういうことなのか、わかってきたんです。」


彼女は顔を上げ、真理子たちをまっすぐに見つめた。「私...もう守護会には戻りません。先生たちと共に、真実を明らかにしたいんです。」


真理子は静かに明日香に近づき、その肩に手を置いた。「明日香さん、あなたの勇気に感謝します。そして...信じます。」


佐藤が咳払いをした。「では、守護会の本拠地に関する情報を...」


明日香は顔を上げ、決意に満ちた表情で言った。「はい、私が知っている全ての情報をお話しします。そして...私も一緒に行きます。」


真理子は深く考え込んだ後、静かに頷いた。「わかりました。私たちで『日輪の鏡』を取り戻しましょう。それが、この研究の真実に近づく鍵になるはずです。」


チームの面々が互いに顔を見合わせた。彼らの目には、不安と期待、そして決意の色が混ざっていた。


真理子は窓の外を見つめた。夕暮れの空が、燃えるような赤に染まっていた。


「明日の夜、行動を開始します。」彼女の声には、揺るぎない決意が込められていた。


研究室の空気が、期待と緊張で震えていた。彼らは、歴史の大きな転換点に立っていることを、誰もが感じていた。


そして誰もが知っていた。この行動が、彼らの人生を、そして日本の歴史を永遠に変えてしまうかもしれないことを。

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