第9章:真実の扉と卑弥呼の選択
夜の闇が深まる中、山田真理子たちは古い神社の敷地に忍び込んだ。鈴木明日香の情報を頼りに、彼らは日本古代王朝守護会の本拠地へと向かっていた。
真理子の胸は高鳴っていた。「日輪の鏡」。その古代の秘宝が、彼女たちの研究の真実を明らかにする鍵になるかもしれない。
「ここです」明日香が低い声で言った。彼女の目は、緊張と決意で輝いていた。
一行が神殿の中心に近づいたとき、突如として警報が鳴り響いた。
「罠だ!」佐藤健太郎が叫んだ。
守護会のメンバーたちが、あらゆる方向から現れ始めた。高橋源三郎を先頭に、彼らは真理子たちを取り囲んだ。
「山田真理子」高橋の声が冷たく響いた。「よくぞここまで来たな。だが、ここで全てが終わる」
真理子は毅然とした態度で応じた。「高橋さん、真実から逃げることはできません。私たちは日本の歴史の真の姿を明らかにしようとしているんです」
高橋の目に怒りの色が浮かんだ。「黙れ!お前たちの浅はかな行動が、この国の根幹を揺るがすことになるのだ!」
その瞬間、守護会のメンバーたちが一斉に攻撃を仕掛けてきた。真理子たちは必死で身を守りながら、神殿の奥へと押し進んだ。
激しい揉み合いの中、明日香が叫んだ。「みんな、あそこよ!」
彼女の指さす先に、まばゆい光を放つ鏡が見えた。「日輪の鏡」だ。
真理子は守護会のメンバーをかわしながら、鏡に向かって走り出した。高橋が彼女を追いかける。
「させるか!」高橋が真理子の腕をつかんだ瞬間、驚くべき出来事が起こった。
日輪の鏡が突如、眩いばかりの光を放ち始めたのだ。その光は部屋中を包み込み、戦いの喧騒を一瞬にして静めた。
光の中から、一人の女性の姿が浮かび上がる。古代の装束をまとい、威厳に満ちた表情のその女性を見て、全員が息を呑んだ。
「卑弥呼...」真理子が震える声で呟いた。
卑弥呼の霊とおぼしき存在が、静かに口を開いた。その声は、まるで遠い過去から響いてくるかのようだった。
「長き時を経て、真実を求める者たちが現れた。我が民の歴史と知恵を受け継ぐに相応しい者たちよ」
その言葉と共に、守護会のメンバーたちが次々と地面に倒れていく。しかし、真理子たちは何の影響も受けていなかった。
高橋は驚愕の表情で周囲を見回した後、ゆっくりと真理子たちの前にひざまずいた。
「わかった...」高橋の声に、敗北の色が滲んでいた。「卑弥呼に選ばれたのは、私達でなく君達のようだ」
卑弥呼の霊は、最後に真理子たちに向かって言った。
「我が民の真の姿を明らかにし、その知恵を正しく伝えよ。過去と未来を繋ぐ役目は、今や汝らにある」
そして、光は徐々に弱まり、卑弥呼の姿も消えていった。部屋に静寂が戻る。
高橋はゆっくりと立ち上がり、深いため息をついた。「君たちの勝ちだ。我々は...間違っていた」
真理子は静かに、しかし力強く言った。「高橋さん、これは勝ち負けの問題ではありません。私たちは共に、日本の、そして人類の歴史の真実を明らかにする責任があるのです」
高橋は長い沈黙の後、ゆっくりと頷いた。「わかった。我々も協力しよう。だが、この真実を世に出す際は慎重に行動してもらいたい。日本の、いや、世界の未来がかかっているのだからな」
明日香が前に進み出た。「私も...自分の過ちを償い、この研究の真の意味を世界に正しく伝える手伝いをさせてください」
真理子は優しく微笑んだ。「ありがとう、明日香さん。みんなで力を合わせて、この大きな責任を果たしていきましょう」
日輪の鏡が静かに輝きを放つ中、真理子たちは互いの顔を見合わせ、静かに頷いた。彼らの前には、驚くべき発見と、それに伴う大きな責任が広がっていた。
そして、新たな歴史の幕が、今まさに上がろうとしていた。
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