第一話 二年生編スタート‼

「私たちは春を迎え、新学年になりました」

新学期の挨拶が終わり、私たちは二年生になった

私がまずすることは…

「ねえ○○さん!初めて話すね!」

皆と仲良くなること。特に女子と

『player』に紹介するには私も相手のことをよく知ってないといけないからね

それに女子の情報網はすごい

何よりも仲のいい人だったら基本的に何でも話してくれる

…まあ人間なんてこんなものだ

一年生の頃は皆と仲良くなるのに一カ月かかったが前回の経験がある

おそらく一週間くらいでみんなと仲良くなれるだろう

だが私だけではダメなのだ

『player』もみんなと仲良くなってほしい

おそらくだが一年生の頃、イベントが起こらなかったのは『player』に言い寄ってくる女子がいなかったというのもあるだろう

まあほとんど知らない人だから仕方ないと言えば仕方ない

なので前とは違い、私以外の女子とも話すように言ったのだが

「なんでそんなことしなくちゃいけねぇんだ、めんどくせぇ」

ずっとこんなことを言って聞こうともしない

なんでこのゲーム開いたんだよ!…いや私目当てか?それが一番厄介なのだが

だがこのクラスは魅力的なヒロインが多い

頼むからそっちに目移りしてくれ『player』


…さてほとんどの人のアドレスを交換できた

割と好印象だったと思うし仲良くなるのは問題なさそうだな

あと一人…なのだがその人が問題なのだ

ただ一人、誰とも話さずに机にしている女子

その机に誰も集まろうとしない。それも仕方ない

金色の髪をしており見た目はヤンキーという感じの女子だ

だけど彼女に似た人を良く知っている

見た目が怖いという理由で周りから避けられている人を

「こんにちは!私はアカネっていうの、よろしくね!」

そう挨拶すると周囲がざわめく

それもそうか。触れるな危険!みたいな存在を両手でつかんだようなものだ

周囲が静かにこちらを見てる中、彼女はゆっくりと起き上がり、こちらをにらんでくる

「何?」

誰も寄せ付けないような目に周りは何事もなかったかのように話し始める

が私はそれでも話し続ける…よりも怖いものを見てきたから

「そうね、何者⁉と聞かれるとあなたと仲良くしたい者!と答えるわ」

私は堂々と答える

それを聞いてまた沈黙ちんもくが訪れる周囲

困惑する彼女、やれやれとする『player』

「あなた、私が怖くないの?」

「うーん…怖いかと言われるとNOよ!」

「なんでよ、私こんな髪色なのよ?」

おそらくヤンキーっぽい見た目のことを言っているのだろう

「残念だけど私の親友にも似たような人がいるわ!

見た目が怖いから周りから恐れられていたけど本当は優しい人がね!」

そう言い、『player』を見る

それに気づいた『player』は俺のことかよ…と恥ずかしくなったのか机に伏せる

だが耳が真っ赤であまり意味はなかった

周囲もそれに気づいたのかクスリと笑いが漏れ、沈黙が軽くなる

「私、金髪だよ?」

「ハーフとかでしょ?だって校則違反って言われてないじゃない」

基本的にこの学校の先生たちは厳しい

特に生徒指導の先生たちは全員ヤクザみたいな見た目の人たちばかりだ

そんな人たちがヤンキー一人にビビるわけもないのである

それで見逃されているということは地毛なのだろう

この学校はこういうところに理解があるからいい学校である

「それに式に出席してる時点でもう偉いのよ!

少なくともあの男よりはね!」

そう言いながら『player』を指さす

入学式をさぼろうとしていたからね

『player』は相変わらず机に伏していてこちらが見えてないはずだが、大体察したのか

「恥のミルフィーユやめてくれ…」

とだけつぶや

その一言で沈黙が完全に破られる

周囲が大笑いしたからだ

いい空気ができた。あと一押しだ

「私はあなたと仲良くなりたい!」

「―ぁ」

「だってあなたはいい人だから!」

私はできるだけの満面の笑みをする

その顔を見た彼女は私に問う

「私が怖くないの?」

「怖くないわ!」

「なんで私なんかと…」

「いい人だから!」

「私が人と仲良くなっていいの?」

「いいに決まってるでしょ!」

「私と、友達に、なってくれるのか?」

「もちろんじゃない!」

一つ一つの言葉を嚙み締めるかのように笑みを浮かべ、私を見据える

「私こそ…よろしく」

その笑顔は誰よりもかわいく、ヒロインをしていた


「私の名前は蛇腹じゃばら 有愛うめ

よろしくね!アカネ」

さっきまでの態度とは違い、親しみやすく感じる

この姿を見て私は思った

この子はメインヒロインの可能性があると

なにやら重そうな設定、心を許した時の可愛さ

一つ問題があるとすれば『player』がやらないといけなさそうなことを全て私がやってしまったこと

一匹狼系ヒロインは主人公一人になつくものでは?

まあ過ぎたことを気にしても仕方ない

それにしても蛇腹、どこかで聞いたことがある苗字みょうじ

気のせいならいいのだけど

「はーい席に着けよ皆」

教室に入ってきた先生が声をかける

一年生の頃の私達の先生だった

皆その人の言うことを聞き、席に戻る

もちろん私もだ

「このクラスの担任になった星原ほしはら かなで

年齢は25歳、担当教科は数学

一年の頃、担当していた生徒もいるとは思うが改めてよろしく」

星原先生、生徒指導主任の先生であり柔道黒帯の持ち主

この学校の中では最強と名高い女教師である

この人には体育教師ですら頭が上がらないそう

だがそんな彼女も生徒に恐れられていることを悲しく思っている

ちなみに彼氏は今までできたことがない

…え?なんでそんなに詳しいかって?

一応ヒロイン候補かもと色々調べたからね

確かにヒロイン候補ではあったんだけど『player』は興味を示さなかった

年上はそこまでということが分かっただけでもよしとしたが

「それじゃあ委員会決めていくぞ」

委員会、それはクラスで何の仕事をするか決めるものだ

例えば次の授業で必要なものを担当の先生に聞き、みんなに伝える教科連絡委員

図書委員やボランティア委員などのクラスの外で活躍する委員会

そしてクラスをよりよくするために働くクラス委員など

その中でもクラス委員長という仕事

その名の通りクラス委員の長のような存在である

これは立候補だけでなく推薦すいせんもできる

まあ普通は誰も知らないような状態なので推薦なんて意味をなさない

がこの短時間でみんなの信用を勝ち取った人なら、よく推薦を受ける

つまりだ

「クラス委員長、立候補もしくは推薦はいるか」

「はい!先生

アカネさんがいいと思います」

結果こうなる

去年も似たようなものだった

別に押しつけとかではない

本当に「この子なら信頼できる」と思われているのだろう

まあ推薦が出ないなら立候補していたからいいのだけど

「じゃあクラス委員長の一人はアカネでいいか?」

誠心誠意せいしんせいい頑張ります!」

「じゃあ次は男子だが…」

これも去年と似た流れだが、まずクラス委員長をやりたがる男子なんていない

仕事が多くて面倒だからね

だが一人だけ立候補する人がいる

「俺、やります」

『player』である

正直他の委員会に入って交友関係を広げてほしいのだが仕事ができるので助かるというのも本音

まあ立候補は毎回『player』一人だし異論を唱えることは許されてないが

「じゃあクラス委員長はアカネとアキラでいいな」

もちろん文句が出ることもない

「じゃあアカネとアキラ、早速で悪いが委員会決めてくれ」

これも去年と同じ流れである

慣れた手つきで決めていく

その間に私は考え事をする


『player』のヒロインについてだ

まずはおそらくメインヒロインの有愛

設定や性格上、恋愛ゲームでは人気が出るツンデレってやつだ

最初はツンが強めだが交流を深めるうちに主人公にデレていく典型的なツンデレだ

それに特徴的な金髪

メインヒロインはどのヒロインより目立つ必要があるからこれも満たしている

本命は彼女で決まりだ

だが問題も起きている

明らかに私にデレていること

私が目を合わせると可愛い笑顔で手を振ってくる

それは『player』にやってくれ!

…とこのように、あの子は少し不安なので対抗馬も決めておこう

今のところは二人

一人目は暗い雰囲気を出している篠原しのはら 爽花そうか

眼鏡をかけて前髪も長く、一見するとただのモブだ

がしかし同じ女としてわかる

あの前髪をどけると凄い可愛い顔が見えるだろう

輪郭りんかく、口元を見ればわかる

ストーリーとしては中学校の頃、可愛すぎて友達がいなかったとかだろう

さっき話しかけた時、暗い印象を持っていたのに明るく話してくるから多分当たっているだろう

『player』もどこかで篠原さんの顔を見ればイチコロだろう

二人目は明るいギャルタイプの望月もちずき 成実なるみ

皆とへだてなく話してくれる通称『オタクに優しいギャル』タイプ

私も初めて話しかけた時驚いた、こんなギャルは本当に存在するのか…と

他の人とマンガの話題をしたらかなり食いついてきた

しかも細かい設定まで話していたため本人もかなりのオタク

この子と話をすれば同じ趣味から出会い、放課後一緒にどこか行くようになり恋に落ちるという王道の恋愛ゲームができるだろう

以上のことからヒロインは大丈夫だろう

…問題があるとするならば主人公つまり『player』だ

『player』が狙ってるの私なんだよなー

私の好感度が上がることはないだろう。そういうシステム、だからだ

これがR指定のゲームならば話は違うが一年経過してもそんな気配はない

だから私の好感度は上がらないし、そもそも私のイベントを進めてもリセットが入る

勘違いしないでほしいのはリセットが入るのは恋愛イベントであり交友イベントはリセットされない…システム上どうしても必要だからね


そんなことを考えていたら委員会決めが終わる

まだお昼前だが今日はもう帰宅だ

まあクラス替えの日に授業は流石にこくだからね

カバンに荷物を詰め、帰ろうとする

「おい、アカネ

どっか遊び行かねぇか?」

来た、『player』からの交友イベントの誘いだ

「いいえ、アカネは私と遊び行くの」

…ヒロインである有愛からも交友イベントが来た

「じゃあ皆で行く?」

これはいい機会だ

『player』に有愛の良さを知ってもらおう

「は?なんでコイツと…」

「私からも願い下げよ!」

「じゃあ行かないけど」

そう言うと二人とも苦い顔をする…そんなに嫌なのか

「ちっ仕方ねぇな」「しょうがないか」

二人とも渋々しぶしぶ了承する

「じゃあ行こうか!どこ行く?」

「「街の方まで行こう」」

二人とも息ぴったりだった

「ふふっじゃあ行こうか!街まで」

いざ!交友イベントへ

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